第27話 快斗君が全部私のものにならないなら、私何もいらないから
「姉さん、飛龍さんを堕とすのはどう考えても無理だよ。俺が色んな角度からどれだけアプローチしても相手にすらされなかったんだから」
「……全く、使えないわね」
私はアランからの報告を聞いて激しく苛立つ。私の快斗君があの忌々しいアルビノ女と付き合い始めてから今日で3週間も経つというのに、アランは何の成果もあげていなかった。
ぶっちゃけ快斗君とあの女が付き合う事に関しては想定内の出来事だ。快斗君の壊れかけた精神状態であればあの女の変態性を理解しても付き合うのではないかと思っていた。
むしろ快斗君の精神をさらに破壊するためには一度付き合って欲しかったくらいだ。彼女だった川崎千束に振られた過去のトラウマをほじくり返して、さらなるダメージを与える事を画策していたのだから。
まあ、それでも自分の好きな男が他の女に告白する場面というのは気分が良いものでは無く、ついカッとなってしまったが。いわゆる頭では理解していても心は納得してくれないという奴だ。
私にとって想定外だったのはアランが飛龍ヒカルを堕とせなかった事だ。アランに堕とされない女が現れる事に関しては以前から想定していたが、この女では無いと思っていた。どうやら私の想定が甘かったらしい。
快斗君とあの女の関係はまだ手を繋ぐくらいで済んではいるが、いつ肉体関係に発展するか分からないところが懸念事項だ。本来なら付き合って1週間以内にアランに堕とさせようと思っていたため、ここまで2人の交際が長続きする事など完全に想定外だったと言える。
時間が経てば経つほど快斗君の童貞が失われてしまうリスクは増えていくため、最悪強硬手段に出る事も含めて考えた方が良さそうだ。そんな事を考えていると素晴らしい名案が頭に思い浮かんでくる。
「そうだわ、飛龍ヒカルが如月アランの事を好きだという噂を学内に流しなさい。今の快斗君になら効果抜群なはずだし、関係にヒビを入れる事ができるかもしれないわ」
「分かったよ……どうせ今回も俺には拒否権なんてないんだ。姉さんの言う通りやってやるよ」
アランは悔しそうな顔をしつつも投げやりな態度でそう答えた。まずはあの女の噂を流して快斗君がどう反応するか様子見だ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
アランが学内にあの女の噂を流してから1週間が経過した。快斗君は完全に疑心暗鬼に陥っているようで、2人の関係はちょっとずつだがギクシャクし始めている。本来の快斗君であれば絶対そんな噂なんか信じなかっただろうが、今まで女性から裏切られ続けた過去があるため飛龍ヒカルの事を信じきれないらしい。
「付き合い始めたばかりの頃と比べてだんだん雰囲気も暗くなってきてたし、中々良い感じだよ」
そして私はこれから半信半疑状態の快斗君に対して大きな決定打を与えるつもりだ。あの女がアランの事を好きだという証拠を快斗君に見せつけ、深い絶望の底に叩き落とす。
一つ問題があるとすればそんな証拠はこの世のどこにも存在しない事だが、無ければ作れば良いだけの話しだ。現代の技術を持ってすれば写真や動画のような証拠などいくらでも捏造できる。
確かに捏造した証拠には矛盾点などがどうしても生じてしまうため見破られてしまう可能性はある。だが正常な状態の快斗君ならまだしも、私の手によって壊れかかった彼にそんな冷静な判断ができるとは到底思えない。
「……それにしても飛龍ヒカルが快斗君の最初の彼女じゃなくて本当に良かったよ。もし最初の彼女だったら川崎千束みたいに簡単にはいかなかっただろうしね」
アランに堕とされない上に快斗君も壊れていないため、今回のような手は絶対通用しなかったに違いない。そうなったら強硬手段に出ざるを得なかったわけだが、私としては極力それに頼りたくなかった。
なぜなら私の幸せな未来がぶち壊しになってしまうリスクがあるからだ。実力行使に出て警察から捕まるような事にでもなれば私は永遠に快斗君を手に入れられなくなってしまう可能性がある。万が一そんな事になってしまえば私の生きる意味は何もかも無くなってしまうだろう。
「快斗君が全部私のものにならないなら、私何もいらないから」
だからもし快斗君がどうしても私の物にならない時は、彼を殺してすぐに後を追うと決めている。快斗君の命を奪うという事は、彼の全てを手に入れる事と同義だ。だって命はたった一度しか奪えないのだから。
「……でもやっぱり天国で結ばれるよりも生きて快斗君と結ばれたいし、殺すのは本当に最後の手段かな」
私の理想としては快斗君の身も心も手に入れた後は仲良くエッチしたり結婚したりもしたいと思っている。既に壊れているとはいえ私も一応女の子であり、女性としての幸せも欲しいのだ。
「そのためにもまずあの邪魔な女を排除しないとね。どんなのがいいかな……」
私は自室にあるノートパソコンで隠し撮りした飛龍ヒカルの写真や動画を眺めながら、どんな証拠を捏造するか考え始めるのだった。
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