今の目標
それにしても、今私がなんでこんなことを考えているのかというと。
「団長が呼んだのもそのためでしょうか?」
「多分そうはずね」
アルカの質問に私は頷いた。
修練騎士団長の呼び出し。学期が始まったばかりなので、もともと呼ぶ理由は多い。でもこの時期の呼び出しならやっぱりあれだろうね。
次の修練騎士団長が誰なのかは現在の団長にも大きな関心事だ。今の団長はもう十年生なので、次の選挙には出馬しない。けれど、生徒たちのことを考えてくれる良い人なので次の団長の役割や性向について関心が高いだろう。そして政治的にも次期団長選挙を無視できる立場じゃないはずだ。
「お姉様。お姉様は本当に候補として出馬しないんですか?」
アルカはその事実がとても残念そうだったけれど、私としては苦笑いせざるを得なかった。
そう、私は修練騎士団長に出馬するつもりはない。ゲームでみんなを悲嘆に陥れた悪き中ボスだったから、という理由もあるけど、それよりもこれは役割配分の問題だから。
単純な話だ。修練騎士団長としての役割は、私よりもジェリアの方がはるかにうまく遂行できる。
おそらくジェリア本人も知らないはずだけど、ゲームで修練騎士団長としてジェリアの活躍は目覚ましいものだった。私と私の派閥の妨害で限界に直面してしまったけれど、それにもかかわらずできるだけ被害を最低限に抑えたのはジェリアの功績だった。
反面、私は今まで生きてきて感じたことだけど、前面に出て人々を導く役割よりは裏工作と実行要員としての役割の方がより適している。適性でも性向でも。おそらくこのような性向があったからこそ、ゲームでもそれほど暗躍できたんだろう。まさに悪役らしい。
いずれにせよ、前面にはジェリアが出て、私は後ろで彼女を助ける。それを基本として活動する予定だ。
「そんなこと言わないでねアルカ。テリアも忙しい身じゃない。修練騎士団長のような重責まで引き受けなくても、すでに忙しないはずよ」
リディアの言葉にアルカはしぶしぶという感じではあるけどとにかく納得してくれた。
……それよりリディアの言葉が気になるんだけど。
「リディア、私が何のために忙しいと思うの?」
「訓練、修練、練習、たまに悪い子たちを殴ってあげる。もっとあるの?」
「私を一体どんな目で見ているのかしら?」
はぁ、そうだと思った。私のイメージはどうしていつもあんな風になるんだろう。
……あれを否定できないというのが一番悲しい事実だけど。
【貴方がそのように生きてきた結果でしょ? いいから受け入れて】
[まったく本当に涙が出るほどありがたい忠告だね]
イシリンまで。
まぁ、仕方ないわね。こうなったのは私の生き方のせいだから。今さらそれを変えるつもりもないし。
そう思いながら、私は修練騎士団の会議室に足を運んだ。
***
「やあ、みんな集まってくれてありがとう」
活気に満ちた声が会議室に集まった私たちを歓迎した。
金髪緑眼の端正な美青年。先代執行部長であり現修練騎士団長、ガイムス・レス・ドロミネ先輩だ。一年生の時の邪毒陣事件の時もお世話になった。
「みんな予想しているだろうけど、今回みんなを呼び集めたのはもうすぐの選挙について話し合うためだ」
「理解できないことがあるのですが」
テニー先輩が手を挙げてそう言い出した。
「選挙が重要な話題であることは確かです。ですが立候補する権限も、投票権もすべての生徒にあります。ここで修練騎士団員だけを集めて話す意味があるんですか?」
「いい質問だね。君の言う通り、修練騎士団長選挙はみんなのものだよ。しかし、立候補する権限だけは修練騎士団の外で行使されたことがほとんどない。どうしてか分かる?」
「慣例だからです」
「それもあるけどさ、実は条件上の理由もあるんだ。すべての生徒が投票できるということは、言い換えれば候補者側はすべての生徒にアピールしなければならないということだろ? そんな〝選挙運動〟をちゃんとするには人材が必要だし。しかし、修練騎士団では騎士団員以外の候補者にまで助力者を投入する余裕はないんだ。それで修練騎士団長を狙う人は普通、とっくに修練騎士団に入って経験を積む」
それもそうだし、業務の部分もあるだろう。修練騎士団がどんな仕事をしているのかも詳しく知らないくせに急に団長の座につくというのはいろいろと話にならないから。
テニー先輩もそのような事情をすべて察したように頷いたけど、まだ疑問点が全て消えたという顔ではなかった。
「それはわかりますが、それで何の話をしようとしているのですか? この前の選挙の時はこんな風に集まったことはなかったでしょう?」
「だからだよ。その時は支援する体系が足りなくて苦労したんだ。だから今回は事前に整理しておこうと思って。どうせ……」
ガイムス先輩は何か含蓄したような表情で視線を動かした。その視線がテニー先輩を、私を、ジェリアを順に見た。
「今回はほぼ構図が決まっていたようで。そうじゃない?」
……この。
表向きはヘラヘラしているけど、思ったより油断できない人だ。見たところ、後ろでどんな構図が繰り広げられているのかすでに分かっているようだけど。
テニー先輩がため息をつきながら口を開いた。
「またとんでもないことを……。まぁいいです。僕は不満がありません」
「ボクも同じです」
ジェリアもそう言った。ため息をつくのを見ると、何か考えるところがあると思うけど。
そのままやり取りが進むと思っていたのに……みんなの視線が今度は私に集中した。
……この流れで、この人たちが私に何を期待しているのか分からないほどのバカじゃないわよ。
「そんな目で見ないでください。私は出馬しないんですわよ」
「本気なのかい?」
ガイムス先輩が私に尋ねた。……くすくす笑いながら私を見ているのを見ると、どうやら私の考えをとっくに知っていたようだけど。
結局私までため息をついてしまった。
「ええ、私は出馬しません。あえてそんな重責を引き受けるつもりもないし、それだけの能力が私にあるとも思わないんですの」
―――――
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