作戦決行日の朝は早い

 仲良くなったら何をしよう。


 まずは一緒にアイスを食べよう。


 夕夏ちゃんと恋先輩と三人でアイスを食べたい


 あまーいバニラがいいな。三人仲良く笑って食べたい。


 恋先輩とそのあと良い感じになるのも素敵だし夕夏ちゃんと二人で遊ぶのも素敵、


 悠里のルーティンはそうやって形成されていくのです。夕夏ちゃんか恋先輩。

 どっちも大好きな二人だからすごい幸せになるぞ。


 恋先輩も幸せって思ってほしいな。

 独りよがりだけど、そんなことを相手に求めてしまう。


 あの作戦会議の翌日、すぐ作戦を決行すると夕夏ちゃんと決めた悠里は早起きをしていた。

 別に作戦といってもこれで恋先輩が私のことを好きになってくれる保証はない。


 けれどこれで好きになってくれたら、自分だけじゃなく周りも嬉しい...はず


 そんな曖昧な自信とともに夜を超えて今制服に着替えてるわけだけど、本当に大丈夫かな。

 ただ、確実にあの距離感からは引っ張り出せる。


「よし」


 いつもより鏡と長く見つめ合う。

 よし、もう一度心でそう呟くと


〈ピンポーン〉


 インターホンが鳴る


「悠里ー?」

「今行くー!」


 そう声をかける夕夏ちゃんに答えて急いで玄関に向かう。


 夕夏ちゃんはまた朝練をサボるらしい

 朝は大丈夫だよって言ったけど、「きっと集中できない」って今日もサボることを決めたらしい。


 夏に記録会があるって言ってたのにこの一週間の部活との向き合い方は流石に見直した方がいいと思えたけど、協力してくれるんだから嬉しい。


 急いで靴を履き替えて鞄を持って夕夏ちゃんと学校へ向かう


「ありがとう。でもいつもみたいに駅に集合でもよかったのに」

「いいよ。朝練サボる分悠里の家まで走る!」


 へへへとピカピカの笑顔で笑う夕夏ちゃんの笑顔は朝日に反射してとても眩しい。


 すごい明るい


「ごめんね」

「謝らないで、友達でしょ?」

「ありがとう!」


 いつからだろう。気付けば言葉に詰まることがほとんどなくなった気がする。

 多分他の人と話すとまだ厳しいけど自分も少し明るくなってきてるのかも。


 ただ少し違和感。


 右手と右足を一緒に出して歩いてるみたいな。ぎこちなさを自分に感じる。


「それにしても上手くいくのかね」

「うー...そう言われると不安になる」


 夕夏ちゃんと隣り合わせで歩く中ですこし手に冷や汗をかいちゃう。

 今更になって周りにいる通学中の他校の生徒や中学生や小学生が目に入っていつも通り誰とも目を合わせないように泳がせてしまう


 早く家を出た分いつもよりかは少ないけど


「まぁ、悠里次第だよね」


 そう笑って言う夕夏ちゃんはなんとも言えない表情で頭の後ろで手を組む。


「ちょっと急ごっか!早く学校に行きたいんだったよね?」

「あ、う、うん」


 そう言うと夕夏ちゃんは少し歩くのを速めていった。

 周りの街路樹とかを見ると青々とした葉を蓄えている。見てるだけで夏を感じられる。


 帰り道もこの光景を見た時のような、爽やかな気分になれるといいんだけどな。


 こういう雰囲気を恋先輩は、どういう風に見てるんだろう

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