本格的なスタート
アルカの魔力が爆発するように膨張した瞬間、私は弾丸のように前に飛び出した。
「ぐあぁっ!?」
「がはっ!」
近くにいた兵士たちを一瞬にして切り倒し、いつの間にか膝まで上がった水を蹴りながらタールマメインに飛びかかった。剣と水槍が激突した。
「なるほど。アレのために今まで時間を引っ張ったのか?」
「半分はね」
アルカが脱出した瞬間から彼女の魔力の気配がおかしいことに気づいていた。その魔力反応が何を意味するのかも。
なぜ急に覚醒するようになったのかは分からないけれど、とにかく重要なのはアルカが侵食技の覚醒を控えていたこと。自分の〝世界〟で外を塗り重ねるのじゃなく、外の世界そのものを掌握する〈万魔掌握〉なら〈水源世界〉の魔力強奪をすっかり無視できる。それだけでなく、広い範囲の水を自分のものにして戦況そのものを完全にひっくり返す。
それを待つのが半分。そしてあとの半分は――。
――天空流奥義〈万象世界五行陣・木〉
水槍と力比べをしていた剣から魔力が噴き出した瞬間、タールマメインは軌道を見抜いて回避した。絶対的な斬撃が空気を切り、水を割り、大地を切り裂いた。〈水源世界〉の魔力強奪なんて関係ないというように。
世界の物理法則。魔力の流れ。魔力の作用法則。そのようなものを含めて世界の存在方式と原理を完全に把握し、それに合わせて剣を振り回すと世界がその剣の味方になる。
それがまさに〈五行陣〉の真骨頂。他人の侵食技さえも〈五行陣〉を駆使する瞬間だけは私の力になる。そのため、〈五行陣〉の力が込められた斬撃は〈水源世界〉の雨の魔力強奪を完全に無視できるのだ。
唯一の短所は世界を解釈し、その力を利用することなので、初めて見る侵食技の中で〈五行陣〉を駆使するには侵食技を解釈する時間が必要だってこと。私が今まで防御に没頭したのはアルカを守るためでもあったけれど、何よりも〈水源世界〉を解釈して〈五行陣〉を使えるようになるための時間を稼ぐためだった。
そしてもう時間稼ぎをする必要がなくなった。
「アルカ。兵士たちの方は任せるわよ」
「任せてください!」
今のアルカなら兵士たちを全部任せてもいいだろう。いや、こっちより早く兵士たちを全部制圧して私に加勢しに来ることも不可能ではない。そんな彼女に兵士たちの方を任せておけば、すべての兵力を一人でカバーできる。
すなわち、正真正銘タールマメインとの一対一が成立する。
――天空流〈三日月描き〉
――自在水芸〈蛇道衝〉
五行陣の力で〈水源世界〉の影響力を克服した斬撃を放った。
タールマメインは私の襲撃を避けながら水槍をまっすぐ突き出した。水槍は蛇のように曲がりくねった軌道を描きながら〈三日月描き〉を避けた。迎撃しようと振り回した剣も同じだった。
「ふん」
水槍が私を刺そうとした瞬間、その部位に魔力を集中して傷なしに受け止めた。そして横にもう一度〈三日月描き〉を放った。タールマメインは少し驚いた様子だった。それでも体を下げて避けながら地に向かって水槍を突き出した。
――自在水芸〈虐殺棘〉
槍刃が地の水を突いた瞬間、私の下を含む広い領域から無数の水槍が湧き上がった。
私は足を上げて地面を踏みにじった。魔力のこもった足が私の下から上がってきた水槍をすべて粉砕した。
――自在水芸〈雨媒衝・乱〉
足の魔力で破壊されていない水槍がすべて一斉に〈雨媒衝〉を発動した。上下左右前後、あらゆる方向から規則性のない乱雑な突きが私を襲った。
全部剣で破壊することはできるけれど、その間にタールマメインがまた別の攻撃を仕掛けてくるだろう。
――天空流奥義〈五行陣・水〉
その瞬間、周辺の魔力場が反転した。
周辺一帯の水が全部魔力に変換された。それがすべて私の剣に吸収された。あっという間に水一滴のない乾いた地域が形成された。空の海から降っている雨も魔力に変わり続け、私に集まった。
侵食技〈水源世界〉の水はタールマメインの魔力が変換されたもの。すなわち本質的には魔力だ。魔力そのものや魔力から触発たれたエネルギーを問答無用で支配し凝縮する〈五行陣・水〉ならここの水を奪うことができる。
そして水を奪うということはすなわちタールマメインの武器を奪うようなものだ。
「はああっ!」
タールマメインに一直線に突進して剣を振り回した。
『水源世界』の魔力が莫大に凝縮された刃を、タールマメインは水槍で受け止めた。タールマメインが直接握っている水槍だけは遠隔での〈五行陣・水〉では奪えなかった。
けれども、刃が水槍に直接触れると水槍を成していた水が急激に強奪された。タールマメインはすぐに槍を振り回し、刃を弾き出した。
「武器をなくした気分はどう?」
無数の斬撃を展開した。タールマメインを切り倒すためというより、まだ容量が残っている水槍を完全に無力化するため。
けれども、タールマメインは神妙な技量で斬撃をすべて受け止めた。水槍の表面に薄い魔力の膜をかぶせ、〈五行陣・水〉の刃に触れるたびに、その膜が吸収される間に刃を弾く方法で槍の損傷なしに対処したのだ。
「もう俺様に勝った気分になるのはせっかちだ」
タールマメインは後退するどころか、むしろさらに距離を縮めてきた。
「弱点と呼び難い方法を実際に使ったことには驚いたが――」
タールマメインの槍が〈水源世界〉の大地を掻いた。大地の傷から水が噴き出した。
私は〈五行陣・水〉の刃を水に向ける――直前、これまでとは違うと感じて身を避けた。噴き出す水は〈五行陣・水〉に吸収されず無数の水槍を形成した。
「刺されることがほとんどない弱点だからといって、対応策を考えておかなかったと思ったか?」
タールマメインが言うと同時に、水槍が一斉に私に殺到した。
―――――
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