其ノ九 御吟味方お役決め

 進行役の荻野おぎの様は、お声を落としてお続けになります。

「秋に本来のお役が始まりますまでは、まあほんの時折ときおり……にござりますれど、大奥(PTA)取締方とりしまりがた(本部役員)から、各御係かくおかかり(専門委員会)に、諸々もろもろお手伝いのお達しが御座いまして……。」


 そのお言葉の後、お心なしか、しばし不可思議ふかしぎが置かれましたでしょうか。

「……まあそれはそれ、本日皆様お揃いで御座いますので、早速、当御吟味方ごぎんみがたのお役決めとまいりましょう。」


「お役決め」


 その言の葉を耳にされただけで、御一同、各御組かくおくみのお役決めの折の惨状がついつい脳裏に浮かばれまして、ひととき体がこわばる心地が致しました。


 荻野様はふところから一本の掛軸かけじくをお取り出しになり、それを紐解ひもときなされると、皆様に見易き所にある留め金にお掛けになりました。それにはこう書かれております。


   御吟味方ごぎんみがた 


取締とりしまり(委員長)  御一名


取締御後見とりしまりごこうけん(副委員長)  御両名


    上記、御三役ごさんやく



御右筆ごゆうひつ(書記)  御一名


勘定方かんじょうがた(会計)  御一名

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