だから口で伝えよう

 スマホ片手に夕夏ちゃんはこちらにカメラを向ける。


 緊張する。


 とてもとても緊張する。


 ずっと話しながらこのことを考えてた。

 好きな人と手を繋いだらその手に意識を集中しちゃうような感覚。


 好きな人と、これからすることばかりを考えちゃう。

 自分がこんなに変態だったのかと自分でも知らない一面に心の中を真っ赤にしちゃう。


「よく見ててください」


 そう周りに言いながら恋先輩とクラスの中心で向かい合う。

 口が乾く、唇が乾く。


 ふぅと息を吐いて、手をグーパーして力を抜き、拳を握って心を固める。


「恋先輩」


 恋先輩を見つめる。


「恋先輩、わたしのこと好きですか?」

「え、えぇ」


 そう言うと恋先輩は落ち着かない表情でこちらを見つめる。

 可愛いな。いつも余裕を持った表情が崩れている。


 初めて先輩より上に立ったみたいでゾクっとする。

 きっと先輩には何をされるか分からないんだろうな。


 もしかしたら予想ついてるのかな。


 金髪ショートにピアス沢山のこんな見た目なのに優しいってギャップすごいよな。


 透き通る白い肌が赤くなっている。

 それにシュッとしてパッチリした目が泳ぐ。

 それでいて小さくて子供みたいなのに言葉遣いが大人っぽい。


 それで…


 あぁこの人のことを想うと言葉が溢れちゃう。




 でも伝えたい気持ちはすごい短くて簡単だ

 だから口で伝えよう。



「わたしも好きです...っ!」



「っ!」



 その小さくて、可愛い先輩に悠里は顔近づけて、唇を重ねる。

 柔らかいとかあたたかいとか、そんなのを感じるよりも

 恋先輩の唇や息遣いに対する反応をしなければという頭が先行していた


「....んっ!?」


 ごめんなさい恋先輩。

 少し強引だけど、文字通り二人の間の距離を超えて内側に入った。


 入ったというより、口の中に入れた

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