異世界の魔物の力

 もちろん、その間も標識で射撃を誘導することは忘れていなかった。


「キャアアッ!」


 魔物を撹乱して煩わしくさせながら、さらに考えを重ねる。


 確かに奴は強い。しかも周りのザコどもと違って知能もかなり高い。まだ生半可ではあるが極拳流の要領を真似ることまでできるほどなら、放っておけばますます成長するかもしれない。


 こいつを倒したからといって戦いが終わるわけではない。だから余力は残しておかないと。でも力を節約して簡単に倒すことは不可能だ。


 ……悩みが多くなるんだな。


 ――『虚像満開』専用技〈一人だけの王国〉


 僕の姿をした幻影を多数配置した。魔物は僕が急に増えて一斉に襲い掛かるのを見て慌てた。しかし奴の拳が幻影を通過した瞬間、分身が実体のない幻想だということに気づき、目を動かし始めた。本体を探すということだ。


 その瞬間、〈幻影実体化〉でしばらく実体を得た分身の拳が奴の頭頂部を殴った。〈一点極進〉の威力を模写した拳が奴に打撃を与えた。


「クオオオオ!」


 怒った奴が邪毒を散らした。塊状の邪毒が無数の魔弾の弾幕となった。魔弾が雨のように降り注ぎ、周辺を焦土化した。


 でも僕は大柄なあいつの股の下に忍び込んだ状態だった。


 ――極拳流〈頂点正拳突き〉


 スーツでさらに加速した一撃を奴の右足に食わせた。奴の足の骨をしっかりと砕いた感触が感じられた。しかし足を完全に破壊することはできなかった。


「クワッ!」


 バランスを崩して倒れながらも、奴は大量の邪毒をまとった拳を僕に向かって振り回した。後ろにさっと下がる幻影分身を一つ見せ、僕自身は奴の足元に突っ込んだ。幻影に釣られた奴がそちらに強大な邪毒砲を発射した。


 拳に莫大な魔力を凝縮する。その気配を感じた奴が一歩遅れて本当の僕に気づいたが、凝縮はすでに迅速に終わっていた。


 ――極拳流奥義〈深遠の拳〉


 バランスを崩して倒れた奴の心臓付近を狙い、正拳を放つ。高密度に凝縮された魔力の拳が硬い肌を破壊し、筋肉と骨まで貫通した。どんなに丈夫で再生力の優れた奴でも、心臓を破壊すれば再生に困難が生じるだろう。


「キャアアアアアアアッ!」


 四方から邪毒の魔弾が浴びせられた。そのすべてを〈ロベルスーツ〉を変形させて作り出した盾でいなし、拳に集中した魔力を奴の体内で爆発させた。肉や骨片が飛散した。


 心臓と脳も再生は可能だ。だが速度も遅く、魔力の消耗も激しい。心臓を破壊した後、再生する前に全身を破壊すればこのような強い魔物でも絶命させることができる。


 このまま奴を完全に始末しようとしたが、その瞬間奴の胸に大きく開いた穴の周辺から微弱な邪毒が流れ出た。それがまるで穴を囲むような形で文字列を描いた。


 それに気づいて対処するよりも先に、異変が起こった。


 ――第七世界魔法〈千変の形〉


 半分ぐらい死体のようだった魔物の体が急激に膨張した。無数の触手が伸びた。それらは僕に直接飛びかかり、邪毒の魔弾を吐き出した。


「無駄な足搔きを……!」


 ――白光技〈乱暴なファランクス〉


 無数の魔槍を浴びせた。触手らはあっという間にめった切りされた。だが〈乱暴なファランクス〉が触手を破壊するより新しい触手が湧き出る速度がさらに速かった。


 しかも湧き出るのは触手だけではなかった。巨大な腕が生え、僕を狙ったのだ。


「わっ!?」


 やむを得ず後ろに跳躍して下がった。追撃してくる触手と腕を〈乱暴なファランクス〉で迎撃したが、あまりにも多くの物量に押されて魔槍の方が折れてしまった。結局〈雷神の偶像〉で広範囲な雷を放った。


 その瞬間、僕の真後ろの地面から突然何かが飛び出した。


「キャオオ!」


 細長い触手の先端に小さな頭がついていた。まるで蛇のようだ。それが僕の肩を噛みちぎった。〈ロベルスーツ〉と身体強化まで突き抜け、肩の肉が一握りくり抜かれた。


「うぐっ……!?」


 激痛をこらえながら、魔弾で触手の蛇を破壊した。しかし地面から蛇や腕のようなものが次々と飛び出してきた。包囲された僕に向かって濃い邪毒の霧が吹き出した。結局僕は上空に跳躍した。


 地上一帯に赤い標識を大量に展開した。強力な射撃で一帯を焦土化するつもりだった。射撃組も理解したように僕が望む支援射撃をしてくれた。その上に〈雷神の偶像〉の雷槍をもう一度浴びせた。


 地上を燃やす雷を突き破り、巨大な形状が飛び上がった。奴だった。元の完全な姿を回復したのに加え、コウモリに似た巨大な四枚の翼が背中に生えていた。再生した……というより、変異能力で体を新しく作ったような感じだった。


「キャオオ!」


 奴の両肩が変異して二つの頭を追加で作り出した。合計三つの頭が一斉に邪毒砲を発射しようとした。でも僕の標識に導かれた支援射撃が肩の頭を横にそらした。本来の頭が発射した邪毒砲が僕に浴びせられた。


 ――白光技〈一点突破の一槍〉


 巨大な魔槍が邪毒砲を貫通した。魔槍はすぐに邪毒に浸食されて砕けたが、邪毒砲も力を失って散った。相変わらず僕に向かって飛んできている奴と目が合った。


 僕への敵意と殺意に満ちた目。奴が何のためにこの世界に来て、何が憎くて破壊しようとしているのかは分からない。


 どうせ知る必要はない。この世界の人間として、そしてテリアお嬢様の忠実なシモベとして。侵略者をこの手で叩き壊すだけ。


「はああああああ!」


「キャルヮアアア!」


 ――極拳流〈深遠の拳〉


 奴に襲いかかりながら、全力を尽くして拳に魔力を込めた。奴も僕を真似るように拳に邪毒の力を凝縮した。


 極限まで魔力が圧縮された拳と拳が衝突し、強烈な衝撃波が爆発した。


―――――


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