北方のお姫様
本当に何事もなく数日が過ぎた。
肯定的にも否定的にも語り草のない日々だった。私たちは港に停泊している船の中で無聊を慰めるだけで、北方の人々はまだ私たちから距離を置いていた。せめて訓練をする場所もなかった。実際、呪われた森への空間転移を活用すれば訓練は可能だったけれど、どんなことが起きるか分からないからこの場を離れることはできない。
……まぁ、実は私は物理的な訓練じゃなくても構わないけど。むしろ物理的な訓練よりもっと重要なことがある。
「テリアはまた閉じこもっているのか?」
「はい。イメージトレーニングとおっしゃっていました」
「ふむ。そろそろそちらに集中する時ではあるだろうな。今のテリアなら身体能力や技術よりは〈五行陣〉を完成させた方がはるかに効果的だろうからな。〈五行陣〉は魔力制御訓練が必要な境地だ。瞑想を通じて魔力を扱うことが必要だろう」
極度に鋭くなった感覚が部屋の外のやり取りをキャッチした。
ジェリアの言う通り、今の私には魔力の制御を向上させることがもっと重要だ。身体や武の条件はもう成し遂げたよ。あとは圧倒的な魔力のバランス感覚だけだから。……そのバランス感覚が文字通り命をかけなきゃならないほど難しいけどね。
退屈極まりない今の状況は、むしろこのような訓練をするにはもってこいだ。だけど騎士団の立場では、そして騎士科の生徒としては良くない状況だ。いつまでもはかどらないまま足止めされているのは時間の無駄だから。
幸いなことに、状況の変化はついに訪れた。
「ロベル、お嬢様に……あ、ジェリアさんもいらっしゃったんですね」
「トリア。どうした?」
「百夫長の伝言です。北方の人が接触してきたそうです」
ついに動いたよね。
魔力探知を船外に拡張した。ベノンさんと騎士たちは北方の人と向き合っていた。どうやらあっちから訪ねてきたようだね。北方の人々は……数日前見た気配もあるし、見慣れない気配もあった。予想通りだね。
訓練を中断してドアを開けると、外にいたみんなが私を振り返った。
「出たな。聞いてたか?」
「ええ。あっちから接触してきたんだよね? 行ってみよう」
外ではすでにベノンさんが北方の人々と話を進めていた。北方の人々はこの前のように多くの人が集まっていたけれど、その時ほど敵対的ではなかった。その時、代表としてベノンさんと話していたおじさんもいた。でも彼は今度は後ろに下がっていて、代わりに私と同じ年頃に見える少女がベノンさんの前にいた。
「あの方は……」
初めて見る人だった。当然、魔力の気配も見慣れない。しかしその人の顔は見慣れた。
澄んだ水のように透明感を与える水色の髪と、逆に色の濃い青い目。厚着に半分埋もれているのが少し不便そうだった。露出した顔と髪の毛からはかなり苦労したような気がした。
しかし服装と印象が多少変わり、私が知っている姿より少し幼いけれど、その顔は明らかに私が知っている顔だった。
「あの人も『バルセイ』に登場したのか?」
ジェリアは私の顔色を見て尋ねた。
「ええ。北方の大陸の協力者よ。ゲームで見た姿とはずいぶん違うけど……まぁ、それも当たり前だね」
「なぜ?」
「あの方は北方のお姫様だからね。ゲームではここの国が滅びなかったの。今は国も壊れたし、環境ももっと険しくなったから、ゲームより苦労しているはずよ」
メリネリア・デリン・ベルフロスト。主演ではないけれど、アルカたちが北方の大陸で活動する時の重要な助力者だった。
ちょうどベノンさんがメリネリアさんに挨拶をしていた。
「お会いできて光栄です、メリネリア・デリン・ベルフロスト第一王女殿下。お元気のようで何よりです」
「他国の騎士さんがそんなに礼を尽くす必要はありません。私はもう王女ではありませんから。私が物心がつく前に国が滅びてしまったせいで、姫の生活がどんなものなのかもよく分かりませんよ」
「ベルフロスト王国は立ち直ります。私たちはそれを助けるために来ましたから。ですから、殿下も権威を取り戻すでしょう」
ベノンさんは力強く言った。でもメリネリアさんは笑みを浮かべながら首を横に振った。
「権威があっても人がいないと意味がありません。今私たちに必要なのは昔の栄光に酔った権威などではなく、この険しい環境を乗り越える力ですの」
メリネリアさんの態度は穏やかだったけど、声には力があった。ゲームでも必要な時は決断を下すことができる立派なお姫様だったし、険しい環境でみんな一緒に生き残ったのでゲームよりも強くなったようだね。
ベノンさんは目を細めて微笑んだ。
「……成長しましたね」
「あら、私を見たことがありますの?」
「僭越ながら、お生まれになったばかりの時にお目にかかったことがありました。その時、ベルフロスト国王陛下と王妃殿下が喜んでいた姿が今でも鮮明です」
「……そうですか。父上と母上はまだ生きていらっしゃいますわ。このような環境のせいで健康が少し悪くなりましたけれど、まだ精力的に活動していらっしゃいますの」
「不幸中の幸いです」
幸い対話の雰囲気は良かった。メリネリアさんは我々の上陸と援助についても快く承諾した。その後、北方のおじさんに向かって厳しい目線を送ったものの。
「ガロムおじさん、この方々をずっとここに縛っておいたんですの? 無礼ですわよ」
「どんな者たちなのか信じられませんからねぇ。それでどんな人なのか見守るべきだと思いました」
やっぱりわざと私たちを拒否して放置したよね。ベノンさんも予想したかのように苦笑いした。
「私たちは試験に合格したのですか?」
「そうでなければ、王女殿下をここに連れてくることもなかった」
ガロムさんは鼻で笑いながら腕を組んだ。メリネリアさんは苦笑いした。
「申し訳ありません。どうもみんな神経が鋭くなっていて……」
「何かあったんですか?」
メリネリアさんは答える代わりに、少しぐずぐずしながら視線を避けた。その態度だけを見ても何かがあることは明らかだった。
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