サイコパス家族

夕日ゆうや

第1話 僕の日常

 商店街の魚屋さんで僕は魚を選ぶ。

「お。ボウズおつかいかい? 感心だね」

 魚屋さんの店主が僕に話しかけてくる。

「うん。今日はサンマがいいなーって思って」

「それなら安くしておくよ」

「ありがと!」

 店主さんが百円安くしてくれた。

 次は八百屋さんだ。

 エコバッグにたくさんの野菜と肉、それに魚を詰め込んで、商店街を歩く。

「あら。あの子」

「そうなのよ。あの子よ」

「気の毒に。一人で生きていかなくちゃいけないなんて……」

「本当に一人なのかしら?」

「それどういう意味よ?」

 外野の言葉は気にせずに僕は自宅へと着く。

「ただいま」

 返ってくる言葉はない。でもいい。

 僕は買ってきたものを冷蔵庫に入れると、食卓に座っている父と兄をトイレに連れていく。朝からほとんど動いていないのだ。

 トイレに行かせたあと、手を洗い、食卓につかせる。

「今から料理を作るから待っていてね」

 こくりと頷く父と兄。

 判断能力の欠如。

「今日はサンマに味噌汁、サラダだよ」

 そう言って食卓に料理を並べる。

 お腹が空いていたのか、父も兄も犬食いのようになりながら、食事をする。

「食事を終えたら、トイレいこっか?」

 こくりと頷く父と兄。

 トイレのあとはお風呂だ。

 僕は父と兄をお風呂に入れて、汚れを落とす。

 まるで介護のように……。


「なあ、倉坂くらさかってなんで一人でいるの?」

 学校に行くと開口一番に言われた。

「付き合い悪いからね。ごめん」

「いや、お前の家庭環境は知っているけど……」

 両親はもう離婚している。

 そして父と兄はそのショックからか、おかしくなっちゃった。

 それを知った義援金で成り立っている。

「何かあったら、俺に言えよ!」

 クラスメイトがそう言うと僕はまたあの家に戻る。

 もう失ってしまったものは戻らないけど、僕はあの場所で生きていくしかない。

 いつも通り料理を作り始める。


「今日はカレーかな。これは兄の分、こっちは父の分」

 分けた兄と父の分に錠剤を入れる。

『つらいことがあったらこれを飲め』

 昔そう言っていたクラスメイトがいる。

 だからつらそうな二人に飲ませることにした。

「今日はカレーだよ」

 犬食いをする父と兄。

 薬の効果が現れたのか、父と兄は快感で顔を緩める。


「もっと。もっと食べてね。そしてつらいことは忘れよう?」

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