第23話 魔獣

 俺はエンファに案内され、外に出るとそこは巨大な木で覆われた場所にだった。


「それで、一つ質問してもいいか?」


 「ん?なんだ?」


 なぜか木の影で、大人しく待っている魔獣達を見ながら俺は質問の許可をとった。


 「なんでこの魔獣達はエンファ達に懐いているんだ?」


 魔獣は人間の敵。それは昔から何も変わらない。まあ俺は仲良くしてるけど。


 「こいつらはなぁ、小さい時に親を殺されていてな、それで俺が勝手に家に連れて帰ったんだ」


 「何のために?」


 「ただの興味本位」


 俺は素直に感心した。人間は魔獣を恐れ、敵としてきた。それなのに連れて帰るなんて普通の人が出来ることじゃない。たとえ小さい魔獣だったとしてもだ。


 「ミミィも魔獣連れて帰りたい」


 俺と手を繋いでいる逆の方の手で、目の前にいる巨大な角を3本生やした魔獣を指さした。


 「うーん……まだミミィには早いかな」


 魔獣を連れて帰れない事がわかると、しょんぼりとした顔で下を向き、尻尾を下に垂らした。


 「俺は、最初は育てて大きくなったら皮なり角なり売るつもりだったんだが、俺も流石に愛着が湧いちまってな、他の人間に見つからないように育てることにしたんだよ」


 「でもこの人たちは?」


 俺は、後ろをついて歩くエンファの仲間達を見た。


 「そいつらはいいんだよ。俺の仲間だからな」


 仲間ねぇ……。


 こいつらがどうやって出会ったのか知らないが、魔獣を飼うということは人類の敵を意味する。それを知っても尚エンファはこいつらにこの事実を隠さないでいるということはよほど信頼し合っている関係なんだろうな。


 「なあ、この魔獣達に近づいてもいいか?」


 「ああ、別に構わないが……何かあっても責任は取らないぞ?」


 エンファは冗談混じりに言うと、コイツらに近づけるものなら近づいてみろ、と言わんばかりの目で俺を見てきた。


 俺はポケットの中で、マジックストーンを3本の指で転がしながら外見が震え上がるほど恐ろしい魔獣達に近づいていった。


 マジックストーン力のことは大体カロスに説明されたけど、まだ不確実なことも多い。多分カロスはおおよそのことは知っているが、どのようにして魔獣の力発動させるかなど細かいことは知らないのだろう。


 だからもしかしたらだけど……


 俺は目が4つある魔獣の前に立つと、じっと魔獣の目を見つめた。どの目を見ればいいのかわからないけど。そして心の中で考え続けた。


 この魔獣と会話がしたい、この魔獣と会話がしたい、会話がしたい会話がしたい会話会話会話会話……


 (お前、我と話ができるのか?)


 すると、その場にいた人の声ではない、また別の新しい声が聞こえた。


 その声の主は当然……


 (そのようだな。人間と会話するの初めてか?)


 どうやらカロスにも知らない力がマジックストーンにはあるようだ。


 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る