義姉弟で恋人

二髪ハル

プロローグ

 小さい頃の話だ。

 父親が再婚をするといって新しい母さんを紹介してきた。

「よろしくね。お父さんから聞いているわ」

「……」

 俺は軽い会釈だけをした。

 別に再婚を認めているわけじゃない。その逆で再婚することに関しては認めている。

 2歳の頃に俺の本当の母さんが病気で亡くなって父さんがずっと母さんの話を俺に聞かせてくれてたのは知っているし。嬉しかったという気持ちがある。

 だけど、いざ新しい母さんが出来るなんてなったら心構えなんて出来ているわけない。

「あっそれと士郎しろうに姉ちゃんが出来るぞ!」

「……えっ!?」

 なにそれ聞いてない。

 新しい母さんの後ろでひょこっと顔を出してきた。

「……士郎くん?」

「えっ?」

 顔を見た瞬間に気づいたのは同じクラスの幼稚園からずっと一緒に遊ぶ仲の友達のかなでちゃんだった。

「奏ちゃん……?」

「……うん」

 彼女は小さく頷いた。

 知っている人が家族になる。そう思った瞬間安心があった。

「ねぇ士郎くん!」

 奏が近づいて手を握ってきた。

「士郎くんと家族になりたい!」

「――っ!」

 そう言われた瞬間。不安だったのが嬉しいという気持になっていく。

 新しいお母さんに奏が家族として一緒にいる。……自分に初めてで、絶対に叶わないと思っていた夢。


 姉弟がいる日常。


 それが今目の前にあるなんて思いもしなかったら嬉しくなっていく。

「……家族になってください」

「――っ! うん!」

 俺に新しいお母さん。そしてお姉ちゃんが出来た。

 ……けど、数年後に彼女のことを好きになってしまったと気づいたのは後になってからだった。

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