第16話 会長と駆け引き


「あれ?朝陽菜あさひな先輩、PCの前で何やってんすか? エロゲ?」


「ちげーわ。今からリモートで生徒会長と話が、あっ、きた」


《……こんにちは、生徒会長の佐倉です。繋がってますか?》


「はーい、繋がってます。えーっと代表の朝陽菜 まことです。宜しくです」 


《新たなクラブの申請ね。あんこ研究倶楽部……ふざけてる?》


「いえ、大真面目ですが」


《料理研究クラブなら、まだわかるのだけど?》 


「あんこ限定なんでね」


《フゥー。……茶番はもういいわ。あなた逹の目的はなに?》


「目的?」


《とぼけないで。あんな脅迫めいたメッセージを送っといて》


「ぉぃ、明里。お前、何送ったの?」


「脅迫なんかしてないっす。クラブ申請と『あなたAAカップですね』ってだけすよ?」


「めっちゃ煽ってるやん」


《……今まで決して誰にもバレなかったのに……この情報、いったいどこから?》


「それは秘密です」


《私は……常に完璧でなければならないのよっ!!……もしバレたら……こうなったらコロすしか……》


「この人、なんか物騒な事言っちゃってますよ!? かましといた方が良くないすか?」


「だな。あー、佐倉会長。我々はこの学園の全ての情報を掴めるだけの力を持ってます。でも、そういう力があるってだけで、それでどうこうしようなんて思ってません。あくまで単なる一般生徒ですから。ただ、会長。あなたが学園の為にこの力を借りたいと望むのであれば……お手伝いする事もやぶさかではありませんが?」


《この学園の暗部として活動してもいいと?》


「お望みとあらば」


《…………条件を聞きましょう……》


「まず、旧校舎を部室として使用する許可をお願いします」


《……そうね、老朽化していない部分であれば許可します。他には?》


「あっ、はい、はーい! 部費が欲しいっす。贅沢言わないんで、文系の他のクラブと同程度で。あと、顧問やってくれそーな先生紹介してくれたら有難いっす」


《部費は会計と相談して決めるわ。顧問については……私の方で、心当たりを当たってみましょう。これでOK?》


「うっし、オッケーです」


《これで契約成立ね。約束は必ず守ってもらうわよ?》


「約束は果たします。自分の名にかけて」


《朝陽菜 まことだったわね。覚えておくわ。では失礼》





「ふーっ。なんとか上手くいったな」


「でもこれであの人の命令、聞かなくちゃいけなくなりましたね?」


「まあ、仕方ないさ」


「栞ちゃんにも報告しないとですね」


「そーだな。ってかさ、冗談で名付けた『暗部』が、まさか本当になるとはね」


「いいんじゃないすか。


嘘から出たまことって事で」



  





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