SKS(ショートキャットストーリー)
湧音砂音
〖第一話 犬にだけは戻りたくありません 〗
ある日の事だった
「魔王様来客です」
「何だ何だ、また四天王か?金なら出さんと
言って追い返してくれ」
「違いますよ」
「じゃあなんだ、戦士ならお断りだぞ」
「猫です」
「は?」
〖第一話 犬にだけは戻りたくありません 〗
椅子に座ってふんぞり返った魔王の前に一匹の三毛猫が座っていた
「本当に……猫だ。一体何の用だ?」
「…」
「人間の言葉じゃ分からんか、おい にゃー?」
「にゃ?」
「うにゃあ」
「にゃあ……」
「…」
「……」
魔王はとてつも無い人生の無駄遣いを感じた
目の前の猫は会話がどうにも通じ無いらしい
「もういい。おい、誰かコイツをつまみだせ」
「ああ、待って下さい!魔王様」
「……喋れるんかい」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「……って理由で魔王様ならこの魔法が解けるかなぁって」
「なるほどな」
三毛猫が語るに三毛猫の正体は人間らしいが、ひょんな事から人間に戻れなくなったらしい。だから魔王に戻してほしいのだ
「で、人間に戻ったらどうすんだ?あのハゲ国王の城へ帰るんか?」
「嫌です!もうあんな城はうんざり!大体王子様の顔を引っ掻いてやったのに帰れますか!!」
「何故にそんなことを」
「…」
「実はこの姿で王子様に会いに行ったんですよ。でも王子様は化け猫だなんて言うもんでおまけに本物なら尻尾を引っ張れば魔法が解けるなんて尻尾を引っ張るもんでつい……ね」
「阿呆か!」
「にゃあ……」
「しかし残念な知らせだがその魔法の解き方は儂も知らん。だから解けん」
「そんなぁ……そうだ」
「ならここで雇ってくれませんか?この姿でもお客さんの案内とか戦士を惑わすとかマッサージとか出来ますよ」
「えー」
「だって魔王城に就職したい奴中々居ませんよ。さっき私を案内してくれた人だってかなりやつれてましたよ」
「そりゃそうだけどさ……」
「儂……犬好きなんだよね」
「えーっ?!」
猫は目を丸くした
「で、でも猫は寝てる姿がかわいいですよ!」
「犬も寝るしかわいいだろうが」
「ご飯を一生懸命食べる姿もかわいいです!」
「それは犬もかわいい」
「寒い時は魔王様を暖めます!いっぱい喉も鳴らします!」
「犬だってそれは出来る」
「ぐっ……」
「あ、そうだ!」
「猫は一年に四回も発情期があります!子供はみんな魔王様に従うように育てますから魔王様の手下がたーくさん増えますよ!!」
わざとらしく手を広げて見せる猫に魔王は
すぐ答えた
「増えた分餌代だってかかるし何匹かは愛情が足りないとかで裏切るぞ。それに交尾するのも産むのもお前って事
「それは何とか私が頑張れば……こう見えて結構性欲強いですよ私」
猫は目を半開きにし、尻尾をぴんと立ててみせた。どうやら色っぽいポーズらしい
「強ければいいもんじゃねえよ。つか雄猫の陰茎って棘があるらしくてめっちゃ痛いらしいけどそれも
「え?!」
「当たり前じゃねえか人間の交尾とは違うんだぜ。大体相手はどこから見つけて来るんだ
街中の野良猫とでも合体するのか?」
「うぅ……確かに」
「あとお前性欲強めって言ったけどまさか
猫の姿でもガバガバ何じゃねぇよな?猫だって締まりが良くねえと相手にされんぞ」
「そ、それは……」
「なんだよ」
「私……性欲強めだけど……交尾は……その…一度しかした事無いから大丈夫だ……と」
「んなこったろうと思った」
「てわけで雇うのは無理だ。せめて犬だったらまだチャンスあったかもな」
「うぐっ……負けました」
尻尾を床につくぐらいだらんとして、猫は城からすごすごと出ていった
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城の外の道を三毛猫が歩いていた
「はーぁ……まさか魔王が犬好きだったんて
なんか会った時から犬の臭いしたんだよなぁ
仕方ない国王様に謝りに行くか」
それを部屋の窓から一匹の犬が眺めている
「よ、よかったわん……まさか猫が来るとは予想外だったわん……危うくバレるとこだったわん…」
「はぁ……魔王様に長年仕えている私でも今回ばかりはどうなるかと」
そう、さっきまで三毛猫が話していた魔王は
実は犬の化けた姿だったのである。人間が猫に化けられる様に犬もまた、人間に化けられるものであった
「で、魔王様はあとどれぐらいで帰るんだっけ……わん?」
「あと1ヶ月はかかるかと……」
「わ」
「わおぉ〜ん(泣)!!!」
三毛猫「?」
「今魔王城の方から犬の鳴き声が……って当たり前か犬好きなんだもんね」
おわり
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