敬虔なる自傷者達

とある王様の物語Ⅱ

 その少年は、いつも怯えていました。

 

 誰かを傷つけ、自分が傷つくことを、何より怖がっていました。


 虫一匹・草一本、踏み潰す毎に涙を流していました。


 優しさに見せかけた弱さの中で、成長もせずに閉じ籠っていました。


 だから周囲の奇異の目を感じても一歩も動けず、されるがままになっていました。


 王様はそんな少年のことが、本当にどうでもよかったのです。


 生きていようと死んでいようと、


 笑っていようと泣いていようと、


 知らない所で勝手にやっている、それならわざわざ構うこともありません。


 何かを変える物理的な力を、身体を持たぬ痩せっぽっち。


 見るからに面倒そうな少年に、


 王様の方から近づく理由はありませんでした。



「そういうの、よくないよ!」



 あの時までは。

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