落とし物達の願い
仲仁へび(旧:離久)
落とし物達の願い
歩いている人のポケットからぽろり。
何かがこぼれ落ちた。
それは手編みの手袋。
持ち主のお母さんが精一杯編んでくれたもの。
向こうで行きかう人の一人。そのバッグからぽとり。
それは傷んだキーホルダー。
寿命を迎えてチェーンが壊れてしまったみたい。
地面に落ちたキーホルダーは、人に踏まれないかハラハラしっぱなし。
ちょっとよそ見をしているうちに。
手の中に持っていたものがぽとっ。
定期券ケースの中から定期券が飛び出した。
それは何でもない道の上に静かに着地する。
今日も、昨日も、明日も。
世界のどこかで落し物は発生していく。
落とされたものたちは、持ち主とわかれて心細い思いをしている。
誰かによって交番に届けられるものもいれば、誰かによって安全なところに寄せられるものもいる。
中には誰にも見つけてもらえないものもいる。
でも、みんなに共通しているのは、ずっと落とし主を待っているということ。
世界中の落し物たちは、みんな「はやくみつけて」と今日も願っている。
落とし物達の願い 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます