第2話

 生き延びる事


 水を求めて取り敢えず近くの森へ入って行った。もう喉の渇きが我慢できない、限界まで来ていた。ここでまた、気を失ったらその時はもう一巻の終わりだ。確実に。自分は誰なのかここは何処なのかも知らぬまま、あの世行きは御免だ、死んでも嫌であった。ここはなんとか水と食べ物を探して生き延びなければならない。やる事がはっきりしていて、迷う必要が全くなかったので、それだけが救いであった。無我夢中で森の中を歩いていたら、得体の知れない果物が成っている木を見つけた。食べていい物なのか、そうではない物なのか分からないけれど、取り敢えずかぶりついた。ここは見過ごして水源を探した方が安全であるが、そんなこと考える余裕などない程、喉の渇きが強烈であったのだ。幸いにも味はそんなに悪くなく、果汁もしっかりしていて空腹と渇きを同時に満たしてくれた。腹が膨らんだせいか、急に眠くなってきた。

こんなところで寝ていたら、森の獣物の餌になるかもしれない。寝てはいけない、しかし、襲ってくるのは猛獣ではなく睡魔であった。

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