日本が分割支配された件

  日本は今日から分割された。

 北海道、東北、関東中部甲信越、関西四国中国九州の4地域に。

 同じ日本国民として国籍はあるが、税金や食料は自給の自己責任。

 足りないものは他国から輸入し、余れば輸出することができる。

 だが足りないからといって同じ日本の他地域から買うなどをして融通はできない。

 その場合は第3国を経由しなければならない。

 例えば野菜は時期によって生産地が分かれていたので、春先は九州産の玉ねぎ、秋以降は北海道産となっていたことができなくなった。

 それじゃあ消費量が少なくなり生産量が減り農家が困るのではと思われるが、余剰分はすべて海外へ輸出し外貨を得ることができる。

 国内で販売流通させるより高く売れるのが日本産の品質だからこそのこと。

 不足しているものは海外からの輸入になるが、これまで国内産より安くなった。

 以前は円安で割高だったが、分割になったことで日本円の価値が上がってきた。

 ただし、それぞれの地域の評判が全て上がったわけではない。

 地域によって政策が大幅に変えて特色がはっきり見えている。

 例えば北海道はジェンダーフリーと同姓婚を平等にし、障碍者や子供福祉を充実させている。

 元々食料自給が100%以上なうえ土地もあり、昔から女性が強い土地柄があったゆえだ。

 東北は逆に保守的な上に産業が農業と漁業に偏っているために新規成長の企業誘致が盛んになっている。関東などは機械産業などのハイテク関係で優秀、関西などは伝統と港湾関係の誘致と観光客などで収益をあげている。

 ただし北海道以外は古来からの保守的な価値観と言われる家父長制が残っているために、それらを嫌った人々が離れていく傾向にある。

 結果的に若い未婚の女性たちが少なくなり、逆に都合のいい女性の価値が上がった。 

 都合がよければ日本人にこだわらず外国籍の女性を優遇する政策ができて、それによって海外資本や企業が進出するという予想外の動きが加速した。

 

 国が分割されたので政府もそうなる。

 各地域は独自予算でいくが、防衛はそうはいかない。

 自衛隊はアメリカの運用となり、実質的に軍と同じ体制になった。

 災害派遣はこれまでと同じくなるが、一部の隊員は研修名目でアメリカ軍として派遣される。 

 昔からアメリカ本土で訓練課程を行ってきたのでさほど現場に混乱はなかった。

 当然ながら独身が中心の編成なり、将来の下士官候補でもある。


 地域の首長は知事の権限を更に強化されている。

 主に外交関係は独自に行えるし、税率も変えられる。

 北海道は廃線されていた鉄道を海外資本を入れて観光客誘致のための手段として復活させている。

 経済的には日本とは言えないほど外国人が多くなっていたが、生活水準の向上や自由な空気と文化で発展している。

 逆に他の地域は年配の人々にとって都合がいい日本になったが、若者は古い価値観を避けて北海道に移住してきた。

 関東などは年に数回だけ行く海外旅行のような位置づけとして距離を置くようになった。

 結果、世代間の隔たりが広がったが、将来的にどちらが発展するか衰退するかは誰の目にも明らかになった。

 それでも選挙などで変えることは可能だったはずだが、人口比で若者の全てが改善意識が高くても数の差は絶対的に不可能だった。

 それならばいっそのこと離れたほうが早く確実に将来性のある生活を送れると思うのは当然の話。

 北海道以外は高齢者がいなくなる残り10年ほどは待たないと発展は無いと考えるようになり、むしろそれまでに準備をしている海外資本が資産を買い占めているのがブームとなっている。

 日本はエネルギー資本は無いが、それ以外は他国に無いものが多くある。

 日本という国が消滅するのはそれほど時間はかからないかもしれない。

 明治維新で江戸幕府が無くなるよりも日本文化が変革するだろう。

 でもそれが人間らしい生活になるのなら大歓迎である。

 

 

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