二、謝らないと言ったら呪われました。
黒竜は気を取り直して、確かめるように頭を
こうなってはどちらも引けず、黒竜は最終手段に出ることにした。
『"絶交"はとりあえず置いておいて、俺にも一応情けというものは持ち合わせているつもりだ。もし貴様が地に頭をついて謝るならば、赦してやってもいい。だが、もしそれができぬと言うなら、四竜のひとりである俺に逆らった罪を、その身に負うことになるぞ』
大概の人間は、これで折れるものだ。黒竜は勝ち誇ったかのように、金眼を細めて
挙句、にっこりと笑みを浮かべ、黒竜に向かってこう言い放つ。
「私は間違っていないので、謝りません」
『――――っどうなっても知らないからな!』
黒竜は思わず素が出る。それは見た目の威厳さとは真逆の発言で、あのそれっぽい話し方は無理をしていたのだろうな、と
次の瞬間、
『これでお前は法力が半減し、余命十年になった。呪いを解いて欲しければいつでも俺を訪ねて来い。俺も鬼じゃないからな。謝れば寛大な心で赦してやってもいいぞ』
ふんと鼻息を荒くし、黒竜は新月が輝く空へと舞い上がる。
気分が削がれたので、もう帰る! と海の方へと戻って行く。同時に黒煙が消え、ぽつんと残された
「本当に法力が半減してる····余命十年? 相変わらず、意地悪なのか優しいのか解らない子ですね、」
しかも最後に言ったあの台詞。いつでも訪ねて来いとか····だったら無理に呪わなくてもいいんじゃないか、と
(でも私は間違ってません。だから、謝りません)
さて、どうしたものか、と天を仰ぐ。
「まあ、まだ十年もあるんだし、それだけあればたくさんのひとを救えます。法力が半減したのは痛いけど、問題ないでしょう。その気があれば、人間なんでもできますから!」
よし、と胸元に掲げていた両手の拳を握り締め、
それに気付いてその場にしゃがみ込み、「君のせいじゃないから、気にしないで」とそっと小さな頭を撫でると、すぐに立ち上がる。
「もう逃げ遅れちゃ駄目ですよ?」
言って、
白蛇はその後ろ姿が見えなくなるまで、その場から離れなかった。
命の恩人は自分のせいで呪われ、十年しか生きられない身体になってしまったのだから。
しん、と沈黙した森のあらゆる場所から、先程散って行った者たちがわらわらと姿を現す。
怖い黒竜はどこかへ行き、喧嘩を吹っかけていた地仙も消えた。
夜の森は妖たちで賑い始める。最後まで残っていた白蛇も興味を無くしたかのように、人知れず茂みの奥へと姿を晦ますのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます