第118話 魔法対決
アネットさんに師事することになったとき、あまり聞き慣れていないアナウンスが頭に響いた。すぐにステータス画面を開きたくなる衝動に駆られたが、そのときはなんとか踏み止まる。そしてお風呂と畑についての話を続けた。全てが終わり、アネットさんが帰った後。ようやく俺はその内容を目にする。
ハイト・アイザック(ヒューム)
メイン:見習いテイマー Lv.14
サブ1:見習い錬金術師 Lv.7
サブ2:見習い戦士 Lv.9
HP:340/340 MP:300/300
力:31(+16)
耐:32(+42)
魔:37
速:19
運:31
スキル:テイム、火魔法、魔力操作、錬金術、剣術(初級)、槍術(初級)、盾、気配察知、聴覚強化、鑑定、解体、採取、潜水、伐採、採掘、緋色の紋章
称号:<ラビットキラー><紅蓮の魔女の弟子>
SP:12
あの紅蓮の魔女って誰ですか?
いや、アネットさんのことを指しているのはわかるけど。あの人、そんな大層な二つ名を持ってたの?
本人が現役時代は弟子にして欲しい人がたくさんいたとか言っていたし、相当ヤバい人だったのかもしれない。
そんなすごい人の弟子になれたのも嬉しく思う。これからの鍛錬だって楽しみだ。
しかし、どうも何か厄介事にでも巻き込まれそうな気がするんだよね。色気のある美人で実力派の魔法使い。そんな人材、何かとんでもないことをやらかさない限り国が手放すとは思えない。いや、待てよ。王都での仕事に飽きたから黙って地方に逃げてきた。なんてこともありそうだな。アネットさん結構自由人っぽいし。
俺の勘がガンガン警鐘を鳴らしているわけだが、今からできることなどない。まぁ、せいぜい未熟な弟子として教えてもらうことを必死に覚えようじゃないか。
う~ん、そんなこと考えていたら体がうずいてきたな。
よし!
魔法をぶっ放してみよう。
丁度、ちょっと前から試してみたいと思っていたこともあるしね。
湖面に撃ち込むのが1番安全な方法なわけだが、それでは味気ない。せっかくだから誰かに相手をしてもらった方が楽しいはずだ。
「なぁ、マモル。魔法で勝負しよう」
隣にいる我がパーティーのエースへ声をかける。好戦的な彼ならきっと受けてくれるはずだ。
しばらく返事を待っていると、マモルの意思が伝わってきた。もちろん受けて立つと。
「じゃあ、早速やろうか。俺が3、2、1って言ったら魔法陣を展開ね。そして互いに相手向けて1発の魔法を撃つ」
俺はウィンドウを呼び出しある項目を選択する。決闘システムだ。存在は知っていたし、使い方もだいたい理解していたが触れることのなかったもの。
まず相手を選択する項目が出るのでマモルを選ぶ。そして決闘システム保護をONにする。こうすることで決闘によってHPが全損したとしても、終了後には1割が残った状態でその場復活が可能となる。魔法に関しては一撃勝負でどちらかのHPが全て飛ぶことになるほどの実力の差はないはずだが、保険はかけておくべきだろう。
次にベッドするアイテムを選択する必要がある。難儀なことに賭けるアイテムなしに決闘システムは使用できないのだ。そうだなぁ、こっちは獣の遺骨でも出すか。前回それをマモルに与えたとき喜んでいたし。そして気になるマモルが賭けたものだが……ラニットアユだ。いつでも取れるからと最近捕獲していなかったので、それなりに嬉しい。
最後に勝敗の判定について設定する項目が出てくる。そこは俺が言葉にした通り、一発の魔法でどれだけ相手のHPを削れるかだ。
全てを設定して互いがウィンドウで了承すれば、決闘システムは有効となる。だが、マモルの場合は俺の従魔なので、俺がOKするだけでいつでも決闘が開始できる状態になった。
「うん。設定できた。それじゃあ、マモル準備してね」
互いに少し距離を置き、相対する。
「いくよ! 3、2、1、いざ勝負!!」
火蓋を切って落とすと共に、火魔法の魔法陣を目の前に展開する。俺の持つ攻撃魔法はたった1つ。ファイヤーボールだけだ。マモルが使うのは影魔法。あれはかなり強力な魔法だが、どうにか打ち破ってみせる。
視界の先では、マモルも同じように魔法陣を展開している。だが、少し遅い。これはおそらく経験の差だろう。俺はユニークボス戦の頃から魔法を使っているが、マモルは少し前に覚えたばかり。今のところ魔法陣を展開してから発動までの時間は縮めることはできないが、勝負が始まってから魔法陣を展開するまでの速さはそれぞれの実力が出るところだ。
それ以前に影魔法より火魔法の方が魔法陣展開から発動までの時間が短いため、よほどのことをしでかさない限り先撃ちできるのはわかっていたけど。
ただ、先撃ちしただけじゃ勝つことなんてできない。なので浮いた数秒を俺はスキル魔力操作の使用に当てる。
以前、試したのはファイヤーボールの軌道を変化させること。しかし、今回はファイヤーボールの発動に使用するMP量を増やす――――つまり通常時より魔力の籠ったファイヤーボールを放つことができないかと試すことにする。できるという確信はない。だが、このスキルの名称が魔法操作ではなく魔力操作だということを考えると不可能ではないと思うのだ。
頭の中で勝つための方法を考えている間にファイヤーボールを発射できる状態になった。魔法陣の上には、火の玉が出現している。
すぐに魔力操作を発動。とりあえず自身の体からMPを引っ張り出すようなイメージをしてみる。
「うわ!?」
イメージ通りにいった。というか、いき過ぎた。ごっそりと体からMPが抜ける感覚がなんとも不愉快で思わず声が出た。
それなりに気持ち悪い。気持ち悪いが耐えられないほどでもない。それよりも体から抜けたMPを無駄にしないように、どうにかファイヤーボールへ注げないかと試してみる。
――――――――できた!
効率はかなり悪い。だが、通常のファイヤーボールよりは確実に強化されているはずだ。その証拠に火の玉が元より少しだけ膨張している。
だが、それを喜んでいる暇はない。俺が魔力操作をしている間に、マモルは影魔法を発動。自身の影で槍を作り、こちらの腹に向けて放っている。
「いけ! ファイヤーボール・改!!!」
迎え撃つべく、強化した火球を真正面へと解き放った。
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