第二章 向き合うおっさん
第三十五話 新たな日常
キィン!!!
黒い剣と白銀の剣が交差する。
少し火花が散ったかと思うとオレとホムラはすぐにその場を離れた。
距離を取った瞬間、第一解放状態で能力を使う。
「第三秘剣・
赤い髪を巻き上げたと思うとすぐに彼女を風刃を伴った円柱状の風が襲う。
「甘い! 」
その声と同時に風は爆散し、赤い影がオレに向かう。
剣を水平に振り、危機感知に引っかかった方向に剣をやる。
再度金属音がなり、剣と剣が交差した。
体重をかけたのだろう、ズシリと荷重がオレを襲う。
腰を引いて衝撃をやわらげた状態で、彼女を蹴撃で蹴り飛ばし、離そうとした。
だが悪手だったようだ。
「動かない?! 」
「この程度で私を倒そうなど無理だぞ! ハッ! 」
今日もまたオレは朝日を見上げた。
★
「今日もありがとうな」
「それほどでもない」
朝、朝食を食べ終わったオレはホムラにお礼を言った。
それにニコリと笑顔を作り答えるホムラ。
「いやいや、おかげでだんだんと感覚が戻ってきた」
「それは良い事だ」
肩を回し、体をポキポキと鳴らしながらホムラに言った。
正直筋力の
つい先日、賊の襲撃があった。
死者数が奇跡的な数字であったが次がないとは限らない。
よってオレは自身の体を、全盛期に近付けるために風魔の
その相手として選んだのがホムラだった。
「それにしてもホムラは強すぎだろう……。精霊状態でもあの強さなのか? 」
「精霊状態なら相手の攻撃を食らわない」
「なにそれ、卑怯」
「卑怯と言われても……。私達はそもそもそう言う存在だからな」
冗談だよ、と言い机の上のコップを手に取り水を飲む。
ギシっと椅子を
ホムラの戦闘センスは異常だ。
正直オレでは
彼女は、精霊である彼女が
冒険者ランクにしてA、精霊魔法とやらを使ったらSに届くのではないかとオレは
まぁSランク冒険者なんて見たことないが。
いつも
風魔の剣を使えば何とか戦いになると思ったのだが、全然だった。
そう考えていると何かに気が付いたかのようにホムラがオレに聞いて来た。
「そういえば何故今日は強化魔法を使わなかったんだ? 」
「ああ、それは今日もしかすると魔力を多く使うかもしれないからだ」
「? どういうことだ? 」
「今日は冒険者ギルドの依頼じゃなくて村人の家を回って行こうと思う」
「魔力と何が関係しているんだ? 特に関係が無いように聞こえるが……」
「この前賊に村が襲われただろ? 恐らくかなりの家や
なるほど、とポンと手を叩いて納得した様子のホムラ。
簡易的な
これが魔力が多い人なら問題ないのだろうが、オレのように魔力の少ない人には
朝から強化魔法なんて使っていたらすぐに魔力切れだ。
「今日はホムラにも働いてもらうぞ」
「任せろ! と、言っても何をすればいいんだ? 」
「オレは今日、強化魔法を使わない。だから重いものを持ってほしいんだ」
強化魔法を使わないオレの体はそこまで
だから重いものを運ぶ役割をホムラに任せようということだ。
無論いくらかは他の
だが、それでもホムラの出番は回ってくるだろうと
オレ達が話していると玄関からノックの音が聞こえてきた。
それにオレとホムラは顔を見合わせる。
「誰だ? 朝早くに」
「私が出ようか? 」
「いや、俺が行こう」
席を立ち。玄関に向かう。
「どちら様でしょうか? 」
「私です。ダリアです」
え……。ダリア、だと?!
まさか、あのダリアがこんな朝早くにおきているだと?!
「ほ、本当にダリアなのか? 」
「失礼ですね。私でも朝早くに起きる時くらいあります」
確かに声はダリアのものだ。
信じがたい現象に驚きつつも扉を開けた。
「おはようございます。ゼクトさん」
ダリアの落ち着いた、しかし高い声が耳に入る。
声が聞こえたと思うと、白く透き通った肌に金色の瞳、短い緑の髪に長い耳を持ったエルフ族の美女、ダリアが目に入った。
服は村人の白をベースに茶色や赤で
太陽に
軽く
ふわりと女性特有のいい匂いがするが、
彼女が中を静かに進むと扉を
よくよく考えると朝から男の家に女性が来るという状況はどうなのだろうか。
こういったところからオレ達の関係の誤解が広まっているような気がする。
だがそれを否定するのにも、もう遅いか。
「今日はどうしたんだ? 」
歩きながら聞いてみた。
すると彼女が見上げてきて口を開く。
「そろそろゼクトさんは村を周るのではないかとおもいまして」
「……どうしてわかるんだ」
「長い付き合いですから」
それでは説明しきれないレベルの予知能力だと思うんだが、ツッコんだら負けな気がしたので気にせず言葉を待つ。
今はまだのほほんとした村でこうしてやり取りをしているが、これが都会ならばすぐにでも衛兵さんのお世話になるレベル。
「その情報をどこで知った? 」という所まで知り
美女には謎が多いというらしいが、それは本当なのだろうとひしひしと感じる毎日だ。
そんな彼女はオレから目を離し、前を向いた。
「私は戦闘は苦手ですが、こういう場合の補助
「それは嬉しいが……一体何を? 」
するとダリアは少し立ち止まり、再度オレの方を見上げて口を開いた。
「
それはありがたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます