第十七話 おっさん、ホムラにリリの村を案内する 三 村長の家
「ほほほ。ついに結婚の報告かの」
「ええ。実の所「違います」……」
村長『ゼファ』がニコニコと見当違いの事を言いすぐさまダリアが乗ろうとするがオレがすぐに否定した。
否定されたのが嫌だったのか顔を
そしてその様子を何故か笑顔で見ているホムラがいる。
この様子をみて何が楽しいのかわからない。
この
ダリアを外に出られる服に着替えさせオレ達は村長の家に行った。
ノックをすると奥さんが出て来て新しい顔に驚いていた。しかし何か突っ込まれる前に
そしてそこからこの
「違うのか。いつかいつかとは皆思っているのだがの」
「ならすぐにでも
外に出るということで魔法使いの恰好をしているダリアが黒いローブの下から何か出そうとするが、腕を
こちらを笑顔で睨んでくるもオレも笑顔でその手を離さない。
話したら終わり、本当に流れで結婚させかれかねない。
腕に掴まれプルプルと震えるダリアの手から紙のようなものが見える。
恐らく本当に婚姻届けだろう。
両者の
あの紙に署名——
貴族ならともかく平民であるオレ達は最悪二人が「結婚します」と言って紙だけ提出して村役場で名前を書いてもらえばそれで成立してしまうこの国の制度。
こうなると
そして目の前には
ついて来たのはこの為か!
いつの間に婚姻届けを用意しやがった!
くっ! やらせるわけにはっ!
プルプルとオレとダリアの手が震える。
するとオレを
ナイスだ、村長。
こっちを見てにやけているその顔も少し神様のように映るから不思議
こうなれば、例えダリアと言えど引くしかあるまい。
相手は村長。上位者からの話の
こちらを軽く睨み
ダリアが
「後ろにいる彼女——ホムラの身分証明書を発行して欲しいのです。これからこの村に住むようなので」
「ふむ。なるほど。それは構わないが……お嬢ちゃんはどこから来たかな」
「大和皇国だ」
それを聞き、うんうんと頷く村長だが……大和皇国を知らなかったのはオレだけだったのか。
ちょっとショックだな。
「大和皇国の身分証明書か……何か証明できるものはあるかい? 」
「それが落としてしまってな」
「それは
そう言うと村長はそこから離れてオレ達を通り過ぎ扉の向こうへと行ってしまった。
「ダリアちゃん、新しい子? 」
ゼファ村長を待っていると扉の方から声がした。
ダリアが後ろを振り向くとホムラに興味津々なゼファ村長の奥さんが。
「私はホムラだ。よろしく頼む」
「あらあら元気がありそうな子ね。よろしくね、ホムラちゃん」
ニコニコしながらそう言う奥さん。
ホムラも笑顔で返し、ダリアが口を開いた。
「ホムラさんは大和皇国から来たらしく」
「あら! それは珍しいわね。そんな遠くから来るなんて! 」
「そうなのですよ」
「商人さんならともかく……」
と言いホムラの方をまじまじと見た。
確かに商人なら有り得るが今の彼女の恰好は商人のそれとはかなりかけ離れている。
それこそどこかの貴族子女のようだ。
「色々な国を回りたくて出てきたんだ」
「積極的ね」
「短い人生。楽しまなければ、と思ってな」
「そうなのねぇ。で、これからどうするの」
「しばらくの間、この村に厄介になろうと思う」
「まぁ! それは良い事ね」
ホムラの言葉に嬉しそうに微笑む奥さん。
心なしかどこかわくわくしているようだ。
「少しお話しましょう。ホムラちゃんが見聞きしたものにも興味があるわ」
「え」
「分かった。少々席を外して話そう」
「ダリアちゃんも! 」
「私もですか?! 」
オレと奥さんを交互にみて少し寂しそうな顔をするダリア。
「行ってくればいいんじゃないか? あまり村長の奥さんと話す機会なんてないだろうし」
「そうそう。時にはこっちに来てくれてもいいのにねぇ。そう思わない? ゼクトちゃん」
「そうですね。時にはオレの所だけでなく色々なところへ行ってみるのもいいかもしれませんね」
「ちょっ! 」
「じゃぁ、二人を
よろしくお願いします、と言うと二人を連れて扉の向こうに消えていった。
それと交代するかのようにゼファ村長が入ってきた。
手には一枚の紙がある。
オレの前まで来て腰を下ろすとこちらを見て
「ばあさんが二人を連れて行ったのじゃが……」
「ちょっとした話し合いの様で」
「ばあさんも好きじゃの」
少し
「住民申請じゃ。これが身分証明書になるじゃろう」
「ありがとうございます」
お礼を言い受け取ると村長が聞いて来る。
「……村役場でなくわしのところに来たということは、何かあるのかの」
鋭い。
流石年の
「ええ。実は
「まぁ聞いてみてからじゃの」
「あとこれはあまり
「話してみなさい」
理解があって助かる。
そんな村長を真剣な目で見て気を引き
「……わしもかなり長く生きとるがそんな話聞いたことないの。確かに
「やはり信じてもらえませんか」
「いや信じよう。お主は嘘をつくようなタイプじゃないとわしは踏んどる」
「ありがとうございます」
軽く頭を下げるオレ。
「言われた通り皆には話さないでおこう。無用な混乱は不要じゃて。じゃが……一応嬢ちゃんのことは領主様に通すが、良いかの? 」
「そうですね……。構いません」
「すまんの。最低限の報告義務とやらがあるのでな。で、彼女の身分なのじゃが……この村の滞在許可を出すのは良いとして、種族はどうするのじゃ? 」
やっぱり気になるか。
「彼女は背の高いドワーフ族を名乗ろうと言っていました」
「……無理がないかの? 」
それに苦笑して言葉を
「オレもそう思いますが、彼女が出来ると言っているので」
「かなり信用しているようじゃの」
「相手は精霊ですから。何が出来て、何が出来ないのかオレにもよくわかりません。しかし嘘をつく人ではないかと感じています」
なるほど、と言い村長は足を組み直した。
「じゃ、それで登録しておいてくれの」
「分かりました。あと一つ問題が——」
続けてスタミナ草の群生地の採取地点を変更を提案し、二人が帰ってきたところでオレ達は村長宅を出た。
———
後書き
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