第131話 誕生、新たな従魔!

「リーナ、あと5分で卵が孵るよ」


 妻のフリフロ復帰を皆で喜んだ後。

 俺たちは湖畔の中にある異物。メカメカしい孵化装置の前にきていた。

 理由は口にした通り、不死系統の卵があと5分で孵るからである。


「お待たせ! お腹空かせてたら、可哀想だからボアと兎の焼肉を持ってきたよ!! ほんとに焼いただけだから、そこまでおいしくないかもしれないけど……空腹なのに何も食べられないよりはマシかなって」

「ありがと! 俺も一応、アイテムボックスに少し焦げたラニットアユとかが入ってるから肉を嫌がってもなんとかなりそうだよ」

「野菜と果物もそのままの状態だけど、私が持ってるし……完璧だね!」

「まぁ、マモルと同じ不死系統だから食事は必要ない可能性が高いけど。もしものための備えはばっちりだね」


 最初は俺と妻だけが孵化装置の前に座っていた。

 4、3、2、1分と新たな仲間の誕生が近づくにつれて、従魔たちも気になったのか周りに集まり始めた。


「あと10秒!」


 俺は仲間たち全員に聞こえるようにモニターに映し出される残り時間を読み上げた。


「どんな子をお迎えすることになるのか、楽しみだね! 5、4、3、2、1――――」


 残り5秒から妻がカウントダウンを始めて、その数字がついに0を迎える。


<スカルドラゴニュート[幼体]が誕生しました>


「か、かわいいー!!!」


 孵化装置内の卵にヒビが入ったかと思うと、みるみるうちに割れていく。そして従魔の姿を視認できるようになったと同時にアナウンスが流れた。

 姿を現したのは、マモルと同じく骨身の魔物。顔部分は種族名から予想できる通りしっかりと龍の頭蓋骨なのだが、2頭身で手足が短いせいかかっこいいというより可愛らしい感じになっている。身長自体が俺の膝下くらいまでしかないということもあり、ぬいぐるみ感が否めない。もちろん骨なので、抱き心地はそれほど良くないと思うが。


「が、がんばって歩いてる……うっ、うぅ――――なんか鼻血出ちゃいそう」


 スカルドラゴニュート[幼体]が主人である俺の方を見て、ゆっくりと動き始めた。二足歩行、それもよちよち歩きである。覚束ない足取りで一生懸命に前進。なんとか俺の前に辿り着いたかと思うと――――こてん。胡坐を組んでいた俺の足の間にすぽっと尻を降ろした。


 うん。確かにこれは可愛過ぎる。


「ね、ね、ね、ハイト! 私も! 私もその子と触れ合いたい!!」


 完全に心を持っていかれた妻がグイグイと迫ってくる。


「それはいいけど。先に名前決めたり、ステータス見たりしないと!」


 これだけかわいかったら、もうステータスなんてどうでもいい。とはいきません。せっかく孵化させるのにユニークボスの魔核を使用したんだ。どんなスキルを引き継いでいるのか、そこが重要。怨嗟の大将兎特有のスキルみたいなのを覚えていてくれると嬉しいな。

 でも、たとえ外れスキルを継承していようと、うちの子として生まれてきてくれたからにはしっかり育てるけどね!




パルム(スカルドラゴニュート[幼体])

Lv.1

HP:15/100(-80) MP:16/80(-64)

力:35(-28)

耐:31(-25)

魔:34(-27)

速:26(-21)

運:29(-23)

スキル:武器生成、龍骨、再生、怨嗟の叫び

称号:<闇の住人><龍の血族>




 名前はパルムとした。

 由来は俺の好きなアイスの名前。


 さて、それにしてもツッコミどころの多いステータスになっているね。

 スキルが初見ものばかりだし、称号だって<龍の血族>っていうすごそうなのを持っている。<闇の住人>は同じ不死系統のマモルが持っていたことから、おそらく所持しているだろうと予想していたが。


 それに各ステータス値の横のマイナスはどういうことだ?

 普通は俺みたいにスキル補正や武器、防具による上乗せの数値が入るからプラスになると思うんだけど。


※ヘルプ※

 誕生したばかりの魔物の幼体はステータスに大きなマイナス補正が入ります。時間経過による成長で徐々になくなっていくので、根気よく育てましょう。


 おっ!

 久しぶりにヘルプさんを見た気がする。

 ここ最近システム周りのことは事前に調べていたりしたから、お世話になる機会がめっきり減っていたんだよね。ちょっと嬉しいかも。


 もっと詳しく見たいところだが、そうもいかないようだ。

 初期のマモル同様、日照ダメージによってHPがじわじわと減少している。木陰に移るか、クランハウスに移動しないと。


「みんなクランハウスへ移動しよう。この子もマモルと同じで日に当たるとダメージを受けるみたいだから」

「そうなの!?」


 俺はパルムを抱きかかえて、クランハウスの中へ急いで移動。妻と従魔たちもその後ろに続く。


「ふぅ。これでゆっくりできる」


 やっぱり称号<闇の住人>は厄介だね。このデメリットをできるだけ早く解決するために、イベントポイントで交換した選択スキルスクロールを残しているわけだが、正解だったように思える。

 幼体である間はヘルプさんが教えてくれたようにステータスにマイナス補正があって戦闘させるには不安がある。というか、あのよちよち歩きの子に戦わせるとかどんな鬼畜だよ。とにかく幼体でなくまるまで、パルムにはクランハウス内にいてもらうことになる。その間に影魔法の取得条件を満たしてもらえば、戦闘ができるようになる頃には昼夜を気にする必要もなくなるからね。


 それと生まれたての子を1体だけでクランハウスに置いておくのは大変不安なので、俺が経営地から離れることはしばらくないだろう。


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