呪われた森と少女

 呪われた森。


 いつも邪毒と魔物がいっぱいのここは依然として私の有用な修練場になってくれている。森自体もそうだけど、森の中に設けられた拠点も多様な訓練施設を備えており、鍛錬や手合わせにもうってつけだ。


 時々ジェリアを連れてくることもあるけど、今日の同行者は違った。


「あの、テリアさん? ここは一体……?」


「呪われた森ですわ。聞いたことありますよね?」


「呪われた森……って、禁止区域じゃないですか! すごく危ない所!」


 ネスティはリディアよりも先に反応した。今更ながら、やっぱり長い間病床のままだった幼いメイドも知っているほど有名ではある。


「そうですわよ。見た通り、邪毒と魔物がいっぱいです。それでも結界の内側は完全に安全だから結界から出ないでくださいね」


「ほ、本当に安全ですか? いや、それよりそんな危険区域になんでお嬢様を連れてこられたんですか!?」


 ネスティはまさかついにお嬢様を罠に!? とかのことまで言って慌てた。そのままにしておけば私が一瞬間に悪い人になりそうだからそろそろ収拾しないと。


 しかし、私が口を開く前にリディアが先に答えた。


「罠だなんて、そんなはずがないじゃない。あんなに魔物が多いから、それを狙って修練に来たんじゃないかしら?」


「完全に魔物いっぱいですよ? しかも邪毒がいっぱいじゃないですか! そんな所で修練なんてとんでもないことです! 自殺行為ですって!!」


 ネスティがそう言うと、突然彼女の後ろに行ったロベルとトリアが彼女の両肩に手を置いた。


「えっ? あの……」


「いよいよ……いよいよまともな人が来ましたね……」


「長かったです。本当に……本当に長かったです……」


「はい!?」


 まったくもう!!


【何よ。正しいでしょ】


 うわぁ、本当に私の味方がいないわね。


 私一人で落ち込んでいる中、リディアは苦笑いしながら手を振った。


「大丈夫。魔物が多いということは、全方位戦闘や多数戦を経験しやすいという意味じゃない。しかも騎士団は数が劣勢な状況で戦う任務も多いし、とにかく実戦を早く経験すれば実力も早く伸びるのよ。必要なプロセスじゃない?」


 リディア……!!


 私がきらめく目で眺めると、リディアはわけが分からないように首をかしげながらも微笑んでくれた。私の二番目の天使にしよう。一番目? 当然アルカでしょ。


「……ごほん。それよりリディアさん、大丈夫ですの? もし無理だと思うなら強要はしません」


 以前だったら絶対無理だと言っただろうけど、今は違うよね。むしろむやみに突進しないでほしいんだけど。


 幸いリディアはそんなバカではなかった。


「兄様を倒す実力をつけるためにもやってみたいですけど……実際に見ないと判断できないと思います」


「それはそうでしょう。私がお手本をお見せします」


 トリアに手招きすると、彼女はため息をついて浄化用の魔道具をリディアに持ってきた。そして説明をしている間、私は結界の外に視線を向けた。


 正直、私としては結界からもっと遠くに出るのが好きだ。結界近くの魔物たちはもう作業レベルになってしまったから。その上、何度も間引いてたせいか、魔物が昔より弱くなったような気もした。


 しかし、初めてやってみるリディアの前で無駄なことをするわけにはいかない。


「結界の近くの魔物たちは強くはありませんけど、とにかく数が多いですわ。だからよく見て把握してみてくださいね」


 私はその言葉を残し、紫光魔力を全身に巻きつけて突進した。


 ――紫光技〈彗星描き〉


 暴走トラックのように魔物を飛ばして飛び込んだ。瞬間空き地ができたけれど、瞬く間に四方から湧き出た魔物がその隙間を埋めた。四方から凶悪に変異したオオカミや猿、動く木、空から襲撃する奇怪な鳥などが襲い掛かってきた。


 両手で双剣を振り回す一方、思い通りに操られる四本の魔力剣で死角からの襲撃に対応した。剣を振るう隙に突っ込んでくる奴らには頭に魔弾を撃ち、時には私が斬った死体を盾に片方を塞いで反対側を斬ったりもした。


 ここで戦う時、最も重要なことは絶え間ない連戦への対処、そして全方位で同時に飛びかかる敵に対する対応だ。


 前世の映画やドラマでよく出てくるものと違って、一度に少数で飛びかかる演出なんてない。それに短期戦なら力と速度でなんとかすることができるけれど、ここは長期戦のレベルを超えて結界の中に戻らなければ無限連戦だ。下手に魔力を浪費することはできないので、効率的な戦い方も探さなければならない。


 まぁ、私は無限の魔力を持っているから、魔力いっぱいでいろいろしても構わないけど。実際、魔力使用訓練をする時はそうする。ただ、そうすると他のことは全然訓練できないよね。


 ある程度戦う姿を見せた後、魔力網で死体を引っ張ってくるところまで見せながら結界の中に戻ってきた。


「大体こんな感じですの。どのようにすればいいのか分かりますの?」


「うむ……全方位対応と持続性ですの?」


「正確ですわ。さすがリディアさんですわね」


 やっぱりリディア。説明の一言もなくお手本を見せただけなのに、すぐ要点を理解した。これくらいなら十分だね。


 ……後ろから白くなったネスティがロベルとトリアをつかんでいろいろ不安をぶちまけていたけど、リディアは平然と聞き流していた。なかなかの鉄面皮だ。


「すぐにやってみてもいいですの? あ、武器を貸してもらえますの?」


「もちろんですわよ。思う存分使ってくださいね」


 位置が位置だから、防衛戦を想定して庭に配置された武器も多い。リディアはそれらを一つ一つ見て回り、二本の剣と一本の連射小銃、拳銃と弓も一本ずつ手に入れた。


 ちなみにこの世界の銃は使用者の魔弾を補助する魔道具であり、弾種や発射能力などを術士が自由自在に変えることができるので銃の種類が前世より少ない。中でも連射小銃は大体前世のアサルトライフルとバトルライフルを混ぜた感じだ。


 ……とゲームの設定集の隅に書かれていた。私は前世の銃器なんて実際に見たこともない。それよりあれ、見た目は機関部が少し現代的に改造されたマスケットなんだけど。


 頭の中ではそう考える一方、密かに魔力を操作してリディアを保護する結界を繰り広げた。初めてだから念のため。


「行きます!」


 リディアは浄化魔道具を作動させ、そのまま結界から飛び出した。


 新しい存在が現れるやいなや魔物たちが飛びかかってきた。リディアは右手の剣で第一線を一瞬にして切り倒し、左手では拳銃を抜いて素早く連射した。すべての魔弾が正確に魔物の頭を突き破って絶命させる腕前が絶品だった。


「ひ、ひぃっ……。あれ本当に大丈夫なんですか?」


「一応ですね。そして私がこっそりリディアさんを守る結界をかけておきましたわよ。だから安心してもいいですの」


「で、でも……」


 ネスティは依然として不安そうだった。まぁ、リディアの危険を手放しで見守るしかない立場だから仕方ないわね。


 しかも本格的なのはこれからだ。結界に出た直後は主に前方から敵が飛びかかるけれど、結局敵が来る方向がますます多くなる。その時からが本当だ。


 リディアは後方の敵を横目で確認し、魔弾をいくつか作り出した。まるで衛星のように魔弾が周りをグルグル回った。それで全方位を牽制し、スピード重視の剣と拳銃で魔物を素早く討伐していった。


 トリアはその姿を見て嘆声を発した。


「やり方は単純ですが、技術が洗練されていますね。特に魔力を節約しながらも効果的に敵を始末する技術に優れています」


 確かに。特にリディアは萎縮した心のために一人で修練する時も魔力をあまり引き出すことができなかった。でもそれが少ない魔力を効率的に使う方法の研究をたくさんするようにした。その経験のおかげで、少ない魔力で効果的な戦い方にむしろ慣れた。


 リディアが突然後退して結界目前まで来た。帰ろうとしているのかと思ったけど、彼女はそのまま上に飛び上がって結界の上へ上がった。そして狭い範囲を包む防御結界を具現し、剣と拳銃を入れて連射小銃を取り出した。


 ドドドドドと豪快な連射が下の魔物を無慈悲に貫いた。魔物たちは結界を這い上がろうとしたけれど結界の浄化力に火傷して悲鳴だけを上げ、飛んで接近した魔物はリディアの個人防御結界に阻まれている間に魔弾の供え物になった。


 地形……とは言い難いけど、とにかく周りの要素を利用して接近を遮断し射撃する環境を作る、か。私は考えたこともない部分だ。私はまず敵を見ると剣を握りしめて突撃からする性向だから。


 他にもリディアは接近が少なくなった隙に弓に変え、魔力を大量圧縮した矢で〝砲撃〟を浴びせた。再び剣に変えて魔物に飛びかかりたり、拳銃と連射小銃を両手に握って乱射するなど多様な方法で戦った。まるでいろんな方法を自分で試してみるようだった。


「すごいですね。ディオス公子が戦うのを見たことはありませんが、あれくらいなら十分勝算がありそうです」


「同感だよ。お嬢様より強くはないけど、手段の多様さや対応能力は上級だね。瞬発力も優れているし」


「み、みんな平然としすぎじゃないですか?」


「そりゃ私たちは直接戦う身ですからね」


 使用人たちの会話を聞きながら頷いた。私も同じく思っている。


 ただ……一つ気になることがある。


 その心を一人で押さえつけて、私はリディアの戦いを静かに見守った。


―――――


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