劇の配役
◆
「演目どうする?」
「定番の『ロミオとジュリエット』がいいと思いま~す」
「ああ、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの、って場面しか知らないな」
「春ちゃん、解説よろ」
いつの間にか、先生が戻って来ていた。
「OK。一応、本借りてくるわ。人物名とかうろ覚えだから」
十分程して、先生が図書室から戻って来た。
「簡単にいえば家の対立に巻き込まれた悲劇だよ」
「へえ、悲劇だったんですか」
「ああ、最後……って、これはネタバレになるな。順を追って説明するわ。……ロミオのモンタギュー家とジュリエットのキャピュレット家は犬猿の仲。ロミオはジュリエットと駆け落ちしようとするんだけど、敵のティボルトから決闘を申し込まれ、ティボルトを殺してしまう。そのせいで、ロミオは街を追放される。それから、ジュリエットはロレンス神父に相談し、仮死状態になれる薬をもらう。一旦、死んだことにして、その後、駆け落ちする計画。しかし、ロミオは仮死状態のジュリエットを見て、本当に死んだと思い、自分も毒薬を飲んで死んでしまう。目覚めたジュリエットは、死んでいるロミオを見て、短剣で自分の胸を刺して自殺するって話」
「バッドエンドじゃん」
「そんな話だったのか」
「この話、実際はどのくらいの長さなんですか?」
「文庫本一冊分くらいだな。あんまり長過ぎても飽きられそうだし、物語のエッセンスを上手いとこ入れ込んでいくのが良いかな」
「まずは脚本ですよね……」
「文章書くの上手い人~」
結弦が呼びかけるが、手を上げる人はいない。俺も作文とかは苦手なので脚本は無理だ。
「分かった! 脚本は俺に任せろ! 現役国語教師兼、元文芸部員の力を見せてやるから!」
「おっ、さっすがー、春ちゃん先生!」
「よろしくお願いします」
「じゃあ次は役決めだな!」
先生がホワイトボードに役名を書いていく。
「主役はやっぱ部長の吉野だろ!」
「はあ⁉ 俺⁉ 無理無理無理!」
「大丈夫! 行けるって!」
「何でそんな自信あるんだよ!」
「じゃあ主役は吉野で~」
「勝手に決めるなって」
「じゃあジュリエットは、染井さんで!」
「え、私⁉」
「だって女子一人しかいないもん」
「で、でも……」
「そんな訳で、主役のお二人さん、よろしく!」
結局、結弦に押し切られて主役に決まってしまった。
俺が主役のロミオ。
小学校の学芸会では台詞一言の万年チョイ役の俺がだよ⁉
不安しかない。
ちなみに、他の配役は、こんな感じになった。
配役
ロミオ 吉野
ジュリエット 染井
ティボルト 結弦
ロミオ父 能見
ジュリエット父 菱川
ロレンス神父 成海
使用人達 ほか一年生
ナレーション 薄桜春
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