第8話

 ハルキと相談し、ニッタは毎晩、シャロンとジェイスとの散歩に同行している。


 ハルキはすぐにイレイスするべきだと主張したがニッタはどうしてもシャロンが気になるので一週間だけ猶予をもらった。


 七日目の夜。


「シャロンお嬢様。ここ数日、ご一緒させていただいて本当にありがとうございます」


「うふふ。ニッタ様、こちらこそありがとうございます。わたしもジェイスもとても楽しくてよ。家に戻ってもよくジェイスとニッタ様のお話をさせていただいていますの」


「そうなんですね、それは光栄です。シャロンお嬢様、ジェイスとはどちらで出会われたのですか?」


「あら、お話していなかったかしら? うふふ、わたしとジェイスは特別なの。出会いも運命だとしか言いようがありませんの。あれは、昨年のこと、ジェイスが突然我が家を訪ねて来たんですのよ。ジェイスったらあの時からおかしなお面をつけていたわね。わたし、最初に見たときには驚いて気絶してしまって」


 そう言って笑うシャロン。


「そうなんですね、シャロンお嬢様。その時のことをもう少し詳しく聞かせていただけませんか?」


「あら、それが全てですよ、ニッタ様」


「ではジェイスに訪ねても?」


「ニッタ様、残念ですがジェイスはわたしとしか話せませんの」


「シャロンお嬢様、私、話せるんですよ」


 そう言うとニッタの全身が青く光り、ジェイスの前で手をかざす。


 するとジェイスの仮面から無数の糸が伸びていて、それがニッタの手の周りで円を描く。


「え? ニッタ様? これは、なんなの?」


「ごめんな、お嬢様」


 ハルキが建物の間から現れシャロンを抱え安全な場所に避難する。


「これはどういうことですのっ?! あなたは?!」


「俺はハルキ。イレイサーだ」


「イレイサー? まさかジェイスを? ジェイスをどうするつもりなのです?!」


「俺たちはイレイサーだ。憑きモノがいるならイレイスする」


「そんな?! やめて! ジェイスを消すなんてイヤよ!」


 青く光るニッタとジェイスの仮面から出た糸は何かやり取りしているように見える。


 数分後、糸は仮面にスルスルと戻りニッタの光も胸に収束していく。


「おい、ニッタァ。どうなんだ?」


「ハルキさん、やっぱりイレイスしないとダメかんすかね?」


「何言ってんだ、お前。そいつはなんて言ってんだ?」


「ジェイスは、ジェイスはシャロンお嬢様を守りたいだけなんすよ」


「だめだ!」


「ハルキさん!」


「それを認めちゃいけねえんだ。俺たちはイレイサーだ。ゴチャゴチャ言ってねえでイレイスするぞ」


「お前もわかってんだろうが! んでジェイス? そいつもわかってんだろうがよ!」


「ハルキさーん、でも、でもっすよ」


「うるせえよ。グチグチ言うのはイレイスしてからだ! 行くぞ!」

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