四年前にできなかったこと

 このジェリア・フュリアス・フィリスノヴァ、一緒に戦う戦友に障害になるほどの弱さは許さない。


 ……そんなボクにとって、四年前のことは屈辱そのものだった。


 四年前のあの日、ボクはテリアと一緒にミッドレースに立ち向かう機会すら得られなかった。ボクが逃げたのではないが、それからずっとあの日のことが気になった。


 今ミッドレースアルファを撃破したからといって、あの日のことは変わらない。ただボクがしたいのはテリアと一緒にあんな奴らに立ち向かうだけの力はあることを証明することだけ。


 いや、むしろあのミッドレースアルファから感じられる魔力は四年前のあいつと似ている。あいつが完成型ではなかったことを考えると、本当のミッドレースの完成型はあれよりも強いだろう。 あれくらいで苦労している場合ではない。


 あんな奴くらいはさっさと倒してテリアと合流しなければ、いつまでも遅れているだけだろうな!!


「遊んでみようよ、この野郎!!」


 力いっぱい地面を蹴飛ばした。まるで爆発が起きたかのように、ボクが蹴った地面が破壊された。反動で砲弾のように飛んでいったボクにミッドレースアルファが拳を突き出した。ボクはその拳に正面から斬り下ろした。


 ドカンと大きな爆音がした。衝撃を利用して奴の頭の上に飛び上がって魔力を撒いた。


 ――『冬天』専用技〈冬天魔装〉


 百本近い氷の重剣が空から現れ、一斉にミッドレースアルファに降り注いだ。


「グオオオ!?」


 そのほとんどが奴の魔力場に破壊され、たった二本だけが奴に届いた。それさえも皮膚を少し掻いただけで、まともに切ることはできなかった。


 かなり堅いな。こう見えても〈魔装作成〉よりは上位技なんだが。


 それでも奴を刺激するには十分だったのか、奴は後方に着地したボクを振り返りながら醜い顔をさらに歪めた。同時に奴の体から炎が上がり、ボクの氷を溶かし始めた。


「それくらいの火でボクの氷を溶かすって?」


 魔力を重剣に込んで地に突き立てた。そこを中心に巨大な氷の木が育った。


 ――『冬天』専用技〈冬結界〉


 木を中心に一帯を包む結界が展開され、内部の温度が瞬く間に下がり始めた。


「クオ?」


「どうだ? 涼しいからいいだろな?」


 ――狂竜剣流〈竜の爪〉


『冬天』の力を込めた巨大な斬撃を放つ。ミッドレースアルファが火炎の拳を振り回した。斬撃は火炎に削られながらも奴の手を斬った。その間、ボクはまた上に跳躍し、もう一度斬撃を放った。奴の腕が割れ、血が瞬く間に凍り付いた。


「ブオオオオ!!」


 ――『冬天』専用技〈隔絶の輪〉


 奴が出した火の玉を防御技である〈隔絶の輪〉で防ぎ、巨大な氷刃を作り出した。奴の体のあちこちが薄く斬られ、怒りの咆哮と共に炎がブワッと上がった。だが〈冬結界〉の冷気に阻まれ火がまともに広がることはできなかった。


 しかし、奴も火をまともに広めることができないということを認識したように、体が赤く熱くなって熱気が凝縮された。氷の刃がめちゃくちゃに砕け、熱い火を含んだ拳が飛んできた。


 ――狂竜剣流〈一縦〉


『冬天』の魔力を限界まで含んだ『冬氷剣』が奴の拳を割った。そして血が噴き出す前に先に手が凍りついた。その上、もう一度一閃を放つと、手がそのまま撲殺された。


「クラァァ……!」


 一つ残った拳が高速で突き出され、凝縮された火の玉までまた飛んできた。素早く剣を振り回し、その全部を弾き飛ばして〈竜の咆哮〉を放つ。しかし奴も魔力砲を撃って相殺した。そして入り混じった魔力が爆発する空間を突き抜けて熱線のような拳が飛んできた。


 急いで防御姿勢を取って拳自体は防いだが、ドカアンと轟音と一緒に押し出されてしまった。しかも、本物の熱線数十発が発射され、ボクの氷を突き破った。その一発が左肩に掠めた。


「ふん!」


 ――狂竜剣流『冬天』専用技〈昇天〉


 冷気の嵐をまとって突進。近くでその力をすべて集中した斬撃で奴の胸元を斬り、怒って暴れる腕を空中で回転しながら避ける。しかし反対側から突然巨大な手が飛びかかってきた。


「!?」


 さっき壊した手が再生された!?


 その手がボクを握り締めてぎゅっと握り始めた。すごく痛い。その上、ボクの体全体をほとんど首だけを残して包み込んでいた状態なので、体に力を入れることが難しい。手自体も溶けてしまいそうに熱かった。


 だが、こんな程度でボクと力比べになるとは思うなよ!!


「ぐああああっ!」


 固い氷を作り出して指を軽く押し出した後、両手に魔力を込めて完全に振り払った。そして剣を力いっぱい振り回し、奴の腕を縦に割った。傷口を中心に伸びた氷が腕をさらに引き裂き破壊した。


 奴は醜い顔を力いっぱい歪めて、今までとは比べ物にならないほど莫大な魔力を瞬く間に出した。


「クオオオオオオオオーー!!」


「はああああああああーー!!」


 ――狂竜剣流『冬天』専用奥義〈冬天の流星〉


 圧倒的な火炎の魔力の波に立ち向かって、今のボクにできる最強の一撃を。


 火炎と『冬天』の魔力が激しく互いを叩き壊し、その末に氷と冷気の斬撃が奴を斬って凍らせた。攻撃を相殺するために威力が大幅に削られても、奴の勢いを殺すことには成功した。


 それでも火炎を出した奴が一つ残った拳を突き出した。ボクはそれに対抗して魔力を込んだ『冬氷剣』を投げた。弾丸のように発射された剣が奴の肩に深く刺さった。


 奴の勢いが鈍った瞬間、ボクは跳躍して奴の懐に突っ込んだ。


 ――『冬天』専用技『氷縛砕』


 突き出した手のひらから放った魔力で内部と外部を同時に凍らせて壊す。あれほどの魔力を持った奴には必殺までには至らないが、心臓に直接撃ってしまえば結構痛いだろう。


「ク……ルァッ……!」


 よろめく奴の膝を踏んで飛び上がり、奴の肩に刺さった剣を抜いた。さっそく〈一縦〉を肩の傷に叩き込んで今度こそ奴の腕を完全に切り取った。血とともに悲鳴が上がり、落ちた腕が大きくて鈍い音を上げた。その勢いに乗って角をつかんで首まで切ろうとしたが、奴が体を大きくひねったせいで角を逃して墜落してしまった。


「もがくな、野郎が!」


 剣を振り回して冷気を爆発させた瞬間、奴の体でも熱気が爆発した。そして奴が翼を広げると、巨大な炎が嵐のように渦巻いた。ボクがその炎を氷で相殺している間に、奴は火を噴き出しながら上に飛び上がった。


 内部を『冬天』の魔力で埋め尽くす〈冬結界〉の中であれほどの炎を出すとは、正直予想できなかった。やはり結界一つですべてを勝手に制御するのは不可能だな。


 だが、そのまま高く飛び上がろうとした奴は〈冬結界〉にぶつかってこれ以上上昇できなかった。


「ガオオオオ!」


 結界に火炎砲を撃っても意味がないのに。奴もそれを素早く把握したらしく、今度はボクの方に火の玉と熱線を吐き出した。


「もがくなって言っただろうが!!」


『冬天』の魔力で〈竜の咆哮〉を撃ち、奴の爆撃を相殺した。そうして開いた空に跳躍しながらもう一度〈昇天〉で突進。勢いのまま奴の片翼を切り取った。そして〈竜の拳〉で奴を殴り、地に落とした。


 しかし、奴は足から火を噴き出しながら耐えた。魔力が大量に凝縮された火の玉が大量に展開された。それもボクの周りの全方位に全部。


 ――『冬天』専用技〈隔絶の輪・全方陣〉


 全方位で多数の〈隔絶の輪〉を展開して降り注ぐ熱線砲を防いだが、その間に奴が先ほど切断された腕に魔力を集中した。すると断面から肉がうごめくようになった。


 まさか腕を丸ごと修復しようとするのか?


〈隔絶の輪〉は防御力は強力だが、設置した場所で動けないという致命的な短所がある。特に〈全方陣〉は自分自身を完全に取り囲むため、ボクが突進することもできない。まるで奴の醜い顔がそれを見抜いてあざ笑っているように見えた。


 だが〈冬結界〉は内部を『冬天』の魔力で満たす結界。この中でボクの行動を防げると思うなよ!!


 ――『冬天』専用技〈剣の冬森〉


 一つ一つが奴の体格に匹敵する巨大な氷刃が奴の周辺から芽生えた。


「クオ!?」


 固い刃は奴の拳と炎にも耐えながら攻撃を続けた。結局奴は圧縮した火炎の魔力をまとって刃を相手にし始めた。おかげでボクを攻撃していた熱線砲が急激に減った。


 その隙を狙って〈隔絶の輪〉を解除して突進。奴は遅れてボクのことを気づいたが、その時すでにボクは〈隔絶の輪〉を構成した氷の魔力を剣に圧縮し、近くに到達した状態だった。


〈剣の冬森〉が壊れ、そのすべての破片が激しい嵐となって集束した。そのために奴が力を合わせる余裕ができてしまったが……力で圧倒すれば問題はない!


 ――狂竜剣流『冬天』専用技〈暴食の歯〉


 氷雪の嵐が無数の斬撃になって奴をめった切りした。炎と氷雪が激しく戦い煙が上がり、その間に凍った血が粉のように散らばった。


 ボクはわざとその中に飛び込んで剣を持ち上げた。


 ――狂竜剣流『冬天』専用技〈落天縦〉


 奴の抵抗を抑えたこの瞬間、この一時の隙を突いて、巨大な氷雪の斬撃を振り回す。頭頂部から股間までを一直線に切って完全に真っ二つにして、〈冬結界〉内のすべての魔力を集中して奴の体を完全に凍り付かせた。仕上げに発した剣圧が凍った死体を完全に打ち砕いた。


 ……まだまだだな。


 そんなに苦戦はしなかったが、正直もう少しやすい戦いだったらよかったが。テリアがたとえ重傷を負ったとしても、四年も前に倒した奴と似たような相手にこの程度の時間を浪費するのはかなりがっかりする。


 奥義級の技をもう一度使っていたら、もう少し早く終わったはず。だがまだ戦闘が終わってないのを勘案すれば、力を下手に浪費することはできない。


 それでも大きな傷なしで勝ったことだけはよかったとして、とりあえずケインのところに戻ってみようか。


―――――


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