当日の調査
いよいよ、当日になった。
私と友達は朝早くから各自の仕事を引き受けて努力していた。
特に重要な人はケイン王子。権限も実績も立派な第二王子として、彼は今回補修作業を総括する役割を引き受けた。昨日の会議で決定された変更点を反映するのも彼の役目だ。
アルカの啓示夢で描写された邪毒獣出現シーン。その時、急激に膨張した時空亀裂が近くにいた人々を飲み込んだ。実際にも邪毒獣が出現するほど亀裂が大きくなれば、亀裂に近づくのは非常に危険だ。そこでケイン王子は当初の補修作業手順を変更することにした。
最大の違いは避難プロトコル。亀裂周辺にケイン王子と騎士隊が結界を展開する。その結界は亀裂の膨張速度を遅らせる役割もするけど、何よりも亀裂近くで作業する作業者と騎士を有事の際に空間転移に避難させる役割をする。もし時空亀裂が暴走したとしても、せめてその瞬間の人命被害だけは防ぐための措置だった。
もちろん、ケイン王子の他にもそれぞれの役割と方針を具体化した。例えば、ジェリアは昨日私が見せた『バルセイ』の記憶を基盤に、修練騎士団長でありフィリスノヴァ公爵令嬢として団員と警備隊の配置図を構想した。
そしてもちろんだけど、私も遊んでばかりではなかった。
「行くわよ」
私と一緒にすることになっていたアルカとリディアを連れて、アカデミーの中央事務室に向かった。
中央事務室はアカデミーの主要講義と行政を担当する中枢であり、教師や教授たちもいろいろな用事があってよく出入りする。アカデミーに関する情報を集めるのに、中央事務室以上の場所はない。
ところで……。
「あの、アルカ? リディア? くっつきすぎじゃないの?」
なぜか、二人ともまるで子どものように私の腕にくっついていた。ニコニコ顔と鼻歌付きで。私の指摘を聞いても手放す気がないようだった。
「テリアと一緒に何かをしに行くのは久しぶりだから」
「お姉様と何かをちゃんと一緒にするのは初めてですからねっ!」
「……もう」
少し戸惑ってはいるけど、嬉しかったりもした。二人が私を友達として、姉として好きになってくれているのを感じたから。
……周りの人たちが妙な目で私を見ているから、公共の場所ではちょっと自制してほしいんだけど。
「さあ、そろそろ到着だよ」
中央事務室の扉が見え始めたので、二人を優しく引き離した。二人は不満そうに頬を膨らませながらも、大人しく離れてくれた。
自由になった手で事務室の扉をノックすると、中から答える声が聞こえてきた。私は声を整えた後、口を開いた。
「テリア・マイティ・オステノヴァです。ちょっと失礼してもよろしいですか?」
事務室の中から騒ぎ……などは起きなかった。まぁ、私がここに来たのは一度や二度じゃないからだろうね。修練騎士団の業務のためであれ、個人的に用事があるからであれ、中央事務室はほぼ月に一回の割合で訪問してきた。
初めて訪れた時が懐かしいね。その時は急に公爵令嬢が訪ねてきたって大騒ぎだったのに。生徒よりもむしろ社会の味を十分に味わった大人の方が貴族に対する反応が固いから。
事務室にいた人たちはアルカとリディアを見て驚いたようにびくびくしたけれど、先頭に私がいるのを見て小さくため息をついた。……どういう意味よ、それ。
「突然の訪問申し訳ありません。調べたいことがあって来ました」
私たちは散り散りになって事務室の人々にピエリのことを尋ねた。修練騎士団としてピエリについて調べると言うと、みんな真剣に応じてくれた。中央事務室は常駐者だけで二百人近くになるので、一緒に集まっていたら時間の無駄がひどいから。
もちろん、各自調査したからといって有意義な結果が出るという保障はない。
「覚えていることなら、十年前に……」
「確かに五年前にそんなことが……」
「私がアカデミーに来たばかりの時が十六年前でした。その時……」
あれこれ話を聞いていた私は、すぐに重要な事実を一つキャッチした。
……この人たち、勤続二十年以上の人がいないんだけど?
ピエリがアカデミーに来たのは三十年前。すなわち、彼のアカデミーの行跡を最初から追跡するためには、三十年以上アカデミーで働いた人が必要だ。
そして出てくる話のほとんどはピエリに助けてもらったとか、彼が生徒たちに優しかったとかいう話ばかり。率直に言って役に立たない。もちろん彼らの口から有用な情報を聞けるとは期待しなかったけれど、せめて彼の裏工作を推察できる話ぐらいは聞けると思ったのに。
「実はまだ信じられません。本当にピエリ様がそんなことをしたんでしょうか? 濡れ衣を着せられたのではないでしょうか?」
こんな話をする職員までいた。まったく、あいつはアカデミーで人気を集めてばかりだったの?
「彼に特によく従ったか、交流が多かった生徒はいますの?」
「もちろんありました! 卒業後も〝恩師さん〟に連絡するのをたくさん見たんですよ! ……ただ、今はみんな卒業した人たちだけでしょう。そういえばここ数年はあの御方らしくなく生徒たちとの関係がドライだったような気もしますね」
それはひょっとしてピエリなりの縁の整理だったのかしら。
念のため他の人とも話し続けたけれど、依然として有用な情報はなかった。しかも今アカデミーの在職者の中で一番古い人が学長で、その学長さえも勤続が二十五年だと。リディアとアルカを呼んで情報を交換しても同じだった。ここまで来たら、私が無駄足をついたのじゃないかしらって不安になる。
『隠された島の主人』の奴め、まさか私に最後の最後に無駄骨を折らせようとそんなことを言ったのかしら?
ちょっと心から懐疑的な状態になったけれど、まだ諦めるのは早い。そう思った私は別の手段を使うことにした。
ゲームでその存在が言及されたことはあったけれど、今まで一度も行ったことのない場所を。
「申し訳ありません。アカデミーの過去の出来事を記録した資料室への訪問許可をいただけますの?」
―――――
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