シドの特徴

「……はぇ?」


 しまった。間抜けな声に堪えられずにしまった。


 でも考え直してみると、納得がいかないわけではなかった。むしろこのような質問を考えられなかったのがバカだという気さえした。


 シドはある事件で性格が完全に変わってしまった。私はその二つの性格を全部知っている。そしてその情報をもとに計画を立てたと思ったけれど……ゲームで主に出た性格は変わってからの性格。それ以前の性格については深く考えられなかったようだ。これは反省しないと。


 そう心を落ち着かせる私に、シドは真剣な目で言い返した。


「お前がすごい人だという話はたくさん聞いたよ。でも結局生徒なんだろう。生徒のやるべきことは一人ですべてを解決しようと心労しているのではない。災いであれ何であれ、そんなことを処理するための人々は他に存在するんだろう」


「私はそんな人になるために頑張っている立場なんですけど?」


「なるために頑張っている立場というのは、言い換えればという意味じゃん。そして、すでにそうなった人がいるという意味でもある。それにお前ならオステノヴァ公爵閣下に頼むこともできるだろう? それでも騎士団にも、家にも助力を全然要請していないようでね」


 ……それはその通りだけどね。


 そもそも私は自分自身を過信しない。私がすべてを解決できるとは思わないし。私が騎士団や父上の助けを求めないのは、ただ彼らを動かす証拠を用意できないからだ。私が一番先に情報を共有する相手としてケイン王子を選択したのも、比較的接点を用意しやすいためだった。彼の友達であるジェリアが私の親友だから間接的に影響を及ぼすにも良いし。


「残念ながら騎士団や父上を動かすには、それだけ確実な根拠が必要ですわよ。単なるテロ疑惑の告発ならあえてそういうのがなくてもいいでしょう。でも私が話したそのような部類の災いなら証拠なしに話しても組織を動かすことはできません。私にはまだそれだけの証拠がないし、また情報が間違って漏れるとどこで問題が生じるか分からないでしょう?」


 シドの表情は渋かった。私の言うことをまともに聞かなかった……というわけじゃないと思う。ただ納得できないという感じかしら。


「それも嘘ではなさそうだけど……他の理由があるようだよ」


「そういうのはありませんけど?」


 冗談や偽装じゃなく、本当にその理由だけなのに。


 私がひどい目にあったのもすでに数回だ。まだ一人で全部解決しようとするはずがないわよ。実はもし今年邪毒獣出現事件が起きるのなら、その事件を利用して父上を抱き込むつもりだった。すでに父上にアカデミーで大きな事件が起きる可能性があると言っておいたから。


 もちろん、事件が起こることを望むわけではない。しかし結局防げなかったら、次のためにも……。


「お前を見ていると、何かという強迫観念みたいなものを感じるんだ」


「…………」


 いや、そんなはずないでしょ、私の力には限界があるわよ。


 そう言いたかったけれど、私の口はまるで石になったかのように動かなかった。


 私の頭は否定の言葉を何度でも吐き出していたけれど、それらの言葉はあくまでも頭の中をぐるぐる回るだけ。自分でも意外なほどきれいに言葉が詰まってしまった。


〝シドお兄さんは他人の心を全部見えたようによく知っているようだね〟


 ゲームでそんなことを言ったのは誰だったっけ。シドをお兄さんと呼んだから、多分アルカだったんだろう。


 シドは頭がとても良いわけでも、徹底的で論理的な者でもない。でも感情には誰よりも敏感だった。他人に共感し、悲しみを先に察知して近づいていた少年。ゲームではすでに性格がひどく変わっていたけど。それでも彼は主人公のアルカに慰められる前に先に慰めてあげた人だった。


 ……実は誰よりも慰められるのが必要だったくせに。


「……なんでそう思うのかしら?」


「うん? うーん、さぁね。理由はないんだ。ただの勘?」


 やっぱり。そうだと思った。


 私がそのようにシドがどんな人なのかを振り返っている間も、シドは私を心配そうな目で眺めた。


「こんな人たちは一人であれこれ耐えようとして崩れやすいよ。それは本人にも、周りの人にも悲しいことじゃん。だからあまり一人だけで耐えようとするな」


 いい言葉だ。いい言葉だけど……その言葉のおかげでむしろ、私は冷静さを取り戻した。


「私は自分のすべきことを絶対に避けません。そして……失敗も決して許しません。私が耐えられる範囲を超えてしまったら、当然他人の助けを求めるでしょう。だからそんな心配は要りませんわよ」


「自信と確信があるのはいいけど、お前を見ていると不安しか感じられないんだ。周りの人をすごく苦労させたと思う」


 ……私を以前から監視していたのかしら?


 的を射られたせいで思わず縮こまるところだった。思ったより鋭いわね。


「フフ。その助力、シド公子がしてくださるのはどうですの?」


「俺が?」


「ええ。そもそもシド公子の方が先に修練騎士団に接近したじゃないですか。助けさせてほしいと要請までしたでしょう。もうそうなった立場だから、残ったのは頑張るだけじゃないですか?」


 助っ人を求めた方がいいとか何とか言ったけど、そもそもシド本人が先に私に……私たちに接近してきた立場だ。だから人の助けを受けるとか何とか言う前に、シドの助けを先に要求すれば良い。


 シドも私の言葉の意味を理解し、意気揚々と笑った。


「ハハッ、いいね。心配するな。俺、見た目よりあれこれ上手だから。俺が手伝ってあげるなら何でも心配する必要はないよ!」


 安心させようとする強引な笑いじゃなかった。心から自信と意欲に満ちた顔。実際、今までシドは多くのことをうまくやってきたはずだ。


 けれど……だからもっと危険だ。


 そう思った私は、心の中で小さな決心をして口を開いた。


―――――


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