ジェフィスの夢
……まるでうなされたような感覚だった。
意識はあったけど、体は動かない。しかも目の前は真っ暗で音も聞こえない。このままでは狂ってしまうのではないかという闇と静寂だった。幸い、それは長続きしなかった。
しかし……ついに目の前の闇が晴れた時、目に入った光景は全然愉快ではなかった。
「……ス様……ジェフィス様!」
必死に僕の名前を呼ぶ声。でもその対象は僕ではなかった。
大勢の生徒がいた。場所は……多分庭園だろうか。アカデミーの庭園というのは分かったけど、正確にどこの庭園なのかは分からない。アカデミーの庭園は全部似ているし、何より……めちゃくちゃ破壊されて原型を見分けることができなかったから。
生徒たちの顔は皆悲しみに沈んでいた。そして彼らの視線が集まるところに〝僕〟がいた。
巨大な魔物……の死体。そして血まみれの重剣を持ってその前に立っている〝僕〟。あの魔物を〝僕〟が討伐したのだろうか。しかし、そんな〝僕〟もやっぱり全身に血なまぐさいをしていた。それが魔物ではなく〝僕〟の血だということは傷だけ見ても分かった。
〝僕〟が倒れた瞬間、生徒たちが駆けつけて〝僕〟の体を抱きしめた。
「ジェフィス様、しっかりしてください!」
「こ、こんなにも……ダメ!」
心配そうな視線と、一部の生徒たちの治癒の魔力が〝僕〟に注がれた。しかし〝僕〟の状態はもう見込みがなかった。少なくとも生徒たちの治癒能力では手に負えないほど。
「……みん、な……大丈夫、か……?」
やっと口を開く〝僕〟。死にかけている人らしく、とてもかすかな声だった。でも生徒たちは涙ぐみながらも息を殺して耳を傾けた。何人かの生徒が必死に首を振った。
「わ、私たちは大丈夫です。でもジェフィス様が……」
「……君たちが、大丈夫、なら、いいよ……」
……これはどういう状況だろうか。
少なくとも僕はこんな状況を経験したことがない。でもあそこで死んでいくのは間違いなく〝僕〟。そう思った瞬間、これが夢だと思ったけど……思わず首を振ったくなるほど、目の前の光景は妙な現実感があった。
「ジェフィス!!」
親しんだ声と共に、冷たくて鋭い風が庭園に飛び込んだ。ジェリア姉君だ。それだけでなくケイン殿下と、ハセインノヴァ公爵家のシド公子も。でもあると思っていた彼女はいなかった。彼女はどこに……。
……。
………。
……〝彼女〟って、誰?
思い出せない。何か重要な人がいたみたいだけど。〝彼女〟も、そして〝彼女〟の周りにいる多くの人たちも。にもかかわらず、そのような人々が存在するという感覚だけが頭の中に鮮明だった。
これは一体……。
僕が混乱している間も、〝僕〟を取り巻く状況は刻々と変わっていた。
「ジェフィス、しっかりしろ! ジェフィス!!」
「姉君……ご無事で……」
「ボクのことは何でもいい! ボクより君だ!」
姉君の目に涙がにじんだ。姉君も全身に傷が刻まれているのに、自分の状態など知ったことではないように〝僕〟だけを見ていた。こんなに動揺する姉君の姿は初めてだ。
ひざまずいて〝僕〟を抱きしめる姉君の後ろに、唇を噛んだケイン殿下が見えた。そしてその隣には茫然自失のシド公子も。
特に、シド公子の状態は深刻だった。身体的な怪我はそれほどひどくなかった。でもすっかり魂が抜けたまま何か呟いていた。小さすぎて聞こえなかったけど、視線だけは〝僕〟に固定していた。
〝僕〟は震える声で口を開いた。
「守れ……ました。姉君が、いつ、も……そうしたように……」
「言うな。早く治療を……」
「……姉君」
〝僕〟の声は小さかった。しかし、姉君を止めるには十分だった。だんだん血の気を失っていく顔から両目だけが強く輝いた。
「僕は……やるべきことを、全部やって……去るんです。だから……姉君も、やるべきことを、やってください」
「……」
姉君が唇を噛んだ。あまりにも強く噛んで血が流れ出たけど、姉君はそれさえも気にしなかった。
数秒後。しかし体感は一時間は過ぎたような沈黙の後、姉君が静かに口を開いた。
「……よくやった。君はボクの立派な弟だ。バカな兄姉たちより……クソ親父よりも、はるかに誇り高く立派なフィリスノヴァだ」
「……ありがとうございます」
かすかな笑顔と感謝の言葉。それが〝僕〟の最後だった。
もっともらしい遺言も、劇的な最後もなかった。しかし、静かに目を閉じた顔には確かに満足感が漂っていた。命を捧げて人を守ったという満足感が。
皆が悲しむ中、一人だけ勝手に満足して去る利己的な喜びだった。
「……すまない」
姉君の哀悼はそれで終わりだった。涙ももう出ない。しかし、姉君の顔に浮かんだ悲しみだけは全く収まらなかった。
その時、ずっと茫然自失していたシド公子が口を開いた。
「こ、これ……一体どういうこと……」
「シド・コバート・ハセインノヴァ。東の教育棟方面の状況を報告しろ」
「お、俺は……ただみんなをもっと早く救おうと……」
「君には魔物の封鎖を指示したはずだ。だが君が封鎖役を忠実にせず、魔物を早く討伐すると勝手に飛び込んだという報告があったぞ。そして教育棟から流出した魔物がここに来た」
「それは……それ、は……」
その瞬間、姉君がシド公子の胸ぐらを荒々しく握った。
「しっかりしろ! 今グズグズしている余裕があると思うのか!!」
「!」
「こうしている間も魔物はあふれている! 邪毒獣も健在だぞ!! 守るべき生徒たちがこれ以上死んでいく姿を見たくないなら、次の役割でもまともに遂行しろ!!」
姉君は返事も待たずに手を放した。そして〝僕〟の死体を一度だけ一瞥した。
「……ボクも乱れて時間を無駄にしたな。問責と処罰は事態が終わった後に行う。指示を出す」
まだ涙の跡が残った顔で、姉君は眼差しだけは毅然と指揮を再開した。
その姿を、僕は何もできないままただ眺めるしかなかった。
―――――
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