04-04話:【少女小説】澪と青いバラの妖精デルフィニジン(七瀬みお先生からのリクエスト)
「ここは?」
そう一言いったものの、
春のような風の匂い、蒼天の空、輝く太陽。そして太陽の光をしっかり受け止めるバラの花。その色合いは、そのバラの色合いは、太陽の光を浴びたバラの色合いは
そう、赤い羽根の妖精と黄色い羽根の妖精は、仲良く手を握ってダンスを踊りながら、その周りに
そんな青い羽根の妖精に強く心を
「こんにちは! 妖精さん!!」
「おどろいた、君には僕がみえるのかい?」
その妖精の問いに
「はじめまして、僕の名前はデルフィニジン。青いバラの妖精さ。よかったら、君の名前を教えてくれないか?」
「わたし? 私の名前は
「
青い羽根の妖精デルフィニジンは、そう言って嬉しそうに
「ところで、デルフィニジンは、なんで他の妖精と一緒に遊ばないの?」
「いいよ、
そう言って、青のバラの妖精デルフィニジンは、さみしそうな笑顔をその顔に描き出す。
「僕もペラルゴニジンとシアニジンと一緒に遊びたいんだけどね。一緒に踊りたいんだけどね。たくさんのバラを、色とりどりのバラを、一緒に咲かせたいんだけどね。僕にはできないんだ」
そして、青のバラの妖精デルフィニジンは、大きく、なにか、あきらめたくないのだけれども、あきらめざる得ない。そんな理不尽で、やるせないため息をついて、話を続けた。
「
そういわれた
「もしかして、デルフィニジン。ちょっと透けてる?」
「そう、僕は、青いバラの妖精デルフィニジン。彼女たちと同じバラの妖精さ。でも、僕だけ住んでいる世界が違うんだ。少し難しい表現だけど、実数の世界で生きている彼女たちと違って、僕は、僕だけが虚数の世界で生きているんだ。だから彼女たちとは一緒にあそべない。仕方がないことなんだよ」
「虚数の世界と実数の世界?」
「うーん、そうだね。
「それくらいなら、できるわよ」
「じゃあ、
「そんなのあるわけないじゃない」
「そう、そんな整数あるわけがないんだよ、
「そして僕が生きている世界は、同じ数を掛け合わせるとマイナスになる世界。つまり虚数の世界。だから実数の世界で生きる彼女たちに僕は会うことができない、つまり、一緒に遊ぶことができないのさ」
デルフィニジンはそう言って、さみしそうに笑った。
「デルフィニジン、元気を出して。私の夢も『小説家』になることなんだけど、きっとそれも、デルフィニジンと同じ、虚数の世界のものなの」
「でもね、時間というものは希望を含んでいる。今は虚数かもしれないけど、時間が経てば実数になるかもしれない。そう、時間は、そんな可能性を含んでる。だから、デルフィニジンだって諦めなければ、実数の世界に行くことができるかもしれない」
「そうだね、
「え、魔法? 私たち人間は、魔法なんて誰も使えないわよ?」
デルフィニジンの言葉に、
「なに言ってるんだい、
デルフィニジンは、そう言って
「澪先生、そろそろ新人小説賞の授賞式ですので、会場にお越しください」
澪は、その花束を見て、青いバラの花言葉を思い出していた。そう「奇跡」、「夢が叶う」という花言葉を。そして
おめでとう
青いバラの妖精デルフィニジン
補足:
青いバラは、1991年まで不可能と言われるものでした。なぜなら天然のバラは、黄色の色素ペラルゴニジンと赤色の色素シアニジンしか持っておらず、青色の色素デルフィニジンを持ったバラは存在しなかったのです。だから青いバラの花言葉は「不可能」、「存在しないもの」だったのです。
しかし、1991年、サントリーのエンジニアの努力によって、パンジーから青色の色素デルフィニジンを取り出し、それをバラに取り入れることに成功します。これにより、不可能と言われた青いバラが誕生し、商用化されたというわけです。
そして、2002年、一般的になった青いバラの花言葉が「奇跡」、「夢が叶う」に変更されます。そう、サントリーのエンジニアの執念が「不可能」と言われた花言葉さえ変えてしまったのです。
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