未知の力

「グオ!?」


 突然吹き荒れる魔力の嵐に戸惑ったのだろうか。魔物が揺れる声を出した。


 ボクから噴き出した膨大な魔力が渦巻いた。かすかに竜の形状を描くそれは、自体が〈竜王撃〉を成す万能の嵐だった。


 狂竜剣流の極意である〈竜王撃〉の力を、剣を越えて体に体化すること。まだボクのレベルは未熟だが、この領域に至るだけでも血を吐く研磨が必要だった。


 その成果を実戦で使ってみるのは初めてだがな。


「行くぞ!!」


 咆哮して地面を蹴飛ばした。激しい魔力の渦が目の前の相手よりも巨大な形状を描き出した。魔物はそれに対抗するかのように全身に邪毒の霧をまとった。


 激突。


 魔力と魔力がぶつかり、激しい衝撃波が四方を襲った。ボクが重剣を振り回して〈竜王撃〉の力が込められた斬撃を放つたびに、魔物もまた巨大な邪毒の爪と拳で対抗した。あっという間に数十回の攻撃がボクたちの間を行き来した。


 ――狂竜剣流〈竜王撃・巨竜〉


 巨大な渦巻き竜が魔物を襲った。奴がまとった邪毒の霧が〈巨竜〉の魔力に流された。そのように隙があらわれた奴に向かって、〈竜王撃〉の渦をまとった重剣を突き出した。


 ――狂竜剣流〈竜王撃・牙突〉


 巨大な渦のドリルが放たれた。奴は急いで邪毒の霧を展開したが、〈牙突〉は霧を突き抜けて奴の腹部に食い込んだ。


 このまま腰を真っ二つにするぞ!


「――クルアアアアアッ!!」


 魔物が咆哮した。奴の魔力が揺れ動くと、〈牙突〉に貫通されている腹部を中心に邪毒が展開された。


 その邪毒の動きが妙だった。〈牙突〉を防いだりくっついたりするどころか、まるで〈牙突〉の周りに絵を描くような動きだった。複雑だが意味不明な文字と絵が無数に展開され、歪んだ螺旋のようなものを形成した。


 その瞬間〈牙突〉の魔力が霧散した。


「なッ!?」


 すぐに後退した。魔物も腹部の傷が深かったので追撃はしなかった。しかし、奴が展開した奇妙な文様の邪毒は相変わらずだった。おまけに言えば、そこから正体不明の力が噴き出していた。


 あの力が〈牙突〉を消したのか?


 あの奇妙な文様も、そこから感じられる力も尋常ではなかった。単に強いとか弱いとかの問題ではなく……正体がわからない。ただ知らないわけではない。見ようとしても視界が自然に曇って、考えようとすると頭の中に霧が立ち込めるように考えが止まってしまった。


 まるで……誰かが意図的に情報を遮断するかのように。


「……面白いぞ」


 今の状態でもわかることはある。


 特殊な文様を描いて力を発揮させるのは一般的な邪毒陣と同じだ。そしてあの力はとても安定しているが、残る魔力を他のところに変容させるのはどうも不可能なようだ。できたらあの力で自分自身を治療したり、ボクを牽制したりすることができただろう。だが奴はあれとは別の邪毒陣を作って自分を治癒した。


 どうせ邪毒はこの世界の外から来た力。邪毒陣も外の技術だ。それならあれも奴の世界から来た何かだろう。


 原理はいらない。結果を分析しろ。この場ではそれで十分だ。


 ボクが結論を下すと同時に、魔物の傷が完全に再生された。ボクたちは同時に互いに向かって突進した。


 ――狂竜剣流〈竜の爪〉


 鋭く精錬された魔力の刃を多数放つ。


 平凡な〈竜の爪〉ではない。〈竜王撃〉の渦が〈竜の爪〉と一体化していた。当然威力もただの〈竜の爪〉に比するところではない。


 これが〈竜王撃〉を体化するということ。単に〈竜王撃〉の派生技を駆使するだけでなく、究極的にはすべての技を強化できる。


「キャアアッー!」


 魔物はまた邪毒の爪を振り回した。だが、〈竜の爪〉がその爪を八つ裂きにし、魔物の胴体にも深い傷痕を残した。それでも奴は開いた口の中に邪毒を集め、ボクも剣を再び振り回した。


 ――狂竜剣流〈竜の拳〉


〈竜王撃〉の渦が込められた巨大な衝撃波で奴の頭を殴り飛ばした。奴の口から発射された邪毒砲がボクの隣の空間を燃やした。


 外れた攻撃などに萎縮することなどなく、魔物に向かって突進した。


 ――『冬天』専用技〈天の審判官の槌〉


 巨大な氷の槌が魔物を打ち下ろした。奴は邪毒を盾のように展開したが、〈天の審判官の槌〉は魔力を鈍化させ霧散させる防御破壊技。奴の邪毒盾が粉砕され、防御しようと突き出した腕を折った。


「はああっ!」


 もう一度〈竜の爪〉を放った。しかし、魔物が下から爆発させた邪毒が魔力の刃を弾いた。


 チ、左手だけだから速度や軌道に満足できない。


 だがこの程度だけでも………。


「!?」


 瞬間、鋭く緊張していた感覚が怪しい気配を捉えた。すぐに退いたが、それさえも遅かった。


 無数の邪毒の文様がボクを包囲した。邪毒陣……みたいだが、さっきのその不思議な力でいっぱいだった。


 突然、知らない名前が頭の中に浮かんだ。


 ――第七世界魔法〈赤天アンコウ〉


 全方位の邪毒陣から無数の邪毒の刃が発射された。


 ――『冬天』専用技〈隔絶の輪・全方陣〉


 ボクの自慢の防御技を展開したが、邪毒の刃はそれをあまりにも簡単に破った。そしてボクがまとった〈竜王撃〉の渦さえも突き抜けてボクに触れた。瞬く間に全身に無数の傷が刻まれた。


「くっ……!」


 生臭い血の味が口の中からあふれた。


 全身が燃えるように痛い。怪我をしていないところがないというほどで、服もめちゃくちゃになった。


 しかし、魔物はそんなボクを追撃しなかった。まだ傷の再生は終わっていないが、今の沈黙はそれとは違うようだった。


 ……いや、待って。


 あいつ、何してるんだ?


―――――


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