最初の開戦
「本当に大丈夫ですか?」
「ボクのことを誰だと思っているのか」
心配を鼻で吹き飛ばし、上空に向かって手を上げた。大量の魔力が手のひらから噴き出した。
――『冬天』専用技〈冬天魔装〉
硬くて強い氷の魔剣を作り出す。
大きく、もっと大きく。数はたった一本。ただ巨大で強力な一つの剣を上空に形成した後、咆哮を上げた魔物の気配が感じられる所へいきなり発射した。氷剣はまるで光線のように進み、視界から消えた。
直後、巨大で強い魔物の魔力が動揺するのが感じられた。
「命中したな」
挑発は成功したな。
怒った魔力がこちらに走ってくるのが感じられた。隊員たちがボクを畏敬の念で眺めているのが感じられたが、ボクは余裕を持って笑いながらその視線を受け止めた。
……さあ、堂々としてはいるが。実は心配がないわけではない。
一人で相手する自信はある。奴の正確な戦力は分からないが、咆哮から感じられた魔力を土台に逆算してみれば手に余るレベルではない。
だが、この戦場に敵はあいつだけではない。そしてあいつを相手にしてもう一方を支援するのはおそらく無理だろう。その上、戦闘の余波がややもすると味方に及ぶ可能性もある。
「テニー。ここの指揮権を臨時に君に委譲する。期限はボクがあの魔物を討伐するまでだ」
「かしこまりました」
テニーもボクの意図を悟ったのだろう。無駄に説明が長くならなくていいぞ。
そんなことを考えているうちに、ついに回廊の端にあいつが現れた。
二階の家くらいにはなる背丈で、巨大な馬のような胴体。しかし、馬の頭があるべきところにはまるでゴリラの上半身のような形があり、頭は巨大なトカゲのようだった。しかも馬のような下半身でも、足は蹄ではなくオオカミの足のようだった。
魔物らしく邪毒に浸食されて歪んだ形状ではあったが、他の魔物に比べると歪んだ程度は弱い。その代わり、いろんな生物が入り混じったような奇怪さがあったんだが。
怒ったのか、それとももともとそのような形なのか、奴の顔が歪んでいた。右肩が大きく割れて血が流れた跡があった。ボクの氷剣があそこに命中したようだな。
だが肩の傷はほとんど癒されており、疾走してくる奴の勢いも凶暴だった。むしろ他の魔物が奴の足に踏みにじられて潰れてしまっている。
魔物に仲間意識なんかあるわけないが、いろんな意味でよどみない奴だな。
「奴を隔離させるぞ! ……全員死ぬな」
〈冬の回廊〉の氷壁を変異させ、回廊の隣に巨大な闘技場を作った。ボクと奴の戦いのための。
魔力たっぷりの足で地面を蹴った。体が空高く飛び上がり、大きな放物線を描きながら落下した。着地地点は闘技場の真ん中。
そこで奴に向かって魔力を放つと、ボクの魔力を感じて奴もこっちを振り向いた。小さな魔物を思いっきり蹴飛ばして踏みつけながら、奴がボクに向かって突進してきた。
「そう、そうしないと。貴様の相手はこのボクだぞ!」
身を切る冷気の魔力が奴の体に浸透した。奴の速度がめっきり遅くなった。
「クワァ?」
この闘技場を含め、〈冬の回廊〉全体が〈冬結界〉の影響圏内。内部を『冬天』の極限の魔力で満たす〈冬結界〉の中では、ボクの『冬天』の技の威力が増幅される。
弱い敵は足を踏み入れるだけで凍りついて絶命する。回廊側は魔物を引き込まなければならないので、わざと冷気を弱く調節した。だがここではその必要がない。
もちろん強い敵は〈冬結界〉だけでは殺せない。しかし、魔力が体に浸透して鈍化させる程度の効果はある。
――『冬天』専用技〈剣の冬森〉
巨大な氷の刃が無数に生えた。魔物は体に濃密な魔力を鎧のようにまとって刃を防いだ。しかし、防御のために奴の進撃が止まった。
いい的だな。
――狂竜剣流〈竜王撃・双竜〉
二匹の巨大な渦巻き竜が魔物に飛びかかった。奴は両腕に魔力を集中して突き出した。〈双竜〉と拳の魔力が相殺された。
その間、ボクは奴の足もとに突っ込んだ。
「はああああっ!」
――狂竜剣流〈竜王撃・尖竜〉
魔力の渦が圧縮された斬撃で魔物の前足を切断した。奴の体が前に傾いた。その前足の切り口が地面に着く前に、剣をひっくり返して上に振り回した。刃に沿って飛び上がった〈尖竜〉で奴を真っ二つにしようとした。
しかし、奴は黒い邪毒の霧をまとった拳で〈尖竜〉を相殺した。その手を広げると漆黒の光線がボクに向かって発射された。横転して避けたが二回、三回、連続して光線がボクを狙った。
「ふぅ!」
立ち直り一閃。魔力を込めた斬撃で漆黒の光線を相殺し、〈竜の咆哮〉を放った。しかし、魔物はすでに前足を再生してバランスを取り戻した状態だった。奴が口から噴き出した魔力砲が〈竜の咆哮〉を相殺した。
「クオオ!」
奴が腕を振ると、黒ずんだ邪毒の霧が巨大な爪の形でボクを狙った。〈双竜〉で対応したが、邪毒の爪が〈双竜〉の渦を引き裂いた。邪毒の爪がボクの右肩にかすめた。
「くっ!?」
傷は浅い。しかし濃い邪毒がボクの体に流れ込んできた。それだけでも右腕に激しいしびれが訪れた。固まってしまった右手が剣の柄を逃してしまった。
そんなボクにまた襲ってくる邪毒の爪。剣での防御を諦め、氷壁を立てて防いだ。直後、〈剣の冬森〉の無数の氷刃で魔物を攻撃した。だが奴は未練なく後退して避けた。
力も力だが、むやみに飛びかかるほど愚かでもない。魔物にしてはなかなかの奴だ。
右腕は……しばらく使えないな。切り取るほど侵食されてはいないが、回復までにはどうしても時間がかかりそうだ。
「チッ……ボクは両利きじゃないんだが」
左手だけで愛剣を握ったまま魔物を撃った。奴もボクの様子をうかがうようにしばらくボクを睨んだ。
どうやら気を引き締めなければならないようだな。よし、一度やってみよう。
心の中で呟きながら、ボクは抑えていた魔力をさらに解放した。
―――――
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