ゲームのパメラ
「クソ攻略対象者なんかどうでもいいです。私はあいつらの婚約者の方々を幸せにしてあげたいです。みんな幸せになる権利があるのに、変なストーリーのせいで悔しくやられた人たちなんですよ」
「婚約者……全部悪役令嬢なんですの?」
「もう終わってしまった第一作目はしょうがなく、第二作目の攻略対象者は四人です。そのうちの三人は婚約者がいました。二人は悪役令嬢で、一人は……婚約者と仲が悪すぎでしたので、むしろ悪役令嬢にはなりませんでした。嫌悪する婚約者が他の女性に夢中になって破婚だなんて、むしろ願ってやまないことでしたからね」
「私にも婚約者がいたのですわね」
皇女として当然のことだ。しかしそれを聞いた瞬間、パメラはなぜか胸が締め付けられるような気がした。それでもそれは見たこともない男に向けた切ない気持ちなどではなかった。
「私もその人を愛していましたの?」
「いいえ、全然。でも皇女としての義務感がすごすぎたあまり、関係の破綻を防ごうと必死でした。それで悪役令嬢になってしまったのです」
「そうだったんですわね」
パメラは胸をなで下ろした。そして一拍遅れて、自分がなぜ安堵したのか不思議な気持ちになった。
「ちなみに、パメラ様も婚約者との仲はすごく悪かったです。義務感がなかったら、すぐに破婚しようとなさったと思いますよ」
「そんなにですの? どうして?」
「婚約者が権力しか関心のない大バカ者でしたからね。それにパメラ様は別に気に入った方がいまし……」
セイラは突然びっくりして口を塞いだ。どうやら失言だったようだ。パメラは一瞬意地悪な気持ちでその部分を突こうとしたが、セイラが慌てて話題を変えた。
「と、とにかく私の目標は二つです。攻略対象者の婚約者を幸せにすること。そして攻略対象者たちと会わないのことです」
「合わないって、そんなに嫌なんですの?」
「嫌なこともありますけど、もし主人公を愛するようになる強制力とかあったら困りますからね。前世の小説にはそういうのがあるものも多かったんですよ。用心して悪いことはないでしょう。殿下はやりたいことがありますか?」
「復讐します」
その瞬間のパメラの話し方が冷たすぎて、セイラの肩がビクッと上下した。パメラはそれを見て苦笑いしたが、言葉を止めなかった。
「貴方も多くのことを話してくれたので、私も私の話をしてみましょうか」
ティステとしての記憶、そしてアディオンの手記で見た記録。パメラはそのすべてを話した。聞いていたセイラが次第に表情を曇らせ、手記の末尾に至っては涙まで浮かべた。
「ひどい。どうしてそんな……」
「ありがとう。でも悲しむ必要はありません。私はこのように生まれ変わったし、罪の償いをさせることができるようになりましたから」
「どうする計画ですか?」
「方法はまだ考えていますの。でも直接的な謀反はできないでしょう。それは多くの人が犠牲になる道ですから。良い方法があるかは今から探してみます」
パメラはセイラに手を差し伸べた。
「お互いに秘密を打ち明けた仲になったので、協力関係を築いてほしいですの。私も皇女として貴方の目標をお手伝いしますので、貴方も聖女として私を助けてください。もちろん強要ではありませんし、断るからといって危害を加えることはありません。……少し口止めはしますが」
「助け……」
セイラはパメラの手をじっと見つめた。提案を受けるか悩んでいるのだろうか。
それもあり得ると思い、パメラは苦笑いした。パメラを助けるということは、つまり皇帝に反旗を翻すという意味だから。軽く決められることではなく、パメラも本当に受け入れられるとは確信していなかった。
しかし、セイラが決心を固めた顔で手を取り合うまで、それほど長くはかからなかった。
「協力します。第一作目のストーリーには私も不満が多かったし、殿下はその第一作目の犠牲者ですから。正しくないことをした人は処罰を受けなければなりません」
「ありがとう。せっかくなので、私のことは名前で呼んでください」
「パ、パメラ……様」
「様付けもやめてほしいんですけど……まぁ、それは徐々に負担を減らしていきましょう。私も貴方のことをセイラって呼んでもいいですの?」
「はい、もちろんです」
「ふふ。ありがとう、セイラ。ところで……」
パメラはセイラの手を離すとすぐに意地悪な笑みを浮かべた。
「さっき私にも気に入った方がいたって言いましたよね? それは誰ですの?」
「ネヘッ!? そ、それは……」
「……プッ。面白い反応ですわ。まぁ、話さなくてもいいですの。どうせその愛は叶わなかったらしいし」
「あ……」
セイラは困った様子で口をつぐんだ。しかしパメラが椅子から起き上がろうとした瞬間、彼女の裾をぎゅっとつかんだ。
「パメラ様。一つだけお願いします。もし好きだという気持ちを自覚したら、その気持ちに素直になってください」
「あら、それは告白をしろってことですの?」
「はい。ゲームでは遅すぎましたから」
「遅すぎって、告白はしたようですわね。そして良くない答えをもらいましたね? もうあの方には別の恋人ができたんですの?」
パメラは大したことないように笑ったが、セイラの表情は深刻だった。
次の言葉はその深刻さをパメラにも伝染させた。
「パメラ様……死体は告白に答えられません」
「……え?」
セイラは微笑んだ。パメラは人の笑顔が時にはとても悲しそうに見えることを初めて感じた。
「お願いです。愛する人の死体の傍で嗚咽しながら愛を告白する姿は……二度と見たくないですから」
その言葉にはパメラも一瞬言葉に詰まった。だがそれもつかの間だけ、すぐ挑発的なほど自信に満ちた笑顔に変わった。
「それなら私は運がいいですわね。貴方のおかげで前もって知ることができましたから。肝に銘じましょう」
「ありがとうございます。パメラ様の道に幸運がありますように」
「貴方も」
微笑みながらもう一度握手を交わし、二人の会話が終わった。
―――――
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