手に入らない魔法

仲仁へび(旧:離久)

手に入らない魔法



 すごい魔法使いになる。


 そんな夢を見た子供の私は、毎日修行を頑張った。


 たくさんの魔法を覚えたし、色々な魔法の道具を手に入れた。


 けれど、どうしても手に入らない魔法があった。


 それは、時間をさかのぼる魔法だった。


 魔法を覚えるための本……魔導書の全てには、なぜか人間には習得できないと書かれていた。


 すごい魔法使いになるためには、必要なのに。


 それから何十年も月日が経った。


 私は大人に成長し、多くの人に慕われる魔法使いになった。


 しかしそれでも時間をさかのぼる魔法だけは、手に入らなかった。


 完璧な魔法使いではないけれど、夢は叶わなかったけれど、今の私はそれで良いと思っている。


 なぜなら、私が過去にさかのぼることで、人の運命を変えてしまう危険性があるから。


 そうなると、生まれてこない子供達がきっと出てくるだろう。


「先生、今日もたくさん魔法を教えて!」

「僕が先だよ!」

「ずるーい、私が先よ!」


 だから手に入らない魔法は、手に入らないままで良いのだ。


 たくさんの子供達の笑顔を見つめながら、私は心の底からそう思った。


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手に入らない魔法 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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