第20話さっさと来いよ転生者
8匹の豚達は大人しく座っていた。暴れる気配もない。ネズ公の魔力が消えた事ぐらい分かるだろうに、怒ったりしないのか。
魔族連中が
ちゃんと半殺しにしたんだね。
馬鹿野郎共が。どこの狂戦士だよ。
このままだと死んじゃう!とか思って回復させたんだろハゲ。もっと小細工を覚えろよ。分かりやすいわ。
さてコイツらどうしてやろうか。マジで興味ねえわ。雌豚はさすがにブサイクそうだし……。興奮しないだろうな。じゃあ全員徴兵して突撃させるか、それとも売れたりするのだろうか。
「怪我人は治療しろ。女性陣は…………」
おいおい!クソエロいなボケッ!なんだよ、魔族全員エロ過ぎるだろ。
何だ?何でだ?人間の美的感覚で言えば化け物だ。
鮫肌だし爪が尖りすぎだし、翼が不気味だし、口裂け女ぐらい口がデカい。綺麗なのは目ぐらいか。
ムラムラする――――。
感覚がバグった?
美醜で言えば間違いなく醜。早押しなら誰にも負けない速さで答えられる。
なのに興奮する。サン○ウィッ○マンぐらい興奮してきた。
「
「はっ!?ああ、汁?何か汁が出たのか?」
「へ?い、いえ。私は
「あ、ああそう。ああ!女性陣は怪我人の治療に当たりなさい!さあ、俺の気が変わらない内に行くんだッ!」
「は、はい。失礼します」
マルガリータ、もといモモといい、なんかエロい目で見てしまう。この村で直視できるのはババアぐらいだ。
マジカヨ。
まあいいや。魔族に手を出したらイケないなんて使命はないしな。俺のプレイがいくら激しいからって、彼女たちを壊してしまうことはない。俺だって普通の事ぐらいできるっつーの。
ったく、何だ豚。悲しげだなあ、ネズ公がいなくて寂しいか。
臭え臭え。一気に萎えたわ。
「お前らどうしたい?一応希望を聞こう」
「王様は死んだのか?」
「殺した。次、許可なく質問したら殺す。どうしたいか希望を言え」
「――――新しい森に行きたい」
「行ってどうする。普通に暮らそうとか思ってんのか?」
「そうする。お前とは戦わないと約束する」
「復讐はいつでも歓迎よ。俺が聞いてんのは、普通に暮らせると思ってんのか?人間たちが攻めてくるとは考えないのか?そういう話よ。分かるか?」
「人間……。アイツらが仲間を殺した。だから戦った」
バカだな。知能レベルうんちだ。
肉弾戦車として前線に投入するぐらいだな。
転生者達の実力を測る良い当て馬になりそうだ。馬はいないか。当て豚、当て鳥、当て犬。語感悪いな。
「よしいいだろう。森へ行くことを許可する。ただし、期日は俺が指定する。そして、鳥と犬もまとめて全員で向かえ。分かったか?」
「いつだ?」
「ちょっと待て」
ニンニン、ニンニン、ニンニン。
トゥカナの街に居りますな。いつ来るんだ?ディキの手下はまだ諜報活動してるかな。大体の期日でいいから聞きたいところだ。
「んー未定だ。1週間以内には行かせてやる。それまで飯は今まで通りにしていい」
「分かったありがとう。皆で移動する。時間は守る。残飯と糞を食べる」
「よろしい。頭いいなお前」
「族長だから。ありがとう」
転生者達が動き出したら、コイツらともおさらばだな。ネズ公、ちゃんとミカちゃんを食べてれば殺さなかったのになあ。
※※※
「へえー広いじゃーん」
トゥカナの領主邸に来た私達は寛いでいた。御璽の押された書状を携え、道中はまさに国賓だった。2日の短い旅だったけど優雅で贅沢。文明は日本よりも遅れているけど、人々が頭を下げる姿に気分も高揚した。あの女がこの世界に居座りたがる理由がちょっとだけ分かった気がする。
それでも帰りたい気持ちは変わらない。
絶対に帰る。
この戦いを終わらせて、必ず。
決意を胸にすると自然と手に力が入っていた。この手袋は魔族の皮を剥いで作ったものらしい。魔法耐性が向上する上に、剣を使う私には大切な滑り止めになる。
とても良く手に馴染むし、色も悪くない。手の甲の材質がザラザラしていて、そこだけがマイナスポイントだと思う。
1人に1部屋与えられる程の敷地。
与えられた部屋も寂しくなる程に広い。天蓋付きのベッドに、私には必要ないダークブラウンの机。煌々とする間接照明に手を掛けようかという時、ノックの音が聞こえた。
「はーい」
「よっ」
「
「暇だったからさ。邪魔?」
「ううん」
彼の表情は何時もよりも暗い。
当然だ。
死ぬかもしれないのだから。神様から能力を貰っても、絶対はない。
しかも相手は魔王だ。
この世界を長年苦しめた悪の権化で、私達がいなければ、人々は平和に生きられない。
私達には関係のない話。
だけどやるしかない。
私達が帰る条件が魔王と魔族を殺すことだから。
「明日だな」
「うん」
「さすがに恐くね?寝れそうもないわ」
「――寝ないと力が出ないでしょ」
「確かに」
「一緒に寝る?」
「邪魔じゃない?」
「いいよ。この部屋広くて心細いから」
「分かるわー。無駄に広いよな。庶民だから慣れてないわ」
「やっぱ心細くないや。友梨佳、庶民じゃないし」
「はあー?ウザッ。小学校から同じ公立校だろうが」
明日か。
「ヤッとく?」
「寝ないわけ?」
「そんなに眠い?」
「あんまり」
「かもーん友梨佳ちゃん」
「キモッ。ハハハ」
明日だ。
間接照明に手を掛ける寸前、部屋の影が動いた気がした。なんだろう。
手の影が動いただけか。私も緊張しているみたいだ。
※※※
「ディキ〜ちょっといいか〜?」
魔族連中は俺に認められたのをいい事に魔法をバンバン使っている。しかも上手い。俺よりも早くて的確で激ウマ。
ソッチなら俺も早くて上手いんだけどな。
ボロボロになった牢屋を魔法で消して、そこに野戦病院を建てた。牢屋は石で出来てたのに、何で家や病院は木造なのか。木が好きな民族性なのかと棟梁的な存在の女に尋ねてみたら「簡単だから」らしい。
サバサバ系かよ。コイツ絶対ヤリ○ンだろ。
おっといけねえ、偏見がすごいや。
しかし、転生者達は待ってくれない。
青頭がいい例だ。俺の熟女チャンスを奪ってイキリ散らすゴミだ。そんなのと似た奴らがうようよいるんだから、おちおち射○もできねえわけよ。
全員片して、楽しみたいね。しっぽりと夜を明かしたいね。
というわけで、頭が抉れたとか言ってたディキのところへ来たわけだ。
頭に響くかと思って優しい声で、そろーりと部屋へ入った。
――――モグラ叩きだ!
ベッドの周りには数名の人間たちが、床から頭だけ出してブツブツと唱えている。
神への祈りだろうか。
ていうかここ3階なんだけど、2階の天井から下半身が出てるのかね。
まさか、そういうプレイの最中!?
天井から出てくるモノをいじる的な?
難解だ。屈折している。
「標様!」
ディキが驚くと、念仏が止まり視線が集まった。
おっと。
俺はヤオイだろがユリだろうが認める質なんで、ここは潔く引くとしよう。
奴隷の情事を咎めるなんざ、主人としてあるまじき。
俺の性癖も屈折しているんだ。俺に気を使うなんて野暮なことしてくれるなよ?どんどんヤッちゃって構わないぜっ!
「ケケケ。お前たち無礼だぞ、出てこい」
「はっ」
何してんの!見たくない見たくない!野郎のナニなんか見たくないんだ!
「ケケケ。標様?どうされました?」
車に引かれる寸前みたいな、一人演技をかましていると、ディキの素っ頓狂な声がした。
いいんだな?見ても。
マジで見るよ?
ちっ。勘違いかよ。恥ずっ。いい上司ぶりたかったのに、恥ずっ。
「ケケケ。標様もトゥカナの件でございますか?」
「俺
「ケケケ、ございます。話せ」
あらヤダ。美男子じゃないの。ショタじゃないのよ。金持ちでぶよぶよのババアがぺろりしちゃいそうだわ。
「はっ。チェリーフィズと申します、お見知りおき頂ければ幸いでございます」
「チェリーフィズ。人気大爆発しそうな名前だ」
「はっ、有難き幸せ」
え?何が有り難いの?コイツ、とりあえず言っとけばいいやとか思ってんだろ。
可愛いから許すけど。
「情報プリーズ」
「はっ。敵の出発は明日の朝6時でございます」
「早いな。んで、移動は徒歩か?馬車とか乗り物で来るか?それとも瞬間移動か?」
「偵察が数名、付近に瞬間移動してきます。それ以外はこの村の近くまで馬車移動。その後、徒歩に切り替えるようです」
「馬車は停まってたか?」
「はっ」
「お前らの裏をかこうと、嘘の情報を流した可能性は?」
「それはございません。バレるようなヘマは……」
「わーってるよ。でも可能性はあるだろ?」
「そんな気配は全く感じませんでした……」
「ケケケ、チェリーフィズ下がれ。情報を集めた私めの所感でございますが、よろしいですか?」
「もちのろん」
「若いです」
「若い?」
国王の代理であるマリアーネという女の子は弱冠16歳。
そして転生者共も大体そのぐらいの歳だろう。青頭に聞いてないわ。
奴らは力を信じて疑わず、ここに来て夢のような生活を送っている。そこには慢心と、誰もがひれ伏すという誤解がある。
どうやら転生高校生達は、嘘の歴史をしっかり刷り込まれているらしい。
魔王はクソ、魔族はゴミ。人はとにかく苦しめられていて、助けてほしい。そんな声に応じたということになっているそうだ。
実際は家に帰るために仕方なくらしいが。
それでも贅沢な暮らしに慣れれば、失うのが怖くなるだろう。良いように使われていると分かっていても、逃げられなくなる。
きっとそんな奴もいる。
男には美女を与えて、女には財と権力を与えて。
きっちり仕込まれた若者が、必死に考えた策だそうだ。
「ケケケ。青臭いガキの無謀な計画でございます」
「だな。作戦でもなんでもない。正面突破だろ」
「こうも愚かな作戦を国が立案するはずもない。その通り、転生者が計画したのです」
「じゃあ、チェリーボーイから聞いた内容は信じていいってことか」
「その通りでございますが、もう1つの計画が同時に進行するので、そちらもお話してよろしいですか?」
「もう1つね。どうぞ」
「王国は弱りきった両者を諸共消し去る気でございます。ケケケ」
「国って怖いねー」
猿回しが佳境に差し掛かった頃合いで、王国の騎士が群がって来るそうだ。
どっちも邪魔だから。
故郷に帰る術などない。転生者は向こうで死んでいるからだ。神様に聞いたから間違いない。
しかし魔族を消すには力がいる。ならばと転生者を呼び出して、餌を与え、ベルを鳴らすとヨダレを垂らすまでに飼い慣らした。そして嘘の歴史を信じ込ませ、使い捨てにする。誓約という名の嘘をついて、俺たち諸共消し去るそうだ。
若いマリアーネも転生高校生たちも知らない。老獪なジジイ共が考えついたであろう策だ。
張り切る若者には好きにさせ、淡い計画で満足させる。
そして国は裏で糸を張り巡らせておく。俺とガキ共が削り合いボロボロになったところで糸を断ち切ってやれば、一網打尽というわけだ。
傲慢な正義の番人達が、己の保身か希望の鍵を手にするためにやって来る。苦心して創り上げた堅牢な天守閣が砂上の楼閣だと認識できない程に若い者たちが去来する。
そんなガキに魔王と魔族はボロボロになるだろうと思っているカスが、その裏には控えている。ニチャニチャと脂ぎった手でチンポをシゴきながら愉悦に浸ってるのさ。
「楽しみで仕方ない」
「ケケケ。何かお考えが?」
「王国まとめて犯してやろっと」
「ケケケ、壮大なお考えです。時が必要かと」
「ゆったりやるさ。とりあえずはガキんちょの鼻っ柱を叩き折るか」
「標様」
「ん?」
「死体はなるべく魔族に頂けませんか」
「へ?んまあ別にいいけど。なんで?」
「苗床にしたく存じます」
何?創造神は死姦ダイスキっ子なの?
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