エリー.ファー

 ダンジョンがあった。寂しさが渦巻いていると言われている。

 モンスターたちの叫び声が響き渡ることもなければ、冒険者たちの声も聞こえない。

 このダンジョンには死が閉じ込められている。

 誰も出ることはできない。

 しかし、誰も入らない。いや、入ることができないのだ。

 それ故に、どのようなダンジョンであるか詳しいことは分からないままである。

 噂ばかりが蔓延する世界である。

 調査隊が八つ全滅した。

 どれだけ有名な勇者でも避けて通るのであった。



「ダンジョンについて、どう思いますか」

「あんなところ、入るようなもんじゃないよ」



「ダンジョンについて、どう思いますか」

「良い思い出は全くないね」



「ダンジョンについて、どう思いますか」

「経験値をくれる場所としか思ってないかな。でも、危険だよね」



「ダンジョンについて、どう思いますか」

「このあたりのダンジョンだと、キノコがよく採れるの」



「ダンジョンについて、どう思いますか」

「ダンジョンの壁が壊れていて、何だか怖くなってしまったよ」



「ダンジョンについて、どう思いますか」

「なるべくお宝が多く出るダンジョンを冒険するようにしているよ。まぁ、入ってみなきゃ分からないのが大半だけどね」



「ダンジョンについて、どう思いますか」

「時代遅れだな」



「ダンジョンについて、どう思いますか」

「あんな危ない所、埋めるべきだよ」



「ダンジョンについて、どう思いますか」

「村人が戦士になるためには必要な場所さ」



「ダンジョンについて、どう思いますか」

「どうも思わないけど。なんで、そんなこと聞くの」



「ダンジョンについて、どう思いますか」

「観光資源として活用すればいいと思うんだけど、誰も言い出さないんだよねぇ。何でだろう」



「ダンジョンについて、どう思いますか」

「私の夫が亡くなった場所です」


「ダンジョンについて、どう思いますか」

「あたしのお兄ちゃんはよく行ってるよ」


「ダンジョンについて、どう思いますか」

「死刑囚をぶちこんでおけばいいんじゃねぇの」


「ダンジョンについて、どう思いますか」

「迷宮って名前でもいいと思うんだけど」


「ダンジョンについて、どう思いますか」

「山とか林とかよりは、良いアイテムが落ちてるよね」


「ダンジョンについて、どう思いますか」

「ダンジョンねぇ。興味ないかな」


「ダンジョンについて、どう思いますか」

「ダンジョンが問題って言うよりも、ダンジョンの難易度が分からないことが問題ない気がするけどね」


「ダンジョンについて、どう思いますか」

「儀式で使われることがあるって聞いたけど」


「ダンジョンについて、どう思いますか」

「このあたりの村で、その質問はしない方がいいいよ。殺されるよ」




 面白がって行って、死ぬヤツのことなんか正直どうだっていいけどさ。大体が、真面目なヤツを巻き込んで死ぬことが多いから面倒なんだよ。なぁ、どうするよ。好奇心が取り返しのつかない問題を引き起こしたら責任とれるのかよ。なんとなくやった行為が世間に知られて、一気に広がって、ありとあらゆるところに迷惑をかけまくって。人生がぶっ壊れて。




 もうすぐ、ダンジョンは閉鎖される。

 春になる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

エリー.ファー @eri-far-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ