第5話 校内での日常
私は放課後に美化部の部室でまったりしていた。何故か、白花が座っています。
「白花、学校は?」
「つまらないから抜け出してきた」
白花の学力は高校生並みです。時々、課題を見て貰っています。
私が『絶対正義』と言うか迷っていると。
「この学園は実力主義です。固い事は言わないで下さい」
輝夜さんが私の気持ちを察してくれました。
「白花、口の堅い輝夜さんの代わりに『シャドーカード』について教えてよ」
私は白花に『シャドーカード』につて調べておくように頼んでおいたはずです。
「仕方ないな……『シャドーカード』は神々の影であり、この世界での神々の象徴です。つまりは、神々をこの世界に召喚するのは不可能とされ、影としてしか存在しません。また、神々の力の塊であり召喚術の対価として使われます」
「それは思い出の具現化など出来るのか?」
「姉ちゃんでも出来るかと」
「そうか……」
炎の召喚しか能のない私にでも特殊な召喚術が可能なのか。
「強き力か……」
「ダメですよ、この『シャドーカード』は大切なものです」
物欲しそうに輝夜さんを見ていたようです。『絶対正義』となる想いの具現化……。私は気持ちを切り替えようとジュースでも飲む事にしました。
「少し、自販機に行ってくる」
頭をかきながら、美化部の部室を出る。そして、不意に空を見上げると、薄い雲が天高く流れていた。まだ、夏になるには時間がありそうだ。
私は空に右手を上げます。
『龍脈』!!!
この技は自然界に眠る力を引き出すのです。系統としては風水に近いです。バランス型の召喚術師はこの技を使ってエネルギーを得ます。炎属性の私は気分転換程度の威力しかありませんが、そこを問題にすると強くなれません。更に『龍脈』を使うと右手が温かくなります。
ふーぅ。調子は上々であった。
そして、部室棟の隣の自販機の前に着きます。私は自販機の前でなにを買うか考え込み小首を傾げます。どろり濃厚プリンジュースかスカッとサイダーに迷うのです。真ん中を取ってミルクティーにしました。勢いよく飲んでいると甘さが口の中に広がります。
不意に通りがかりの女子生徒と目が合います。目がハートの様子の女子生徒に挨拶します。
「『絶対正義』の人だ!」と叫んで近づいて来ます。
私の代名詞が『絶対正義』であることは喜ぶ事なのですが、ツーショットの自撮りを取られます。こんな時代だから『絶対正義』が万人にウケるとは考えていませんが、ここまでのファンも困りものです。
私はブツブツ言いながら、美化部の部室に戻ります。
「ただいまー」
「ずいぶんと時間がかかりましたね」
輝夜さんが心配してくれました。
「どろり濃厚プリンジュースかスカッとサイダーに迷っていたのです」
「真ん中を取って抹茶ソーダなどどうです?」
輝夜さんは真面目な顔をして答えます。私の真ん中を取ってミルクティーも謎だが抹茶ソーダもかなり謎だ。
「え、ぇ、まあ、ミルクティーにしたよ」
たどたどしく返事を返すと、輝夜さんは古い書物を開いて読み始めます。そうだ、数学の課題をこの部室で済ませるつもりであった。
幸い、白花もいるし。
私は白花の前ではプライドなどなく、基礎の問題でも解らなければ聞くのであった。それから、課題が終わると輝夜さんが校内の花の水やりとゴミ拾いに行きたいと言います。
ここは美化部でした。
美化部の活動に私も付いて行く事にしました。
先ずは花壇の花に水をあげます。ぐるりと全部の花壇に水をあげる作業は結構な重労働です。その後、校庭のゴミ拾い。これは部として十分な作業量で、部員が輝夜さんだけでは大変です。このままでは、私が美化部に入って活動しなければなりません。
「輝夜さん、新入部員を募集しましょう」
絶対正義の看板を付ければ部員希望者が沢山きます。早速、校内の掲示板に新入部員の募集をかけます。
「あれ?『絶対正義』の文字が無くてよ」
私の思っていたのと違うものでした。
「『絶対正義』はそんなに安いモノなの?」
輝夜さんに言われると確かにそうです。私が首を傾げていると。白花が何か言いたげです。
「白花の意見は何です?」
「姉ちゃんは強すぎるのです。五芒星の一人としての自覚が必要かと」
「いやー強すぎるは言い過ぎだよ」
私が照れていると。
「それでいてバカだから」
白花に何やらすごくバカにされた気分です。でも、知略で白花には勝てません。どうせバカだもん……。
私はいじけて部室内の隅に丸く座るのでした。
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