目を合わせてくれる優越感と自分以外の敗北感
悠里はあの後、クラスのいろんな人に二度見される
じろじろと顔を見る男子生徒もいた。ただそんな不貞な輩は先にクラスにいた夕夏がブロックする
悠里は見た目は美人だが、今まで顔を隠していたというのもあってそのギャップで三倍増しくらいに周りの人は見えていたから、クラスの人もさぞ衝撃だったろう。
担任の先生だって誰だって言いだす始末
ただちやほやされるのはあまり好きじゃない悠里はその日は基本的に夕夏につきっきりだった。
そして夕夏にはそれが親友として頼りにされていると実感できて本当に嬉しかった。
そして髪を切って数日
あれから悠里は足繁く保健室に通うようになる。
ただ何をするわけでもなく、自分を好きと言ってくれた恋に会って何気ない話をするために休み時間になれば保健室に足を運んでいる
もちろん夕夏も一緒に。
「そういえばなんで恋先輩って……保健室で勉強してるんですか?」
「え?」
夕夏は目を丸くする。悠里が人に踏み込んだ質問をしていることに
それは興味があるってことだ。
基本的に人に近づこうともしなければ人を遠ざけようとしていた今までの悠里からしたら考えられない
「ゆ、悠里! あのさ…」
「んー、別に大した理由じゃないわよ」
夕夏の一言を恋が遮る。遮ったというわけではないが結果的に遮られてしまう
なんだろう、遠くに行っちゃう
夕夏の元を離れて悠里が遠くへ行ってしまう。喪失感が夕夏の元にやってくる
悠里は言いそびれた夕夏の目をあまり見ない、心の中が寂しい気持ちでいっぱいになる
「理由がやっぱりあるんですか?」
「えぇ、集中できるから。こっちのがざわざわしないし誰にも見られないし」
「ふふ、思ったより普通ですね」
え、笑った?
悠里が笑った?夕夏以外に?
夕夏は全身鳥肌が立ってしまう。
「そんなことよりあの映画!何が面白いかさっぱりわからないの!女子高生に人気の小説が映画になったって言うから見たのに」
「恋先輩にはそういう高校生向けの恋愛ものは合わないと思います」
「そうかなぁ?割と女子高生してるのに」
ソファに横並びになって座る悠里と恋は楽しそうに談笑する。
それを向かいで見てる夕夏は無感情でその様子を見てる。二対一の構図が出来上がってしまっている
正直何を見せられてるんだろうという気分にさせられた夕夏だったが、ただ安心できたのは前髪を切る前のあまり目を見ないようにする癖は消えてなくて安心した。
悠里は口調こそ柔らかくなって来たものの夕夏の目は見て恋の目はまだ見れてない。
夕夏以外に笑う人ができても目を合わせてもらえないならまだ自分の勝ちのような感じで夕夏は心の中で笑っていた
そして、そうやって少し優越感を感じながらもまた夕夏の知らないところで悠里が変わってしまわないようその場にはいるようにしていた。
「金髪で保健室学習してる人は普通じゃないです。ね?夕夏ちゃん」
「...」
夕夏の反応はない
「夕夏ちゃん?」
もう一度悠里に言われて我に帰る
「え?あ、な、なに?」
「どうしたの?なんかボーッとしてなぁい?」
夕夏は悠里にそんなことを言われたのは初めてで、また少し返答が遅れる。
「え?そ、そうかな」
「うん、なんかいつもと違う」
それは悠里の方だよと強く言いたい夕夏、でも言えなかった。
「ねえねえ悠里聞いてる?」
恋がまた、間に入り込む。
(なんで、なんで、そこはあたしが)
「それでね。その映画のクライマックスが…」
「なんで全部言っちゃうんですか」
(顔にはあまり出てないけど、楽しそう)
そんなことを思っていると、夕夏の心の奥底で蓋をしていた気持ちが、溢れてしまいそうになる
「ねぇ悠里、今度見に行かない?」
悠里の手を掴む恋。いつものように顔を近づける
「え?あ、あの、どうしようかな…」
ただ悠里は顔を直視できないものの、その手を振りほどこうとはしない
(迷うんだ…!)
「ちっ!」
〈バン!〉
「来て!」
夕夏は机を叩き立ち上がり悠里の手を掴む。
手をヒリヒリとさせながら、それを我慢して悠里の手を引いて保健室から飛び出す。
悠里は戸惑いながらついていく。
そして恋はびっくりして目をパチクリさせたまま、固まっていた
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