受け入れてくれたから、次へ
「本当に大丈夫?」
思わず聞いてしまった。
信じてくれるのはありがたいけれど、むしろ信じているならもっと問題がある。リディアにとって、私は〝すべてをあらかじめ知って接近した人〟になるから。彼女に見せた信頼も、心の強さを高めるためにしたことも、そのすべてが実は結果を知って利用するためだったと思っても言うことがない。
もちろん私はリディアが友達として好きで、彼女を助けたかったのは本気だった。しかし未来のために、悲劇を回避するために彼女を抱き込もうとしたのも事実だった。計算的な行動だったことを自分でも知っているので、リディアががっかりしてしまうのも仕方ないと思ってしまった。
けれど、リディアは力強く首を振った。
「何の問題があるの? テリアはいい人よ」
「でも……」
「知っているからといってみんなが貴方のように行動できるわけじゃないでしょ。いくらでも悪く活用することもできる。むしろ分かったからリディアが助けてもらったと思ったら、リディアとしては感謝すべきことよね。それに……」
リディアは私の手を優しく抱きしめた。戦う時の熱した笑いとは違う、まるで日差しのように暖かい笑顔が私に向けられた。
「覚えてる? リディアがあの宝石を渡した時」
リディアの視線が私の胸のブローチに向かった。
赤い宝石がちりばめられたブローチ。四年前、リディアが私にくれた〈爆炎石〉を加工して作ったものだ。ブローチにしてからは癖のようにいつも着用していた。
「貴方は最初はそれを受けようとしなかったじゃない。あの時の態度はリディアを悪く利用しようとする人のものじゃなかったでしょ。だから信じることにしたの。テリアはリディアを助けるために情報を活用したものだって」
そうじゃない。
いや、ないわけじゃないけど、そんな純粋な意図だけあったわけでもないわよ。
……そう言えないのはリディアのまっすぐな瞳に言葉が詰まってしまったからだろうか。それとも彼女の信頼を利用して他人の信頼を買おうとする計算のためだろうか。私もよく分からない。
「……ありがとう、リディア」
それでもその言葉だけは心から湧き出た本音だった。
リディアはもう一度ニッコリ笑った後、ジェリアを振り返った。
「ジェリア。四年前のこと、覚えてる?」
「ディオス関連のことか。大体見当はつく。テリアは君がディオスに苦しんでいることを知っていて、そのために君を助けることにした。ということだな?」
「そうよ。今回のこともそれと似ていると思う」
ジェリアはケイン王子をちらりと見た。彼はまだ何を考えているのかよく分からない無表情だったけれど、ジェリアは何かを感じたかのようにため息をついた。彼女の視線が再び私に向けられた。
「〝契約〟も結んだから、今は聞いてもいいだろう。そんな情報はどうやって得たのか?」
当然の質問だった。そのため、その部分に対する答えだけはあらかじめ準備しておいた。
「偶然だったの。紫光魔力は魔力の性質が絶えず変化するのは知ってるわね?」
「そうだな。混沌とした性質変化の中で好きな特性を選んで固定すること、それが紫光技の特性模写の基本だな。紫光技を修練している間に未来予知のようなものでも覗いたのか?」
「似てるわ。急変する魔力の性質を制御していたところ、偶然謎の映像を観測することになったの。最初はそれが何なのかよく分からなかったけど、その内容の一部が実現したのを見て未来のことだと思うようになったわよ」
「ということは今回のことだけでなく、いろいろなものを見たということだな。リディアのこともその一つだし」
「……そう」
ジェリアは少し頭を悩ますように眉をひそめながら片手で頭を抱え込んだ。
「そのすべてが未来なのか、あるいは単純な幻想が混じったのかまで問い詰めてみるのは意味がないんだな。君自身も知らないだろうから。ただ、いくつかの前例があったので、君は今回も邪毒獣が現れると信じ、それに基づいて事件を予防または解決しようと動いていた。そのように整理すればいいのか?」
「正確よ」
やっと話がまとまったね。
実はもう少し難航すると思っていたけど、これくらいならむしろスムーズだ。特にリディアが何気なく私を肯定してくれたのは……正直、ちょっと感動しちゃった。
残ったのはケイン王子とシド、そしてガイムス先輩。特にケイン王子が問題だね。
ケイン王子は少しため息をついた。
「……すべてを完全に信じることは難しいです。証拠が足りない話を考えずに信じるには王子という地位が重いんですよ」
「理解しますわ。ただ私が言いたいことは……」
「まだ私の話は終わっていません」
ケイン王子は突然私の言葉を切り、私を見てニッコリと笑った。
「王子としての意見はこの辺で……これからは〝ケイン〟の意見だとしておきましょう」
「え? それはどういう……」
「テリアさんが見せてくれたものを情報として認め、それをもとに方針を修正することにします」
……ケイン王子がこんなに簡単に受け入れるって?
疑い深い心情が顔に出てしまったんだろう。ケイン王子は苦笑いした。
「どうせ前が見えない状況なので、ここではギャンブルを一度かけてみることにしました。そして……まぁ、どうせ事件が起きないと無駄に終わるだけじゃないですか? 備えなかったとき大きな被害を生むよりはマシです」
先ほど私が言った言葉をそのまま返したケイン王子は、今は停止した〈記憶再生〉の映像に再び目を向けた。
「しかももし邪毒獣が本当に示されれば、十分可能性のある展開です。事件の展開や魔物の出現位置などもあらかじめ予測しておいたデータとほぼ一致します。それで、現場のケインとしては信頼できる情報だと判断したのです」
極めてケイン王子らしい理由だったので、むしろ安心した。
続いてシドとガイムス先輩も口を開いた。
「まぁ、殿下の不満がなければ俺も構わないよ。興味津々でもあるし」
「話しにくかったのに、情報共有ありがとう。後輩の誠意のためでも先輩として、そして予備騎士として助かるようにするよ」
「……本当に、本当にありがとうございます、皆さん」
今世の私は本当に幸せな人だよ。そのように確信できるほど、みんなの信頼が眩しかった。
それを裏切らないためにも、明日まで私にできるすべてのことをしておこう。
―――――
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