第5章

05-01 襲撃

 突然、各部屋でアラームが鳴った。

 そしてアナウンスが流れた。


「至急、センタールームに集合して下さい……至急、センタールームに集合して下さい……」

 ただ事では無い。


 全員がセンタールームに駆け付けた。

 ホットラインのモニター画面に127さんが映っている。


 127さんは話し始めた。

「AMさん、居ますか」

 私が呼ばれた。


 私は、ホットラインの前に行って応えた。

「はい、AMです」


「全員、センタールームに集まっていますか」

 私は見まわし、確認した。

「はい、6名、居ます」


「AMさん以外、全員テーブルの椅子に座って下さい」

 ……127さんから、緊迫した空気が伝わってくる。


 私は、皆に向かって言った。

「皆さん、椅子に座って下さい」

 みんなも、127さんの緊迫した空気を読み取り、速やかに座った。


「AMさん、このホットライン通話機本体のプラスチックカバーを開けて下さい」

 ……どういった事だろう。

 この通話機本体のまわりはプラスチック製で、これを開けるという事か?


 良く見ると、それはネジ止めされておらず、ツメによって止められている。

 そのツメに力を加えてまわりのプラスチックカバーを外した。

 中に、電子部品が乗った基板が見える。


「はい、開けました」


 127さんは冷静さを装い、話を伝えた。

「今から行う操作で、その部屋は地下へ異動します。慌てないで下さい」


 ……地下?

 皆から、不安の声が上がった。


 私は訊いた。

「どういった事です!」

「説明は後で。皆さん席に着いてますか? AMさん、ケースを外した通話機の中の基板に着目して下さい」

「はい」


「その基板の右下に、小さな赤い押しボタン、確認できますか」

「はい」

「それを押してください」


 言われた通り、そのボタンを押すと「ドスン」といった音と共に、その部屋の床は、エレベーターのように降りて行った。


 壁のまわりで、非常灯が点灯した。

 真上を見上げると、センタールームの床に穴が開いた状態となった。

 そして、その穴の左右から頑丈な隔壁がスライドしてきて床の穴をふさぎ、床の厚みに合わせて上へ押し上げた。

 おそらく、あの部屋から見ると、床のようになっているのだろう。


 私たちを乗せた床は、まだまだ下がっていく。

 3mおきに、左右から隔壁がスライドしてきて天井を作る。


 しばらくして、降下していた床が止まった。

 そこは、この床の2倍ほどの部屋だった。


 部屋の照明がつき、非常灯が消えた。

 この部屋には、壁に固定された大型ディスプレイの他に、壁に固定された薄いボックスが1つ。

 それと『M1』と書かれた扉が1つあるだけだった。


 ディスプレイの画面が点灯し、外のようすを映し出している。

 私は通話機に向かって127さんに問いかけた。

「ここは何処なのです。この施設は何なんです」

「お答え出来ません」


 私は、すかさず問いかけた。

「何が起きたんです」

「あなた方を捉えに、ある組織が動き出しました。そろそろ、そちらに着くころです」

 ここにいる皆から、驚きの声が上がった。


「そこで皆さんには、地下に避難して頂きました」

 モニターのスピーカーから、外のようすが流れる。

『バリバリバリバリバリバリ……』

 そんな音が聞こえてきた。

 ……これは……ヘリ?


 上空から、大型ヘリが庭園の芝生に着陸した。

 黒いマスクを付けた人が6人降りて来た。

 感じからして、どうも日本人ではない。


 127さんは言った。

「モニター画面で確認できる状況をお伝え下さい」


 私は、127さんに言った。

「この施設には、監視カメラもマイクも設置していないとのお話しでしたよね」


「……はい、説明が不十分でした。監視カメラで捉えた映像は、皆さんが今居るその部屋でしか見る事が出来ません。つまり、私どもは皆さん方を見る事は出来ないのです」


「そのような仕組み……何故ですか」

「それは……私どもよりも、あなた方が今居るポートベースの方が、上位の位置付けだからです」

「……ポートベース?」


「皆さんがおられる場所は安全です。決して中へ入って来れません」

「……了解しました」


「外の状況、お伝え下さい」


 私は、見たままの事を伝えた。

 大型ヘリが庭園に着陸した事。

 黒いマスクを付けた人が6人降りてきた事。


 彼らは、日本人ではないように見える事。

 銃等の所持は、今のところ確認出来ない事。

 そして、私たちを探しているような事。

 ……などを伝えた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 おそらく、このM1と書かれた扉の奥には、巨大ロボットが隠されている! 〔←やめなさい!〕


次回:この施設の正体は

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