シドの戦い方
決めたら早く実行しないと。
――『地伸』専用技〈剥製の石塔〉
地面から土と石が噴き出した。それらが固まった巨大な石柱が魔物を拘束した。歪んだ鳥のような頭だけが〈剥製の石塔〉の外に突き出ていた。
「ギャアアッ!」
魔物が咆哮し、石塔がきしむ。中から邪毒で石塔を壊そうとしているようだね。
当然放っておくつもりはない。
地中に潜行し、〈剥製の石塔〉の中まで直ちに移動した。石塔に閉じ込められた奴の体は筋肉が激しくうごめくっていて、溜まってしまった邪毒が石塔を急速に腐食していた。でもまだ奴の動きは自由ではなかった。
そんな奴の背後で、魔力をまとった手を心臓に向かってまっすぐ伸ばす。
――ハセインノヴァ式暗殺術〈内破・心臓壊し〉
奴の背中に触れた手のひらから、体内に向かって魔力を放つ。狙うところは当然心臓。魔力がピンポイントで心臓を打撃した。
「グオオ!?」
心臓を破壊することはできなかったけど、大きな打撃を受けて奴の勢いが弱くなった。特に奴が吐き出していた邪毒が薄くなった。俺は二本の小剣に魔力を集中させた。
――ハセインノヴァ式暗殺術奥義〈次元交差斬り〉
次元を越えて目標だけを正確に切り取る刃が奴の心臓をめった切りした。
……という結果を望んだけど、魔物もそう簡単な奴ではなかった。
――第七世界魔法〈千変の刑〉
突然水のように不定形に変わった奴が〈剥製の石塔〉から抜け出した。〈次元交差斬り〉はわずかの差で空気を切った。急いで石塔の外の状況を確認してみると、まるで液体怪物のような形になった奴が逃げようとしていた。
しかし、そこに赤い爆炎の雨が浴びせられた。
「ギャアアアアア!」
リディアの魔弾の雨にいっぱい撃たれ、奴は悲鳴を上げて体をひねった。焼けてひび割れた皮膚の隙間から骨が見えた。
どうやら水のようになっただけで、本物の液体になったわけではないようだね。その上、奴は体をひねりながらもまた元に戻ったり他の形に変身したりはしなかった。遅ればせながらあの能力で石塔を抜け出したのを見ると、そもそもあまりうまく扱われていないようだね。
すぐに石塔から飛び出して小剣を振り回す。
――ハセインノヴァ式暗殺術〈空虚の一閃〉
広い範囲の斬撃を、奴は体を横に動かして避けた。直後、俺の周辺に邪毒で描かれた奇異な文様がいくつか現れた。
これは邪毒陣か?
――第七世界魔法〈竜血波〉
強烈な熱波が一斉に噴き出した。その攻撃が俺の立っていた場所を焼き払った。大きく後退して避けたものの、奴との距離が遠のいてしまった。その間、奴は体を元の形に戻した。おまけに今まで累積した傷もすべて回復した。
――『地伸』専用技〈岩の戦い場〉
あちこちに大小の石柱を立てた。直ちに地中に潜行した後、奴の後ろにある石柱から飛び出した。奴も俺の気配を感じてすぐ後ろを振り返った。奴が拳を突き出した。
――ハセインノヴァ式暗殺術〈筋肉切り〉
鋭い魔力の刃を素早く振り回し、奴の手首を切断した。そして袖から細長い針を奴の目を狙って撃った。針が見事に刺さった。
その瞬間、奴は悲鳴を上げて体をひねった。
針に塗っておいたのは魔物に致命的な猛毒。時空亀裂から渡ってきた異界の魔物にもある程度は通じる物だ。でも針に塗っておいた量程度では致命的な効果を与えることはできない。せいぜい苦痛で顔をしかめさせ、やや麻痺させる程度だろう。
だけど、俺が望んだのはまさにその〝致命的ではなくても気になる〟程度のことだ。
そしてちょうどリディアのタイムリーなサポートも入ってきた。
近くで爆発が起き、集まっていた魔物が爆死した。死体の一部がこっちに飛んできて上位魔物にぶつかった。続いて魔弾が奴にも着弾して繰り返し爆炎を吹き出した。
――ハセインノヴァ式暗殺術〈影隠し〉
俺の気配がぼやけて、奴の目が俺を逃した。
目を引くような他の要素に注意を集中させ、自分自身の存在感を極度に減らす技だ。代わりに注意を引くほどの要素が全くなければ効果が半減してしまうけど、今なら苦痛とザコの死体が適切な目隠しになってくれる。
そのまま飛び上がって奴の首筋を切った。
「グワッ!!」
奴は相変わらず俺をまともに認識できなかった。しかし傷の部位で方向をどの程度特定したのか、俺の方に向かって拳を振り回した。なかなかやるじゃないか。
最寄りの〈岩の戦い場〉の石柱に入った後、地面を通って別の石柱から飛び出した。奴の後方、かかとのすぐ近くだった。すぐ目の前の足を〈筋肉切れ〉の刃で深く切り、傷口に毒針を突っ込んだ。同じ方式でもう一方の足に近い石柱に移動して同じことをした。
「グァア……!」
両足が麻痺した奴の胸にリディアの魔弾が飛んできた。強力な爆発が奴を後ろに倒した。
奴の背中が落ちる下に、俺が立っていた。
――ハセインノヴァ式暗殺術奥義〈次元交差斬り〉
正確なタイミングと位置計算で、今度こそ奴の心臓を四切れにした。
続いて放った〈内破・心臓壊し〉がボロボロになった心臓を爆発させた。そして奴の首の方へと移動した。最後の仕上げのための魔力が両手に集まった。
――ハセインノヴァ式暗殺術〈無形のギロチン〉
長くて巨大な不可視の刃が奴の首を切った。一撃で切断には至らなかったけど、五回の繰り返しが結局奴の首を飛ばした。最後に細胞の再生を防ぐ劇毒を首の切り口にたくさん撒いた。
首が飛ばされた奴が動かないのを確認した後、俺はすぐ振り向いた。
上位魔物討伐は成功した。でも正直、こいつはあまり重要ではなかった。俺の直感は魔物よりもさっき感じた違和感を危険視していた。
[ちょっと〈大地の城壁〉の外に行ってくるよ]
[え? どこ行くの!?]
リディアに短く伝言を送った後、すぐに〈大地の歩み〉で地中での移動を開始した。
ハセインノヴァである俺の前で工作をする奴なんて、すぐ捕まえてやる。
―――――
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