気位の高い女王気質の幼馴染、ツンデレらしいがデレが分かりづらすぎる件
@mikazukidango32
第1話
「あなたと幼馴染だとみんなに思われたくないもの」
「え?それってどういう……」
「私、用事があるの。そろそろ行かなきゃ」
彼女の背中が遠くなっていく。亜麻色のロングヘア―で艶のある美しい髪、手足がスラっと伸びておりまるでモデルを見ているかのようだ。
彼女の名前は
そんな彼女とは学年が上がるにつれて、だんだんと話さなくなり疎遠になってしまった。今日は高校の入学式、幸いなことにまた同じ学校になれたことに浮かれた俺は久しぶりに勇気を振り絞って声をかけてみた結果がこれだった。
入学式で新入生代表挨拶を務める彼女を見て、俺は彼女がより遠い存在になってしまったことを感じていた。
「昔はこうじゃ、なかったんだけどな……」
俺は誰に言う訳でもなく一人でに呟いた。俺は別に彼女とどうこうなりたいとかそういう訳ではない。ただ、昔のように仲良く話したりしたいだけだった。
俺は入学式を終えると、誰と談笑するわけでもなく即刻、帰宅の準備をした。今は誰かと話したりするような気分ではなかったからだ。配られたプリント類をカバンに詰め込んで、俺は一足早く教室を後にした。
下駄箱に着くと俺は靴を取り、素早く履き替える。今日、入学したばかりでまだ自分の靴の位置がどこにあるのか慣れていないせいか、少し時間がかかってしまった。
校舎を出ると何やら急いでこちらに向かってくる足音が聞こえる。
すると――
―――「蛍君、ちょっと待って」
俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。振り返ると急いで来たのだろう、少し呼吸を乱している綾香がそこにいた。彼女は急いで靴を履き校舎を出て俺と対峙した。
「綾香、どうかしたのか……」
先程のこともあり、俺は少しぶっきらぼうな口調になった。
「少しさっきの言い方は誤解させてしまったかなと思って訂正させて欲しいの」
ん?訂正ってどういう意味だ?
「訂正って何だよ?」
「私が幼馴染だと思われたくないと言ったのは別にあなたが思っているような理由ではないの」
「じゃあどういう意味か教えてくれないか?」
「………」
彼女はしばらく無言になるといつもの冷たい口調でこう言った。
「もういいわ。せっかく、この私が譲歩してあげようと思ったのにもうそんな気も失せたわ……」
は?意味不明すぎる。なんで急に怒ってるんだこいつは。怒りたいのは俺の方なんだが。
そう、この彼女、次元の違う才能に恵まれており何もかもが完璧に見えるが実は一つだけ重大な欠点がある。
それは、恐ろしく気位が高く女王様気質であるということだ。
彼女はその見目麗しい容姿もあって男子の人気は高い。しかし、近寄りがたいオーラを放っているため、誰も彼女と打ち解けることができない。ただでさえ、その化け物染みたスペックに戦々恐々なのにも関わらず、この性格を加えてしまってはもはや難攻不落の要塞だ。彼女を攻略できる男子など当然いるはずもない……
俺はそんな彼女の性格と今回の態度にもはや我慢の限界だった。
「すまん……もう綾香にはついていけないよ」
俺はそう言うと、その場を後にした。
俺は急いで下駄箱を抜けて校門まで駆け抜けた。振り返ると彼女はなぜか校舎へと入っていく途中だった。その背中はどこか憂いを帯びているように俺には見えた。彼女は昔から時々、哀しそうに見える時がある。何故かは分からない。だってあれほどのスペックを有していて容姿にも恵まれて何不自由ない生活を送っているはずの彼女に哀しいことなんてないだろうと普通なら思う
だが、彼女が哀しそうに見えたのは確かだった。
後で考えてみたら彼女が校舎へと入った理由は恐らく彼女は新入生代表挨拶をしていた件もあって入学式が終了した後でも話合いか何かで先生にでも呼ばれていたのだろう。
なら、なんでわざわざ俺を呼び止めたんだ?そんなに重大なことなのか?
考えれば考えるほど彼女の行動の意図が分からなくなる。俺はあの後、彼女の哀愁漂う背中を見てから謎の罪悪感に駆られていた。
いや悪いのは俺じゃないだろ。だいたい、あの態度はなんなんだ。自分がまるで天下人のように振舞って、女王様にもほどがあるってんだよ。そう思ってはいるが、どうにも彼女の哀しそうな姿が頭から消えない。
なんでだよ……俺はいったいどうしたいんだよ
俺は、携帯を手に取ると久しぶりに彼女の電話番号を入力した。―――
―――プルルル……ガチャッ
「もしもし……」
「もしもし綾香、今日のことなんだけど」
俺は彼女が抱えている寂しさの訳を知りたかった。
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