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 しばらくしてゲドラさんが僕たちのところへ戻ってきた。その手には1枚の護符が握られている。村の建物に貼ってあるものとよく似ているけど、貼付用と携帯用では描いてある模様や文字などが微妙に違うようだ。


「お待たせしました。では、アレスさんにこの護符をお渡しします」


「ありがとうございます。これを持っていればアンデッドは近寄ってこられないんですね?」


「基本的には。ただし、追い詰めると襲ってくる可能性があります。『窮鼠猫きゅうそねこを噛む』という例えの通りです。その点はどうかご注意ください」


「ちなみに今まで村に現れたアンデッドはどんなヤツだったかご存じですか? 村長様の話ではゾンビのようだったと聞きましたが?」


「えぇ、ゾンビで間違いないでしょう。私は村長様からの依頼で定期的に夜の見回りをしているのですが、その際に遭遇して何体か倒しています。でもどこから湧いてくるのか、倒しても倒しても減らない」


 それを聞くと、深々と椅子に座っていたミューリエは興味深げに軽く身を乗り出す。


「ほぅ、数が減っていないというのは初耳だな。村長の話にもそれは出ていなかったが?」


「あ、語弊がある言い方でしたね。減っているように感じないということです。それだけたくさんのアンデッドが襲ってくるのです。ですからもし戦うにしても、特にアレスさんはあまりご無理をなさらない方が……えっと……その……」


 ゲドラさんはそこまで言うと、なぜか僕をチラチラと見ていた。しかも口ごもっていて、まだ何か言いたげな雰囲気。どうしたんだろう?


「失礼ながら、アレスさんは……その……そんなにお強そうには見えませんので……」


「っ! ……ははは……は……」


 その瞬間、僕は全てを悟って思わず苦笑いが浮かんだ。


 だって僕の様子を見たら、確かに大抵の人がゲドラさんと同じことを感じると思うから。そしてそれはその通りなので、僕としてはぐうの音も出ない。


「心配は無用だ。アレスにはアレスの戦い方がある。万が一の時は私がサポートするしな」


「オイラもアレスを助けるしぃ~☆」


「ミューリエ……タック……っ!」


 即座にフォローをしてくれたミューリエとタックに、僕は胸がいっぱいになった。優しくて心強い仲間と一緒にいられることを嬉しく思う。


 そしてそんな僕たちの様子を見てゲドラさんは目を細める。


「なるほど、それはなによりです。――では、ほかの方々がお待ちのようなので、そろそろよろしいでしょうか?」


「あ、気付かなくてすみません。ありがとうございました」


 僕はゲドラさんに御礼を言い、ミューリエやタックとともにその場をあとにした。


 建物を出るとそこにはゲドラさんのところへ護符を買いに来たと思われる人たちの列が出来ていて、静かに順番を待っている。


 そっか、僕たちは思った以上に長居をしていたかもしれない。もう少し手短かに済ませれば良かったかな。



 →47へ

https://kakuyomu.jp/works/16817330652935815684/episodes/16817330652938088758

 

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