第6話

「そのガルヴィス伯爵家ってそんなに素晴らしいご家族だったんすねえ。ありがとうございました」


 町での聞き込みを終え、やはり伯爵家に行くしかないなとニッタは考えていた。


 そして実際に伯爵家に出向いたものの、いくら呼んでも叫んでも返事はなく、仕方なく宿に戻ったのだった。


「ん? お前行かなかったの?」


「行ったんすよ。でも誰も出てきてくれなかったんすよ。ってハルキさん、なんでわかったんすか、オレが伯爵家に行くって」


「いいんだよ、んなこたあ。んで、伯爵家のお嬢様の情報は?」


「ああ、えっと、名前はシャロン・ガルヴィス十四才、銀髪、瞳の色は青でとても清楚でかわいい女の子だそうです」


「んで、そのかわいいお嬢様がなんで夜中に出歩いてんだ?」


「そうなんすよ、その話になると町の人達の口がほんとに重くなるんすよ。小さな子どもには夜中に町に出るとおばけが出るよ、って説明してるみたいなんすけどね」


「結局わかんねえのかよ。まあ、会ってみるしかねえだろうな。夜中に行ってみるしかねえか。お前、今晩行ってくれる?」


「行ってみるっす。ハルキさんはどうすんすか? あ、そう言えば魔獣の残骸はどうだったんすか?」


「俺はちょっと調べたいことがあるからな。んで、残骸の件は完全にガセだな。残骸が出てすぐ帝国軍が来て魔石全部持ってっちまったってよ」


「そうなんすねえ。ん? じゃあなんでツノダさんは依頼を受けたんすかね? そのくらいの情報なら国家情報保安局に入るはずっすよね?」


「さあなあ、なにかの確認なのか、別の何かがあるのか。ま、たぶん何も考えてねえな、あのおっさんは」


「その線が一番濃厚なのがツノダさんらしいっすよね」


「おし。んじゃあ今夜、町で待ってみるか、そのシャロンお嬢様をよ。ニッタ、飯を早めに準備してもらってくれ、飯まで休憩」


「はーい」


「おし、っと。おい、いるんだろ? 出てこいよ、イッコ」


「あら、バレてましたか」


「バレバレだろ、てかわざとだろ。お前ら聖石の件、追いかけてんじゃねえのか?」


「ええ、たまたま昨年この町で魔獣の残骸が大量に出てきたと報告がありまして、その中に聖石に関係するかもと調べていたのです」


「そっか、大変だな、お前らも。んで、ホリさんは?」


「今回は私一人です。発見された魔石の鑑定が終わり、聖石とは関係ありませんでしたから。その報告に来ただけです」


「そうか。んじゃなんだ? 俺の顔が見たくなったのか?」


「何をふざけたことを。ニッタさんのその後の状況を伺いたくて」


「ああ、変わりねえ。今のところな。メンテナンスでうちのアンドウちゃんからもお墨付きはもらってる」


「そうですか。良かった。ハルキさん、もし何か変化があった場合、すぐに国家情報保安局に」

「ああ、わかってるよ」


 イッコはしばらくハルキを見つめると諦めたようにため息を一つ吐き窓から姿を消した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る