三、もうひと口どうぞ
四人は南の地の
「おっかしいわね。どうして皆、私たちを避けちゃうのかしら?」
「そうですね。どうしてでしょうか······」
本当はわかっていて言っている
「見たこともない美しい仙人様御一行が、自分たちと同じ路を歩いているのだが!?」というのが、民たちの心の声である。恐れ多くて近づけないというのが本音だろう。仙人が皆、このように見目美しいわけではないのだが····。
そもそも地仙である
「とりあえず、二手に分かれて情報を集める方が効率が良いと思うのですが、」
「じゃあ私、
言って、
彼はそれをもちろんわかっていてやっている。それくらいはさすがの
「
「どうして地仙の
はい、と小さく手を挙げて
賑やかしい
「
「ふ、ふたりとも、ひとり一本は多いので、ふたりで一本にしてください」
「はーい。りょうかいでーす」
「わ、わかりましたー!」
なにこの空気? と
「
そこには透明な飴で固められた赤い実が連なっており、
それをじっと見つめられ、「どうしたの?」ともごもごしながら訊ねる。
「なんだか雛に餌付けしているみたいで······不思議な気持ちになってしまいました」
「こんなことで喜んでくれるなら、何度でも」
悪戯っぽく笑って、
「ふふ、もうひと口どうぞ」
それがおかしくて、
その様子を見ていた
それなのに、この雰囲気はなんだろう?
「ねえ、
「······はい? 今、なんて?」
「いや、なんだかそうやって目の前でイチャイチャされると、そうとしか思えなくなってきて。だからこの数ヶ月、離れずに一緒にいるの?」
腕を前で組んで、品定めするかのように
最後に、青銀色の瞳と眼が合った。
「
「なんで主を、従者が呼び捨てにするのよ?」
「
「なんで疑問形なのよ。ねえ、
行き交う人々で混雑していた路が、サンザシ飴の店先にいる四人を中心にして自然と輪になるように空間があいた。
「
口に入れたサンザシ飴を噛んで、不敵な笑みを浮かべた
「
「私········こんなに長く生きているのに、あれが初めての、」
無意識に唇に指を当てて、動揺している
「え······うそでしょ? まさか、
「······それ以上は、なにも訊かないでくださいっ」
「そんなことされて、もしかして今まで忘れてた、なんて言わないわよね !?」
「わーわー! だから、なにも訊かないでくださいってば~っ!」
完全に忘れていたわけではないが、ふたりでいるのがあまりにも自然になっていたので、すっかりあの時の事が抜けていたのだ。我ながらなんて間が抜けているのだろうと、
「いい加減、迷惑なのでさっさとここから離れましょう。
呆然としている
人だかりを抜けて散らばった四人は、各々の想いを胸に抱えつつ、本来の任務を思い出す。
「夕刻にまたここで落ち合いましょう。それまでは別行動で」
人食い蝶の噂は思いの外様々な場所で手に入り、各々が冷静になった頃、再びあのサンザシ飴の店先で顔を合わせることとなる。
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