親友だもん
保健室の窓に視線を感じる
もう夕日が眩しい、そしてその夕日を後光にして輝いていたのは夕夏ちゃんだった
<キィイ、ガタン>
「帰ろ!」
ジャージのまま夕夏ちゃんは窓からそう言ってくる
夕夏ちゃん曰くその日はテスト明けということもあり早く部活が終わったらしい。
夕夏ちゃんは本当に優しくてわたしが一人で困っているとすぐ駆けつけてくれる。
あの先輩と違って適切な距離感。
近すぎず遠すぎず、今のわたしにはとてもいい距離感
なんでこんな可愛い子がわたしに付き合ってくれるのはよくわからないけど。
あ、付き合ってっていうのはそういう意味じゃなくて普通の意味で
「なんか変なことされなかった?」
「え?」
夕夏ちゃんは昇降口で靴をトントンしながらそう聞いてくる。
相変わらず太陽のような熱視線にわたしはつい顔を背けそうになったけど自然と返す
「何もないよ。普通だった」
普通じゃないけど、普通だった。
「へー。というかなんか悠里、明るくなった?」
そう聞かれて確かに気づく。
人見知りではあるけど、わたしは...
知らないところ、無意識のうちに先輩に影響されたのかな。
「夕夏ちゃんがあの先輩に会わせてくれたおかげかも」
「むっ、良いように言ってる風だけどあたしが直接じゃないのはわかる」
バレてる
「悠里は優しいよね。常に人のことを考えてる」
優しいのかな...?正直そういうのは本人には分からない。だからわたしもトントンと上靴をローファーに履き替えてとりあえず夕夏ちゃんの隣に立ってごまかす。
テスト期間明けのグラウンドは運動部がここぞとばかりに練習している。野球部は声を出すしサッカー部はコロコロ足でボールをいじくってる。
あれで上手くなるのかな?
「行こ!」
「えっ」
夕夏ちゃんに手を握られる。
いつも感じる夕夏ちゃんの手の熱はいつもより熱く感じなかった。
「あのさ!今度の日曜暇?」
「えっ日曜? あっ日曜は、あの」
つい言葉に詰まってしまう。
普段から夕夏ちゃんに誘われた時はいつも即答して約束してたけど今回は断らなきゃいけないから詰まってしまう
「ん?」
「ごめん、今度の日曜予定あってさ」
「そうなんだ。残念…」
「また遊ぼ!絶対!」
わたしの大切な友達の夕夏ちゃん。人は苦手だけどせっかくできた友達に嫌われることはしたくない。
だから次の遊びも誘ってもらえるように取り繕う。
「もちろん!あたし達親友だもんね〜」
「うん!」
夕夏ちゃんといると落ち着く
夕夏ちゃんは本当に優しい。わがまま言っちゃっても笑って許してくれるし、こんなわたしを親友と言ってくれる。
こうやって二人で帰っていると一人でいた時に話しかけてくれたことを思い出す
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます