「不思議」に満ちている世界

荒川馳夫

注目度

町を歩いていると、困っている人を見かけた。

誰も助けようとしないので、手をさしのべて助けた。


「ありがとうございます。優しい人ですね……」


相手の方は小さな声でお礼を伝えてくれた。

それを聞いて、私は心がポカポカして嬉しかった。



後日、同じ場所をまた歩いていると、迷惑行為を働いている人を見かけた。

被害者を助けようとして足を進めようとする前に、周囲に人が群がってきた。


(良かった。助けに来てくれる人がたくさんいるんだな)


安堵したのもつかの間。スマホを取り出して、パシャパシャと迷惑行為を撮影しただけだった。群衆をかきわけるよりも警察を呼ぶ方が早いと思い、近くの交番に状況を説明した。加害者は間もなく連行されていった。


すると、群衆は散り散りとなり何事もなかったかのように日常に戻っていく。

私は心がモヤモヤして、気分が悪くなった。


「良いことを進んで行おうとする人が少ないし、注目されない。悪いことは注目されるうえに、制止しようとする人があまり出てこない。おかしいよなあ」


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