マスク世代の同窓会
今夜は高校の同窓会が開かれる。
地元のホテルで10年ぶりの再会。
時間ギリギリに着いた会場には既にたくさんの大人が集まっている。
僕は進学先を地方都市の大学にしたので同級生とは疎遠なまま。
とりあえず人ごみに紛れながら会場へ入る。
男性はスーツ姿が多いがラフな格好もいる。
女性は化粧してオシャレできれいな人ばかりだ。
僕は独身だが結婚しているのもいるだろう。
見知った顔が見当たらないので一人時間を待っていたが、何か違和感を感じた。
これだけ多くが集まったのに話し声がほとんど耳に入らない。
聞こえてくるのはBGMと恩師たちの会話と会場スタッフの作業音くらいだ。
皆おとなしくたたずんでいる。
同窓会なら昔話や再会の喜びの大きな声が聞こえてくるのイメージがあったがそうじゃない。
しばらくしてマイクで「時間ですのでクラスの札が置かれたテーブルに集合してください」と流れた。
移動した人らは僕を含めて数人しかいなかった。
ほとんどが自分のクラスで集まっていた。
僕がクラスのテーブルに合流しても誰も声をかけてこなかった。
周囲にいる人たちの顔を見渡しても特に心は動かない
会場に入る前に名札を渡され自分で記入したのを付けている。当然みんなも同じように名札を付けている。
でも名前を見ても「あー居たかもしれない」くらいで顔まで思い出せない。
だから当時の思い出とかも出てこない。
男子でさえその程度、女子なんかは全くわからない。
ここがお見合いパーティーだと言われても違和感がない。
僕らが入学する直前にパンデミックが起きて、それから卒業式までずっとマスク姿のままの学校生活だった。現在は個人の判断にされているが、それでも人が多く集まり密集するところではマスクが多い。
今回の同窓会でもマスク姿のほうが多いかもしれない。
むしろ素顔を見せてもわからないだろう。でもマスク姿では皆同じようにしか見えない。
10年の時間経過を確かめることができない。
同窓会なので立食形式なのだが、3年間黙食を続けていたので当時学生だった世代は慣れている。
僕もマスクをずらして食べるのは得意な方だ。
食べながら次第に当時を思い出してきた。
こんな風に静かな景色だけだったと。
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