「それじゃ本番いきます。スタート」

　「あ、あ、そこそこ。もっと激しくして」

　みだらに悶える顔のアップがモニターに映っている。

　「ハイ！カット」

　女優の耳から一本の綿棒が抜かれる。

　「じゃあ次にシーンに行きます。

　竹の耳かきで軽くこすります」

　そう、女優が耳掃除をされてもだえる表情と声だけを集めた映像を撮っている。

　セクシー女優はもちろん、最近は一般の女優さんの出演依頼も多くなっている。

　新人アイドルがイメージビデオのなかのシーンに入れる場合も多いようだ。

　昨年に施行されたAV新法の規制が強化されたことによる。

　つまり苦肉の副産物となった。

　これは女優ばかりでなく、男性アイドルなどのプロモーションとしても有効らしく。

　女性向けのコンテンツとしても有望のようだ。

　どんなに国が規制しようが人間はかいくぐり新しいことを生み出すということが証明された。

　はたしてエロとは一体何なんだろうかというのが、最近の哲学者の間で論争となっていることは誰も知るよしも無かった。

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