【恋愛相談配信】過去の恋愛について少し話す【失恋/ギャルコラボ】
『あ、ちょっと関係ない話に飛びすぎちゃったね。次のお悩み、行こうか!!』
――それは、ずっと昔のことだった。
何年経っても忘れることはできないであろう、痛々しくて青い失恋の話だ。
当時、高校生だった私は初めて後輩というものが出来る。……きっかけはよく覚えてない。電車で帰る方向が同じだったとか、図書室でばったり会ったとか、学年合同授業で少し話したとか、とにかくそういう些細でありふれたきっかけだったのは覚えている。
――
明るい栗毛に花のような笑顔、身長のわりに大きい胸と人懐っこい笑顔。腕には淡い色合いのシュシュを縛りつけていて、誰が見ても可愛いと思える女の子だった。
知り合って数か月後、彼女がクラスメイトの男の子から告白されたと聞いた。その時は、そうだろうなぁぐらいにしか思わなかったが、今考えると焦りと嫉妬があったと思う。
そうでなければ、翌日に衝動任せに告白するなんてこと、私が出来るはずがない。
「私は、野乃花のことが好きみたい。恋人的な意味で……」
それが私の告白のセリフだった。クラスメイトからの告白を保留にしていた野乃花は、私と付き合うことに決めて、男の子を振った。何と言って振ったのかまでは聞いていない。それからの高校生活は、ずっと野乃花と共にあった。
昼休みは必ず一緒にご飯を食べたし、委員会等は示し合わせて同じようにしていた。
すくなくとも、その時の私は、それが幸せだと感じていたはずだ。
女が女を好きになるなんて、考えてみればおかしいと気づけることだ。しかし、どちらも、そのことを口に出すことはない。当然、キスもしたし、それ以上もあった。確か野乃花は、私が妙に慣れていることに不信感を抱いていた気がする。
私はずっと、野乃花を未練がましく想っていて、だからほのかと付き合っているのだと思った。少なくとも、ほのかと付き合い始めた頃は何度も野乃花と比べては自己嫌悪に陥っていた。
……違うんだけどなぁ。
順番があべこべなのだ。
私は、ずっとほのかが好きだった。どれだけ不幸でも明るくて、愛されなくても気丈にふるまって、苦しくても天使のような笑顔を振りまいて。ほのかは私の理想の女の子だった。私が同性愛者になったのは、ほのかのせいだ――ほのかのおかげだ。
そして、野乃花と別れた理由も、それを見透かされていたからだと、今になって思う。当時は――というか、つい最近までは全く気づきもしなかったけれど。思い返してみれば、私はずっと野乃花に甘えていたんだ。今だって、ほのかに甘えている。
――私は一人で生きることが出来ない。
ほのかと同じ、人間として完成されていない側だ。
ああ、そうだ。初めてほのかと出会った時、初めて野乃花と出会った時、誰かを好きになるときは、輝かしくて目をつぶってしまいそうになりそうなほどに美しい歪さに惚れていた。
いまだに忘れられない。幼いほのかの歪んだ笑みが、とても美しかったことを。
『……トくん。……コトくん? ……マコトくん!! だ、大丈夫?』
『マコトさん、大丈夫ですか? 何かアクシデントありましたか!?』
レナさんとオタクさん、両方から声を掛けられて意識が覚醒する。コメント欄も、私への違和感を言及する声であふれていた。時間としては数秒だが、リアクションが無くて不安にさせてしまったらしい。
「あ、ああ、ごめん、なさい。大丈夫、です」
『だ、大丈夫ならいいんだけど……。えと、一応、もう一回お悩み読み上げるね?』
【レナさん、マコくん、こんにちわ。私は背が高いことがコンプレックスの女子高生です。180近くあります。部活の後輩の女の子が、同性愛者であり、私に恋愛的感情を向けていると告白されました。中学のころから度々ありまして、何度か付き合ったこともあります。しかし、本当にこれでいいのか悩んでいます。というのも、私は特別同姓が好きというわけではないからです。中途半端な私ですが、どうしたらいいでしょうか?】
『最後だから、少し長くて重めのお悩みです。……マコくん、大丈夫そう?』
もちろん、この悩みも事前の打ち合わせで聞いている。けれど、配信という雰囲気のせいだろうか。どうにも調子が出ずに生返事なってしまった。
『マコトさん、答えにくければ、スルーしても大丈夫ですよ? レナの方で処理させます』
オタクさんからの気遣いの言葉。しかし、もう大丈夫だという意思を込めて、あえて無視した。
「ごめんね。大丈夫。ちょっと、色々思い出すことあってさ」
『……? あんまり、聞かない方がよさげだね。まぁ、同性愛って難しいよね。私的には友達となんか違うの? って話だけど、悩んでる人からすれば……』
私の呆けた穴を埋めるように、レナさんがいろいろと話してくれている。もしかしたら、どこかで野乃花がこの配信を見ているかもしれない。――それがとても低い確率であることを理解したうえで言っている。
「同性愛って配信で取り上げにくいよね。選んでおいて、こんな言い方良くないとは思うけど」
『まぁ、でも、最近はよくあるよね』
少なくとも私は、
それでも背中を押す
「告白する側、される側、両方の経験があるけど、たぶん同じぐらい悩むんだよね」
相手に受け入れてほしいという気持ちも、相手を受け入れられるか不安だという気持ち。
その2つの感情の中で揺れて、どちらかを選ばなければならない。中途半端でも、人間として完成されてなくても。人は選択を強いられるのだ。
『多分私は、女の子を好きになっても告白できないし、女の子に告白されても答えられないと思う。悩んで悩んで、逃げちゃうかもしれない』
レナさんが率直に言う。コメントも同調の声で溢れていた。
頭では理解していて受け入れたいと思っていても、いざ当事者になるとどうしようもなく立ち止まってしまうのだ。
「僕はさ、ずっと後悔してることがいくつもあるんだよね。今まで付き合ってきた人を不幸にしちゃったんじゃないかって思ってる。それでも、今の僕があるのはあの人たちのおかげだから、それは否定できないんだよね」
「質問者さんも、配信見てる皆も、恋愛事で後悔することがたくさんあると思う。でも、その時に、なかったことにはしないでほしい。自分の選択を台無しにしないでほしいかな」
リスナーや質問者に向けて言っているようで、自分自身に言い聞かせていた。
自罰的になって、ほのかに心配をかけないようにと。
スレイマンの星:めっちゃ真面目だ。
カルボナーラ:意外と恋愛に限った話じゃないかもね……。
『さて、すごくしんみりしちゃったけど、そろそろいい時間なので配信を終わりたいと思いまーす。マコトくん、告知とかある?』
「告知じゃないけど、明後日は配信お休みの予定です。あと、チャンネル登録と高評価忘れずにお願いします!!」
『いや、それ私のセリフなんだけど!? ……最後にいいところ取られちゃったけど、終わりまーす。またね~』
最後の最後で、レナさんが空気を変えてくれたおかげで、少しだけ過去の自分を許せた気がした。
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